ご存知、アガサ・クリスティ(1890−1976)の代表的推理小説。この小説が映画化されたのが「ナイル殺人事件」。
(ただし内容は映画用にかなり脚本されて、実際の小説とちょっとちがう。
→ 表紙を飾る写真。さて、この写真の撮影場所がわかりますか?
後ろに見える”独特の形”を持つ大きな神殿。さらにナイル川から2段に渡って上がって行く階段(見えるかな?)をヒントに、正確に場所を当てられたあなたはス・ス・スゴイッ!。どこの場所のなんの神殿が撮影されているのかわかれば、あなたはかなりの”通”です。
(たぶん現地に行った人でも当てるのは難しいんじゃないかな?手前のファルーカ(帆かけ舟)のイメージにだまされると間違えやすい。アスワン?ルクソール?いやいや違うよ〜ん。)
ヒント ⇒ この神殿はエジプトではめずらしい形だよー。ルクソール神殿?カルナック神殿?いやいや全然違うよ〜ん。
(正解は【エジプト旅行記2005】のよもやまばなしのコーナーで)
この「ナイルに死す」は1937年、アガサがエジプト旅行から帰国後に一気に書き上げた長編推理小説。クリスティ作品を代表する5作品に必ず入る有名な小説です。
でも、読むには注意が必要です。ユネスコによるアブ・シンベル神殿の移築が1964年から68年だから、アガサは移築前の神殿を描写しています。
さらにアスワン・ハイダムの完成は1970年で、まだ小説内には出てきません。(1902年完成のアスワン・ダムは当然出てきます。)だからアスワン・ハイ・ダムがまだ存在しないために第1カタラクトから第2カタラクトに向けてクルーズできるという奇妙なことが起きています。(現在ではハイ・ダムが邪魔しているのでこのルートのクルーズはできません。)
しかし、全体を通してその内容は決して古いものではなく、現代の我々にも充分アピールできるすばらしい内容になっています。
でも、日本語訳がちょっと、、、。
スカラベ → かぶと虫 と訳されたり (そのまま”ふんころがし”ではだめなのかなぁ?)、
ラクダ → ロバ (ガ・ガーン!!)
ラー・ホルアクティ神 → ハラクテ、、、 ま、これはいっかー。
で、この小説のスゴイのは、なかなか殺人事件が起きないこと。最初から250ページくらい読んでもぜんぜんまだ殺人事件は発生しません。ただし、そこに至るまでの内容が非常に重要!なので、ゆっくりゆっくりかみしめるように読み込んで下さい。めずらしく訳者も”お願い”と題して「はじめはゆっくり読んでください。登場人物表(22名)を参考にして各人物の様子を頭に入れ、地図を参考にしてこの舞台を、、、」と前置きしています。)普通の小説だと250ページで話が完結している場合もあるのに、「ナイルに死す」はここから本格的に始まる感じ。
で、これからエジプトに行く方は、是非現地に持参して読むか、クリスティファンのように日本で読んで、さらにエジプトに持ち込んで読むか(笑)、とにかくお薦めの推理小説ですよ。
1回目より2回目の方が面白いかも知れないです。
※)ひま〜な飛行機の中で読むのも手かもしれない。