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フィッシャー・キング

ロビン・ウィリアムス主演 ジェフ・ブリッジス共演 テリー・ギリアム監督作品。
ラジオDJのジャック・ルーカスはブラックな受け答えが人気だが、リスナーの一人、エドウィンに人種差別を助長するアドバイスをして、恋に悩む彼を元気づける。
だがエドウィンはバーでショットガンを乱射し、無関係に居合わせた客達を負傷、7人を殺傷した。
背景が調査され、原因はジャックの発言にあると報じられ、ラジオ局は謝罪。ジャックは降板させられる。
3年後、恋人アンのレンタルビデオ屋でヒモになるジャックは、ケンカし外へ出るが、転んで服を汚し、あっという間にホームレス扱いに。
橋の下のゴミ溜めに流れ着いたジャックの前に、ボヤを起こして遊ぼうとする若者達が現れ、ジャックは殺されかけるが、陽気なホームレス・パリーがゴミで武装し、他のホームレスを集め、宣戦布告。2人組の一人をスッポンで股間を撃ち、テープで拘束し、もう一人は逃げた。
ジャックはパリーにホームレスの仲間に入れられ気絶。
翌朝、ボイラー室を占拠したパリーの部屋で目を覚ましたジャックは騒ぐパリーから、1年前に妖精を見た話や富豪カーマイケル邸にあるトロフィーが聖杯であると話し、付き合ってられないジャックは部屋を後にする。
外に出たジャックは、地上のアパートの管理人に注意され、パリーが精神を病んでいるのは、3年前に最愛の妻を亡くし、その死因はエドウィンの事件だと知る。

結末 ネタバレ注意

改めて訪れたジャックは管理人から、パリーは本名をヘンリー・セイガンといい、ハンター大学の教授だったと聞く。
街で見つけたパリーは、回転ドアを上手く出入りできない女性を見つめていた。ジャックはせめてもと70ドルを渡すが、パリーは他のホームレスにあげてしまい、それでは目的を果たせないと付き合い、カーマイケル邸の聖杯を盗む手伝いをさせられそうになり、現実を突きつけると、パリーは道路にのたうちまわる。
するとパリーは炎の騎士の幻を見る。怯えるが、ジャックの姿に逃げたと喜び、追いかける。森林公園に入り、ジャックは息を切らして追い掛け、岩の上に佇むパリーの横に倒れた。
パリーの入院していた病院の精神科でジャックは元歌手のドラァグクイーンと知り合いに。
駅を利用する彼女を見つめるパリー。うっとりする彼の目には、構内が舞踏会に見えた。
夜の公園に連れられたジャックの前で、パリーは素っ裸になり、仰向けになる。隣に寝たジャックに、『フィッシャーキング』の話を聞かせた。

王様は若い頃、肝試しに森で一晩過ごす事にした。夜、王様の前に神様が現れ、欲しい物をもたらすという聖杯を差しだした。王は手を伸ばすが、欲していたのは富と権力。聖杯はたちまち炎に変わり、王は火傷を負った。
王様は妻もなく子もなく愛を知らず、年を取り、火傷は年々悪化。とうとう王様は寝込んでしまう。
ある晩、一人のうつけ者が侵入し、王様と知らずに声を掛けた。王様は水を欲し、うつけ者は近くの水差しから水を注いで、王様に差しだした。王が取ろうと手を出すと、そのグラスは探し求めていた聖杯だった。王様は「なぜ見つけられたのか」尋ねると、うつけ者は、「ただ水を飲ませたかった」と答えた。

ジャックはパリーをあの女性と結びつけようと、女性の正体がリディア・シンクレアといい、2ハート出版社に勤めていると知り、電話を掛け、浮気を疑うアンを納得させ、ラジオDJのスキルで、レンタルビデオ店の無料会員に選定すると伝えるが、効果なし。
ジャックはドラァグクイーンに頼み、彼を行かせ、リディアのデスクの前で大声でショーさながらに唄ってもらい、カードを渡す。
パリーを店員に仕立て、店にやってきたリディアを3人で出迎え、懐疑的なリディアを会員にしようと、アンがイラつく中、ジャックは譲歩。リディアのビデオ探しをパリーに手伝わせるが、観たい作品は無い。だがリディアはアンのマニキュアに興味を持ち、ジャックはリディアに今夜なら、アンにタダで塗ってもらえると約束する。
夜、リディアはアンと恋愛について話し、奥手なことを明かす。一方、ジャックはパリーにスーツを着させ、財布を渡し、アンとリディアの元へ。逃げようとするパリーとアンを捕まえ、一緒に中華料理屋に食事に行く。
箸も上手く使えず、ぎこちない2人だったが、次第に良いムードになった時にはもう客は4人だけで、閉店時間を過ぎていた。
ジャックとアンは成功を確信し、互いの愛を深める。
一方、リディアを送るパリーは、リディアに部屋へと誘われるが、リディアは一夜限りの悲しい恋だと悲観し、パリーはかねてからの思いを告白し、不安を払拭し、部屋には入らず別れる。
有頂天なパリーだったが、目の前に炎の騎士が現れ、妻を殺されたあの瞬間の事を思い出してしまい、逃げるために走り出す。
気付けばあのゴミ溜めに。するとあの若者2人組が復讐に現れ、炎の騎士が見えるパリーは抵抗できず、ナイフで胸を刺され、「ありがとう」と呟き、リンチを受けた。
復職を考え出したジャックに、アンは喜ぶが、ジャックが一度一人になりたいと言い出し、怒り狂う。
知らせを受けた二人はミイラ状態のパリーを見舞い、主治医から外傷は治るものの、精神病の再発を告げられる。呆然とするジャックを置いて、アンは一人病院を後に。
復職したジャックは入り口で止められるドラァグクイーンを無視して打ち合わせ。だが途中で気になり、入口へと走るが、もう姿は無かった。
見舞いに来たリディアに声を掛ける事もせず、やり過ごしたジャックは植物状態のパリーに空虚を告白した。
夜、ジャックは黒ずくめにして、弓矢を使ってカーマイケル邸に侵入。エドウィンの亡霊に襲われるが、聖杯のトロフィーを入手。
しかしカーマイケルが薬を誤飲し倒れており、ジャックはわざと防犯センサーを鳴らして逃げ去った。
病院に戻ったジャックは、聖杯をパリーの手に握らせて眠る。するとパリーは起き上がって、ジャックに声を掛けた。
見舞いに来たリディアは、同室の仲間の合唱の指揮を執るパリーと抱き合い、キス。
ジャックも事務仕事中のアンを訪ね、愛を告げると、ビンタされ、キスされた。
ジャックとパリーは夜の公園で裸で仰向けになり、街はネオンと花火で輝いた。
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管理人の批評

1991年、アメリカの作品です。
ロビン・ウィリアムスの主演であり、鬼才テリー・ギリアム監督の作品でありながら、センセーショナルな面もあるせいか、あまりテレビでは放映されてきませんでした。
特にパリーが回想で、事件のシーンでショットガンで撃たれた奥さんの肉片を浴びる姿は一瞬ですが、凄絶さを感じます。
しかしながらこの映画はそんな悲惨さとは裏腹に、陽気さを含んでいます。駅の構内でパリーとリディア以外のみんながダンスをするシーンは、とても面白いアイディアだと感銘を受けました。
それにホームレスへと転落していく描写を一瞬にして描くという技は、鬼才にしかできないものですね。
ドラァグクイーン役の男性俳優は「パッチ・アダムス」でも「リスを怖がる患者・ルディ」として出演しています。彼が気になった方は、そちらもどうぞ。
中華料理店のシーンでパリーは箸を使うのに悪戦苦闘しますが、アメリカ人なので無理もありませんが、アメリカ料理というものを聞きません。思い浮かぶのはステーキかパンに具を挟んだファストフード系。資本主義社会で昼食もホットドッグで済ませているイメージですから、ムードが出る食事があるとは思いません。
なにより移民社会。フランス料理かイタリアン、それか中華料理か日本料理という事になるでしょうが、予算を考えると、ムードは諦めざるを得ません。
2000年以降なら、「幸せのレシピ」のようなビストロや、「トゥーウィークス・ノーティス」の中華デリバリーなどの食事の浸透度もうかがえますが、当時はまだ、庶民のデートに向いたムーディーなレストランは少なかったのかもしれません。なにせ、一夜限りの関係が多い街ですから。
ちなみに食事の主食は堅いパンかマッシュポテトが一般的です。マッシュポテトはそうめんのように色づけされている事もあります。
ハリウッド映画の弱点は、食事シーンかもしれません。
さて、終盤ジャックはなぜか恋人を捨て、一人になりたがります。男の「よくある行動」にして、女性が最も理解できないものです。
解説してしまうと、無駄に長く、自己弁護になってしまうので簡潔にまとめますが、「男は幼稚」なだけです。答えは分かっているんです。協力した方が大きな物が作れるのに、自分ひとりの力がいったいどのくらいなのか確かめたくなってしまう。ただ、その答えを男がわかるには、きっともう一度叩きつけられないとダメでしょう。男ってバカですね。
別に他の若い女に岡惚れしたわけではないので、そこはご安心を。
ロビン・ウィリアムスはキャラ作りの名人ですが、この映画では陽気なパリー、怯えるパリー、そして愛する妻に恍惚するも惨劇を目の当たりにするヘンリーを演じ分けています。
彼のキャラ作りの基礎は演技学校で受けた「仮面の授業」だそうです。仮面を付ける(変顔をする)事で、別の自分になりきれる事に感銘を受けたそうです。
ギリアム監督の才能に惹かれ参加したこの撮影において、ロビンの苦労は二つあり、一つは公園でのフルヌード。大勢に見られながらの脱衣は勇気が要り、更に寒かったそうです。
そして人種のるつぼニューヨークで、精神を病んだ人を演じるという事で、「私はマーキュリー」と叫びながら自転車で自分の周りを周回する男がやって来て、ロビンは「私はウラヌス」と返したそうです。
2014年9月、この映画はフジテレビで深夜に追悼放送されました。こうしてまた、彼の才能を噛み締める事が出来ました。謹んでご冥福をお祈りします。