暑さ寒さも彼岸迄。今日は秋の彼岸の中日である。最高気温が30度を超える残暑日が続いたせいなのか、ここへ来ていくらか身体が悲鳴を上げ始めている。
 さて先日の事、休みを利用して久しぶりに日光へ足を延ばした。日光といえば、東照大権現と言われる徳川家康の墓所があり、古くは天台宗に属した日光修験が盛んな土地柄でもある。また温泉もあり、明治の初めから外国人旅行客が闊歩したハイカラな土地とあって古くから観光地としては申し分の無い場所となっている。
 とはいえ、今回の私は日光に特別な用がある訳では無い。ご承知のように、私は折を見ては芭蕉の追っかけ旅をしているのであるが、今回は日光北街道(今市〜矢板)で芭蕉が泊まったという「名主の家」を訪ねたいと思っている。斯くして、その旅を始める前にこの起点となる日光でまず腹ごしらえと洒落込む事と相成った。
 日光に温泉とくれば饅頭である(どうしてそういう発想になるかは、どうか聞かないで欲しい)。饅頭好きの私にとって、地方の饅頭は何より見逃せない一品なのである。
 「饅頭なんてどれも一緒でしょう!」と思われがちだが、形、大きさ、味などそれはそれは千差万別である。私は特に「炭酸饅頭」や「お焼き」といわれる古典的な類が好きではあるが、この日光にも古くから変わり饅頭があるというので早速探してみた。
 ところで、日光名物の中にゆば(湯葉)がある。ゆばはご存知の方も多いだろうが、大豆を煮た煮汁の表面に出来る黄色身を帯びた皮膜で、それを串で掬い上げ適度に乾燥させてから煮物、吸い物、天ぷら等々の料理に使う。精進料理には無くてはならない素材となっている。
 日光のゆばは、京都などの生ゆばに対して乾燥ゆばが主流である。とくれば、お分かりだろう、その変わり饅頭とは、ゆばを使った饅頭で、特に油で揚げた「揚げゆばまんじゅう」が大そう美味いというのである。
 この揚げゆばまんじゅうを商う店は、東武日光駅の改札を出た目の前のビルにある「さかえや」という店である。1階は土産物売り場が中心で2階では食事が出来る。店構えは小さいが、店先で饅頭を揚げているから直ぐにそれと分かる。
 早速、店のお姉さんに「揚げゆば饅頭」と普通の「ゆば饅頭」を注文する。すると、その隣で饅頭を揚げている別なお姉さんにお姉さんが声を掛ける。その声を受けて、揚げ立ての饅頭を敷き紙に載せると、声の行ったのと反対方向に饅頭が帰って来た。そのお姉さんは、揚げ饅頭に何やらふり掛けそれぞれを包むと「熱いからね!」と渡してくれた。揚げ饅頭2個とゆば饅頭2個で締めて5百円也。
 包みを開けアツアツをかじってみると、口の中には期待した甘さとは違って塩味が拡がった。「うむ・・・?」そう、衣に掛けたのは塩だったのである。そのまま二三度噛むと今度は餡子の甘さが塩の後ろから付いて来て、それが何とも程よい絡みで実に美味である。当初油で揚げてあるというので、しつこさを想像していたが、塩のお陰で血圧さえ気にしなければいくらでも食べられそうである。店の話だと、揚げ饅頭にふり掛けた塩は特別な塩で、何百万年も前の塩だという。真偽の程は・・・?だが、確かに、天ぷらを塩で食べる場合もあるのだから、文字通りうまい発想である。
 さて、お次は正真正銘腹ごしらえである。折角、ゆば名物の土地なのだから、ゆば饅頭とくれば、次はゆば膳であろう。
 そこで、安くて評判な店はと色々調査した結果、駅前から1キロ程神橋方面へ行った中程に「さんフィールド」という店を見つけた。この店、本来は喫茶店らしいのだが、昼時ともなれば、ここで出すゆば尽くしの定食が評判となり、わざわざ予約までして訪ね来る客が多いと聞く。
 この界隈でゆば料理専門店といえば重厚な構えの店が多く、その分お値段も高値で殆んどが一人前5千円前後からである。その点、さんフィールドのゆば御膳は珍しく安い。実際、1600円である。恐らく最安値ではなかろうか。
 店へ入ると満席であったため、暫し待つ。待つこと10分。狭い店内の奥隅のテーブルに案内される。注文は待っている間にしてあったので、水を飲みお手拭を扱っている間にゆば御膳が来た。
 思っていたより大きな膳に、はみ出さんばかりに器が載っている。決して料理に較べて大きな器を使っているわけではない。料理そのものがふんだんに盛られているのである。運んできた女将らしい人が、「今日は日光で特別なお祭りがあって、お祭りがある時だけ作る大きなゆば巻きが今日は特別に載ってます」と説明していた。私にとっては「ラッキーッ!」の一言である。
 献立は、ゆば煮物、しそ巻きゆばのあんかけ、ゆばの佃煮、串くし、ゆばおからの酢の物、胡麻豆腐とゆば 山菜の煮物、ゆばのお吸物、ゆばコーヒーゼリー、それにご飯である。
 まずはゆばの吸い物を飲み、ご飯を一口食べる。ご飯の上にふりかけてあるのは、これまた塩である。それに日光名物の唐辛子のしそ巻きが刻まれて載せてある。これも実に美味い。肉厚のゆば煮物をたっぷりと口に放り込む。「嗚呼、シアワセ〜〜!」の一言である。これだけのゆば尽くしを食べたのは、もしかしたら初めてかもしれない。我が人生にまた良い想い出が出来た一瞬であった。帰りには唐辛子のしそ巻きを買ったが、これだけでご飯がお代わり出来る美味さである。
 閑話休題。ではまた、また肥ったかものりゅうやでした。


 











 
     揚げゆばまんじゅう
 (中央の箱詰めと右上が揚げ饅頭、中央の白いのが古代の塩である)
      HPよりお借りしました





















 
    「さんフィールド」さん


















 
        ゆば御膳
     ゆば尽くしの嬉しい膳

≪ 日 光 ゆ ば 御 膳 ≫
2007.09.23 182 「りゅうやの独り言」