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男はつらいよ 寅次郎夢枕(10)

渥美清主演 山田洋次監督作品。
親分の妾と書生の恋を助けるため、親分を撃ち殺した寅次郎。逮捕され、連行される際、妾のさくらに、生き別れの兄と明かしながら行ってしまった。
そんな夢から覚め、寅次郎は列車で柴又へ。
母が子を叱るのに、自分の名前を使われて、歪んだ寅次郎は背後から近付く。
おじ達は気を利かせて寅次郎を褒め、寅次郎は反省し、改心。みんなは寅次郎の結婚相手を捜す事にするが、柴又界隈で知れ渡った寅次郎の嫁になる物好きはおらず、寅次郎はキレ、ケンカになって家を出た。
旅の空で、立ち寄った旧家で、同業の為三郎がこの家に厄介になり、亡くなったと聞いて墓参り。
落ち込んで宿に身を寄せると、騒がしい隣室によく耳を澄ませると聞き覚えのある舎弟のぼるの声が。2人は再会を喜び、翌日から共に商売旅を行う。
だがその翌日、のぼるが目覚めると寅次郎の置手紙が。「早く足を洗って堅気になれ」とあり、のぼるは叫んだ。
その頃、とらやには御前様の口利きで東大助教授の岡倉が寅次郎の部屋に間借り。しかし寅次郎が帰って来て、さくらの予想通り、インテリ嫌いの寅次郎は、またすぐ出て行こうとすると、近くのパーマ屋へ勤め出した寅次郎の同級生・千代が現れる。
機嫌を直した寅次郎は、千代が2年前に離婚したと知り、寝た。

結末 ネタバレ注意

寅次郎が千代ととらやで団子を食べていると、帰ってきた岡倉が千代を見て挙動不審に。寅次郎は気付いて、からかい出す。
岡倉は日用品の買い物に出かけた先で千代と出くわし、しどろもどろに。
そして浮足立つ岡倉をネタに寅次郎は笑って団欒。そこに千代がやって来て、寅次郎は岡倉をからかった。
岡倉はアメリカ留学を断り、提出したレポートも滅茶苦茶になるほど千代にのめり込んでしまう。
千代は元夫に引き取られた息子サトシと再会し、喜び涙。それを知った寅次郎達は、千代を元気づけようと夕飯に招待するが、上手く盛り上げる事が出来ない。だが察した千代は喜ぶ。
岡倉が恋煩いで寝込んでしまい、提出しなければならない書類を代わりに寅次郎が届けに。そこで上司から岡倉の様子を聞かれるが、大学が居心地が悪くて仕方ない寅次郎は学生達に感心する。
帰宅した寅次郎は、お見舞いにと恋愛相談に乗るが、岡倉は大分苦しんでいた。
寅次郎は岡倉の事を思い、さくらは千代に気がある寅次郎の行動が心配に。
寅次郎は、休みの千代を連れ出して、乱暴に縁談をまとめようとするが、千代は相手が寅次郎だと思って了承したと言い、寅次郎への告白を冗談で済ませ、縁談を断った。帰宅した寅次郎は岡倉に不実を告げた。
正月を迎え、とらやには千代が現れ、寅次郎となら結婚すると本気で言うが、皆は笑って取り合わない。岡倉からはエアメールが。
その頃、寅次郎は旅先にのぼるといた。
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管理人の批評

1972年冬、日本松竹の作品です。
共演:八千草薫 米倉斉加年 田中絹代
今作では寅次郎が幼なじみと再会、そしてはっきりとした三角関係に陥ってしまうという展開ですが、そこは寅さん。自分の幸せよりも相手の幸せを考え、ついつい自分を追いやってしまいます。
特筆すべきは岡倉を演じた米倉斉加年さんの演技力です。寅次郎と並び立つような現実空間とは異質なキャラクターを存在させてしまった米倉氏。かなりの実力が無ければそういうことはできません。
この作品以降、米倉さんは警官などの様々な役で、『男はつらいよ』シリーズに出演し、花を添えています。とても味のある役者さんです。
現代のお若い方に捕捉しますと、この頃の助教授というのは、今でいう准教授に当たるかと。同じ研究室に立派な教授がいらっしゃるので、ご自身の研究の成果が出るまでは、なかなか肩書というのは変わらない。特に教授・准教授のような成果が必要な仕事は、長い期間が掛かるものなのでして、勤める大学も、自身の研究内容に合う地域でなければなりません。国政政治学を学ぶならば、東京近郊でなければいけないように。
男女がいて、結ばれない理由というのはいろいろあるのです。いま日本人が内向きと呼ばれているのは、もしかしたらバラバラになりつつある自分達を、必死に繋ぎ止めようとしているからなのかもしれません。