ティモシー・ダルトン主演 ジョン・グレン監督作品。
空軍との合同演習でパラシュート降下する00(ダブルオー)エージェント達。だが紛れ込んだ一人の男により、次々と殺されていく。そんな中、ジェームズ・ボンドは攻撃をかわし、逃げる犯人を追いかけ、逃走車の幌屋根にしがみつき、中の男ともみ合い、崖から落ちる。だがボンドは予備のパラシュートを使い、優雅に落下。貴婦人の佇むヨットに着陸し、本部に電話を入れ、貴婦人と楽しんだ。
チェコスロバキアのブラチスラヴァで、ソンダースとコンサートを鑑賞中のロシアの要人ヴィヴァルディ・コスコフ将軍を亡命させるボンドは、KGBの襲撃から彼を守るが、殺し屋の正体がチェリストの女性と知り、驚きつつもわざと弾を外し、コスコフ将軍をパイプラインに詰めて射出し、検問を突破して輸送した。
隠れ家にて、M達を交え、コスコフはロシアが、ゴゴール前将軍の異動後、レオニード・プーシュキンがスパイ皆殺し作戦を企んでいると報告した。
その後、ボンド達が隠れ家を引き上げた途端、配送業者に化けたKGBが隠れ家を襲撃。コスコフを奪取し、爆発の中、医療ヘリに模したヘリでまんまと輸送した。
恥をかかされる形になった英国政府だが、ボンドはスパイ皆殺し計画に違和感を感じていた。
ボンドに抹殺命令が下る前に、例の殺し屋チェリストについて調べ、カーラ・ミロビーと知り、彼女を尾行。彼女は市電でKGBにさらわれ、翌朝解放されて帰宅。だが部屋も荒らされており、そこにボンドがカーラが置き忘れたチェロケースを持って訪問。ボンドはコスコフの亡命はフェイクだったと推理し、カーラにカマをかけ、確証を得ると、カーラを連れて外へ。尾行との間を市電が通り目隠しになった隙に、電話ボックスにチェロをかかし代わりに使い、撒く。
ボンドとカーラを追跡する集団が形成され、包囲網が敷かれる中、ボンドカーで逃走する2人は警察無線でやってきたパトカーをレーザーで焼き、ミサイルで包囲網を突破。氷の湖を走行し、納屋に突っ込みそのまま載せ、ホイールで氷を割り、後続のパトカーを沈める。スキー板とスパイクタイヤでぶっ飛び、ボンドカーは爆発。だが二人はチェロケースをソリ代わりに使い、銃撃の中、オーストリアへ入国した。
モロッコ、タンジールの屋敷で、プーシュキンは戦争屋ブラッド・ウィティカーとの武器の取引をキャンセル、コスコフにも伝えるよう聞かせ、残されたウィティカーとコスコフはプーシュキンの抹殺を企むことにする。
オペラを鑑賞するボンドは、コスコフが買ったチェロの高額な代金がどこから拠出されたのか、そして偽造パスをソンダースに頼む。
ダイナーで再び落ち合い、ウィティカーとの繋がりがあることを偽造パスとともにもたらされたボンド。だがソンダースが自動ドアのところでネクロスに殺され、ボンドはカーラを連れタンジールへ向かう。
プーシュキンが逢引きしているところをボンドは奇襲し、尋問。パーティーでネクロスより先にプーシュキンを始末する芝居をして逃走。封鎖された町で、美女の車に助けられ乗り込むと、ヨットへと案内される。すると中には旧知のCIA、ライターがいた。一方、喜ぶコスコフ達の元には、奇妙な電話が鳴った。
返ってきたボンドはカーラをなだめ、とうとう素性を明かす。だがカーラはコスコフに連絡し、指示を受け、ボンドを眠らせてしまうのだった。
カーラとボンドは、コスコフとネクロスによりダイヤを持って飛行機へ運ばれ、機内でボンドとカーラは仲直りし、アフガニスタンの取引先に到着し、ソビエト軍基地へと移動。そこで二人は引き渡され、拷問を受けるため牢屋へと運ばれる。だがボンドは隙を見て返り討ちにし、ついでに囚人を一人逃がす。ボンドとカーラは軍服を着て変装し外へ。飛行機用の階段が付いた車でフェンスを越え、さっき逃がした囚人の手引きで、レジスタンスのアジトがあるムジャヒディンへ。
東地区の司令官カムランに任務に付き添うよう言われ、ボンドは任務のために戻ることになり、カーラに逃げるよう勧めてケンカになるが、仲直りする。
翌日、ボンドは生アヘンの取引を目にし、コスコフが武器を買う前金でアヘンを買って大儲けしていたことを知り、取引後、アヘンを全て燃やしてしまおうとトラックに飛び乗るが、戻る前に出発してしまい、心配になったカーラが追い、カムラン達も続く。
ボンドはプラスチック爆弾を組み立て、飛行機に積む。だがコスコフに見つかり、籠城。カムラン達が暴れ、ボンドは飛行機を出発させる。カーラもジープで追い、ボンドはコスコフ達に追われるカーラをピックアップ。着陸機とすれ違いながら上昇し、ボンドは爆弾のタイマーを止めに行くが、ネクロスに捕まり、格闘。そこに助けようと操作したカーラがミスし、ボンドとネクロスは放り出されて宙吊りに。アヘンを放出し、靴紐を切ってネクロスを落とし、タイマーを止める。そして追われるカムラン達を救うため、渡り切った橋を爆破する。だが飛行機のガソリンが漏れ出し、2人は不時着し、ジープで脱出し、カラチへ向かう。
CIAの協力で演習中のウィティカー邸へ入るボンド。トラップや防御銃の仕掛けに、新兵器の口笛ホルダーを使い、ウィティカーを倒し、プーシュキンが来て、コスコフを逮捕した。
カーラのコンサートに、Mとゴゴールが現れ、ビザをプレゼント。カムランもお祝いに現れ、楽屋に戻ったカーラは、ボンドも来てくれて登場し、抱き合った。
1987年、イギリスの作品です。
共演:マリアム・ダボ ジョー・ドン・ベイカー アート・ムリク ジョン・リス=デイヴィス ジェローン・クラッベ
いきなり00エージェントというイギリスきっての凄腕のスパイ達が次々と惨殺されるところから始まる衝撃の作品ですが、そこに新ジェームズ・ボンドのティモシー・ダルトンが登場して、お決まりの展開に入るというオープニングで始まる007流のお披露目からご挨拶し、物語が始まる展開自体は、変わらなくて良い点です。
当時のロシアはまだソビエト連邦といって、いくつかの国が集まって一つの共同体の形を成していました。EUも似たようなものですが、EUの方が自由度は高いです。
日本にいると亡命というのはピンと来ないのですが、ヨーロッパ周辺は小さい国が多く、戦争に発展してしまうとすぐに政変が起こり、また危険が迫ります。国内だけでは逃げる範囲が狭いので、あっという間に他の土地に辿り着いてしまいます。作品で描かれる亡命は、音楽家など高名な人物が多いので、すぐに配慮されてビザが配給されますが、ただの一般市民では、ビザがなかなか降りず、難民となってしまうこともままあります。
劇中に登場するパイプラインですが、ロシアやヨーロッパの人が一番に思い浮かぶのが、石油やガスを供給するパイプです。これによりロシアは時に強気な外交姿勢を見せることがあります。日本で言う、「琵琶湖の水止めたろか」ってやつです。
チェロというのも人気の高い楽器です。一番人気はヴァイオリンですが、三重奏には欠かせない楽器なので、チェリストは重宝されます。
魅力的なボンドガールが登場するも、ボンドの相棒として息が合わないというのも007のお約束です。
ラストシーンのお約束ですが、ある評論家いわく、ダルトンはベッドシーンがあまり得意ではないということです。元々がミュージカルや演劇などの舞台俳優ということなので、接写演技の求められる映像系のテクニックはあまり学んでこなかったのでしょう。ただそれはそれで爽やかなボンドが誕生したというのも、面白いものです。そういう意味では、日本よりも10年先を歩んでいたということでしょう。
この作品は男性も女性も一人でご覧になられるのもいいですが、ぜひカップルで観てもらいたい作品です。というのもティモシー・ダルトンが作り出したボンドは爽やかで清潔、清純さあふれるボンドで、愛に対して一途なのです。鑑賞後の2人の空気が、愛が深まること請け合いの作品なのです。