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金メダル男

知念侑李 主演 内村光良 主演&監督作品。
秋田泉一はデパートの紳士服売り場で働く父・留一に母・房江が気持ちを寄せ、慰安旅行先の温泉で一発ででき、東京オリンピックの年に生まれた。
幼少時代は活躍の無かった泉一だが、小学校の運動会の徒競走で一等賞を取り、その時にもらった紙でできた金メダルに魅せられるようになった。
放浪癖を発症した父に悩む母の傍らで、泉一は書道、工作で大賞を受賞。山に入っては、火おこし、魚つかみ、大声で栄冠に輝いた。そして泉一は小学6年生で担任に全てにおいて1等賞を目指すと宣言し、やさしく諭された。
中学に入り、周りからは「塩尻の金メダル男」として歓待を受ける。水泳では独特の泳法から「無呼吸王」と呼ばれ活躍。しかし一つ上の先輩女性の姿に見とれ、息継ぎをしてペースを乱し、溺れてしまう。
競技を鞍替えした泉一は剣道でも頭角を現し、「小手男爵」の異名が付く。しかし女性剣士に心を奪われ、敗退。また競技を捨てる。
雑念を捨て、初心の陸上に戻った泉一。だが体が成長せずビリになり、テニス、卓球、英語スピーチもまったく芽が出ず、そのまま高校に進学し、勉強で成績トップを狙う。そして猛勉強の末、105位に終わった。
親に友だちがいないことを心配されていることにうすうす気付いていたそんな矢先、映画好きで、同級生の竹岡君から声を掛けられる。仲良くなった泉一は竹岡君に誘われ、バスケ部に入部。他の部員たちと楽しい時を過ごす。
しかしある日、レギュラー選考の紅白戦が行われ、その熱気に気圧され、森岡君にお荷物扱いされてしまった泉一は、団体競技は性に合わない、とボールを置いて、体育館を後にした。
ふさぎこみ、TV「歌のトップテン」を見ていた泉一は、新人アイドル・北条頼子の「私のサンクチュアリ」に癒され、ひらめくやいなや、校長に許可を取り、中庭に自分一人の「表現部」を創設した。

結末 ネタバレ注意



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管理人の批評

2016年、日本の作品です。
共演:木村多江 宮崎美子 平泉成 ムロツヨシ 土屋太鳳 長澤まさみ 大泉洋 山崎紘菜 清野菜名 笑福亭鶴瓶 温水洋一 音尾琢真 ささの友間 上白石萌歌 大友花恋 田中直樹 竹中直人 加藤諒 柄本時生 森川葵 ユースケ・サンタマリア マキタスポーツ 手塚とおる ヨーロッパ企画 夢みるアドレセンス 福澤朗 小熊美香
主題歌:桑田佳祐「君への手紙」
この作品は、内村光良監督3作目の監督作品です。第1作「ピーナッツ」、第2作「ボクたちの交換日記」(脚本・鈴木おさむ)に続く作品です。そのスパンは5年と長いですが、監督はレギュラー番組や特別番組への出演のほか、脚本執筆や舞台出演、その準備とかなり忙しい方なので、映画だけを求めるというのは野暮なのです。
元々は、「東京オリンピック生まれの男」という題で、内村監督が一人芝居を行うために執筆されたのですが、東日本大震災が発生し、上演は延期されました。その後無事、舞台で上演され、大好評を得て、映画化されました。劇中ではその描写はありませんが、読売新聞夕刊で映画公開直前に連載された際、そして文庫版では、東日本大震災に直面した泉一の様子が描かれています。
内村監督の得意な仕事の一つに「キャラコント」があるのですが、この泉一というキャラクターは、金メダルを取るために何でも挑戦する、という性質を持っており、何をやるにしても大会やコンテストがあれば自然に持っていけるというのが脚本づくりにおいて大いに円滑に進められることが便利だと感じました。キャラクターで軸を作る脚本製作の手法は、これからの脚本家は見習わなければなりません。
この作品の最大の魅力は、監督が築き上げた交友関係です。といっても監督はシャイで2度目に会う時も「はじめまして」という感じで接してくるというのが有名ですが、人柄の良さは折り紙付きで、品行方正、成績優秀といったところからも人気を集めてきました。
主演の知念侑李氏は「スクール革命!」で長年にわたり共演しており、周囲からの「似ている」という意見で起用が決まりました。また知念さんの父親譲りの運動神経も起用の一因です。
ムロツヨシ氏、ココリコの田中直樹氏はNHKのコント番組「LIFE〜人生に捧げるコント〜」の共演で、竹中直人氏も内村監督とは長年の付き合いであり、「LIFE」にも自ら出演を打診するほどです。笑福亭鶴瓶氏とは「いろもん」で今も続く親交を深め、小熊美香アナとは「内村てらす」で共演が始まり、その他にも多くの方がたった1シーンのために地方の撮影現場に足を運んで撮影が行われたということを忘れてはなりません。
そして主題歌も、監督が若い頃から敬愛していた桑田佳祐氏に直接手紙と映画の撮り終えていたシーンを込めたDVDを送り、お願いしたところ、わずか3日で曲となって返って来たそうです。
内村監督ご自身が明かされた裏話ですが、若い泉一が劇団「和洋折衷」で初めて恋愛を深める、つまり初体験をする相手役を、作中では「スカッとジャパン」で共演された森川葵さんが演じられましたが、周りのスタッフさんからはおかずクラブのオカリナさんを薦められたそうで、監督は強い違和感を覚えて、却下したそうです。
この作品は監督らしい、子供から大人まで楽しめる作品ですが、この作品の本当の味がわかるのは、人生の酸いも甘いも噛み締めた、老いを感じた男性でしょう。