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ニッポン無責任時代

クレージーキャッツ主演 古澤憲吾監督作品。
酒場で大規模な株の売買を聞きつけた主人公・平均(たいら・ひとし)。
彼は三流大学を中退し、働く事も好きではなく、ぐうたらしているが、飯と酒にありつくため、持ち前の調子の良さ(C調)を活かし、太平洋酒の氏家社長に接近し、自分にはコネや策があるとのたまい、見事総務に配属される事になり、勤めだした。
目下、平の仕事は黒田産業による太平洋酒買収工作の阻止。しかし、話を付けたはずの山海食品社長が裏切り、買収は成功してしまい、平は即刻クビを言い渡される。


結末 ネタバレ注意

だが平は、その日の晩には黒田社長に近づき、部長へと昇進。
翌日、氏家や降格した元部長と顔を合わせた平は奪還を約束する。だが黒田は、平に難しい仕事を押し付け、失敗を理由にクビにしようと考えていた。
今まで良い顔をしてきた周囲の女性達に悩まされる平に、商売敵の取引先を口説くよう命令が下る。
黒田の本心を聞きつけた太平洋酒の古参社員達は、平を成功させるため、接待の座席で事件を起こし、警察に扮し、取引先の社長をハメるが、バレてしまい平はクビに。
しかし、仕事が成立。だが平は戻ろうとはしなかった。
平は氏家元社長の息子と、山海食品の令嬢の仲を知り、駆け落ちを手伝う事にする。
2人を隠し、令嬢をエサに氏家の復活を山海食品社長に持ちかける平、だが、平がいない間に和解が成立してしまい、人物像が知れ渡っている平はとうとう除け者にされてしまう。
平は氏家が止めるのも聞かず、自主退職し、下宿も飛び出し、世話をしてくれるという周りの女性達の助けも借りず、旅に出るのだった。
 
1年後、氏家の息子と令嬢の結婚パーティーが行われ、招待客の中に北海物産の新社長・平均が現れる。前社長石狩と仲良くなった平は側近として拾われ、石狩が脳溢血で倒れ、社長に就任していた。
マイクの前に立ち、祝辞の代わりに歌で会場を大いに盛り上げるのだった。
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管理人の批評

1962年、日本の作品です。
クレージーキャッツとは、テレビ草創期から活躍した渡辺プロダクション(現ワタナベエンターテインメント)所属、植木等、ハナ肇を中心とするバンドです。
バラエティ番組「シャボン玉ホリデー」、直木賞作家青島幸男作のコントを披露する「大人のまんが」に出演し、
楽曲「スーダラ節」「ハイそれまでョ」などの名曲を大ヒットさせ、
「お呼びでない?これまた失礼いたしました!」(植木)、「あーっと驚くタメゴロー!」(ハナ)、「ガチョーン」(谷啓)といったギャグで爆笑をかっさらい、
「太陽にほえろ」(ハナ)、「男はつらいよ」(犬塚弘)など数々のドラマ・映画に出演し、
ニッポンの芸能界を引っ張ってきたスーパースターグループです。
この作品には惜しみない称賛を贈りたい、そしてただただ頭を垂れるしかない傑作です。
エンターテインメントの牽引たる所以として、和製ミュージカルの決定版と言えるでしょう。物語に対して過不足なく、ごく自然に楽曲シーンが盛り込まれています。
そして物語として、主人公・平のキャラクターが立っている事も据えつつ、映画の中で見せる平の数々のC調の秀逸さ、それがすべて成立している上で物語が進んでいく事から、かなりの脚本の練り上げがあったと感じられます。
作り込む事によって、平のしたたかさを形成しているのですが、それが嫌味に感じられず、あっぱれ、見事と感嘆してしまいます。
私も平の頭の回転の速さ、口の上手さ、行動力、全てを見習いたくなるほどです。
ちなみに植木等さんは実家がお寺のため、「ボン(坊)さん」の愛称で呼ばれていますが、最初は時代の流れで生まれたこのキャラクターを演じる事、C調な歌を唄う事に抵抗があったようです。ある意味では、植木等さんが(本当の自分とは違うキャラの立った人物をさも自分の本性であるかのように演じる)キャラクタータレントの元祖と言えるかも知れません。
続編として「ニッポン無責任野郎」があります。そちらもお楽しみに。