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男はつらいよ 寅次郎忘れな草(11)

渥美清主演 山田洋次監督作品。
身売りされるおさくを救うため、通りすがりの男は小判を投げ、やくざ者を刀で片付け、また旅へ。それは生き別れの兄だった。
という夢を見て、柴又へ戻った寅次郎。とらやでは父の27回忌が営まれており、誰かが死んだと勘違いして大慌て。
訂正され安心したものの、ふざけ始めた寅次郎のせいで法事が崩れ、その夜はケンカ。
後日、御前様のルンビニー幼稚園に通う満男を迎えに行った帰り、さくらは子供の頃、ピアノとそれを弾ける家が欲しかったと呟いた事から、寅次郎は飛び出し、当たり前のようにおもちゃの小さなピアノを買ってくる。
博は本気の寅次郎を立てたものの、たこ社長が現れ、恥をかかされたと寅次郎はくだを撒き、叔父に「出てけ!」と言われ、出て行ってしまうのだった。

寅次郎はふらふらと列車に乗って網走へ。同乗する女性を気にする。
レコードがさっぱり売れない寅次郎に、その若い女性が声を掛ける。彼女は東京出身の歌手で、だが営業で日本中を飛び回る、フーテンのような状態だった。
互いの身の上に意気投合して、彼女は仕事へ。キャバレーで歌声を披露した。
後日、とらやに網走の知らぬ農家から速達が届いた。
寅次郎が働きたいというので働かせたが、忙しさに倒れてしまい、熱に浮かされているという。それでやむなく、さくらは網走へ向かった。
さくらが着くと、寅次郎は病み上がりでへろへろ。柴又へと連れ帰り、静養させる事に。
朝日印刷所の若い工員が同郷青森から出てきた若い娘と仲良くするのにほのぼのとした寅次郎は、また北海道へ行って己を鍛え直すと外へ。だが歌手の女性・リリーが訪れ、寅次郎はもてなすためにとらやに戻る。

結末 ネタバレ注意

リリーは活けられた忘れな草に興味を持ち、満男に小遣いと別れのキスをして帰る。その夜、寅次郎は心が上流階級だと言われた事を思い出し、すっかりのぼせる。
店番をしていた寅次郎の元にリリーが現れ、もてなしていると、工員・水原と仲良くする女の子が来訪。寅次郎は水原を呼ぶのに、わざと恋人と叫ぶと、女の子は逃げ出してしまい、水原や博達が慌てて追いかける。そして二人の中をはっきり恋人とさせ、皆喜んだ。
リリーは寅次郎の恋に興味を持ち、寅次郎ととらやの面々は、過去のマドンナ達を思い出す。
一方リリーは、自分から相手を惚れ抜く、能動的な恋に憧れていた。
リリーはその日とらやに泊まり、隣室の寅次郎と言葉を交わす。
北海道の農家・栗原家にさくらはお礼を送り、礼状が届いたので、返事を寅次郎と考える。そのついでに、リリーにもとらやにたまに遊びに来てもらおうと考える。
その頃、リリーは母親と会い、金を渡す。リリーは母の事を嫌っていた。
その夜、酔っぱらって大声をあげ、眠っていたとらやを叩き起こしたリリー。応対する寅次郎に仕事の愚痴をこぼし、だが寅次郎が思い通りの応対をしてくれず、泣きながら出ていった。
寅次郎はリリーのアパートを訪ねる。だがリリーは出て行った。
寅次郎は駅でさくらにカバンを持って来させ、もしリリーが現れたらばよろしく頼み、さくらは寅次郎の財布に金を入れた。
リリーから手紙が届き、歌手を辞め、結婚して寿司屋の女将になったと知ったさくらは、今でも寅次郎の事が好きという文で、リリーに安心する。
一方、寅次郎は北海道の栗原家を訪ね、また労働に駆け寄った。
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管理人の批評

1973年、昭和48年、日本松竹の作品です。
共演:浅丘ルリ子 織本順吉 毒蝮三太夫
遂に登場!シリーズきってのヒロイン、リリーの初登場作です。寅次郎と近い生業であり、最終作『男はつらいよ 寅次郎紅の花』でまたヒロインを演じる事になる彼女がどのように現れ、寅次郎と出逢ったのか。ぜひご覧ください。
織本順吉さんは現在でもドラマ『相棒14』に出演されるなど活躍の多い俳優さんです。『鬼平犯科帳』シリーズなど、その渋い語り口から生み出されるシリアスな空間は、他の追随を許しません。
そして最後の鮨屋のシーンに出演される毒蝮三太夫さんですが、その強烈な名前とは裏腹に、役者としては子役時代からのベテラン。成長で一時くすぶっていたのですが、ウルトラマンシリーズなどで見事にブレイクいたしました。
もっとも、顔と名前が知られるようになったのは、笑点の初代座布団運びとしてお茶の間に登場し、その時、司会をされていた立川談志師匠にその名前を付けられたそうです。
さて、劇中に登場する設定の「北海道の農家」。最近は『銀の匙』などでご存知の方も多いでしょうが、農家の朝は早いです。とても寅さんのような昼近くまで寝ている人間には務まりません。しかもこの当時はまだそんなに機械も導入どころか開発もされてなく、ほとんどが手作業。しかもそこだけなら食糧自給率100%を突破しているという広大な北海道です。かなりのハードワークで、寅さんならずとも倒れた事でしょう。北海道、いや、全て農家に感謝です。
シャイな者同士の恋愛は大変ですよね。関係が崩れそうで脆い。それでいてちっとも進展しない。こういう時周りがなんとかしてあげるべきだと思うのですが、この印刷所は失恋されて、郷里に帰るとでも言いだして人出が減るのを怖れるというのも多少あって、力を貸しています。失恋休暇もある昨今、管理職の方には頭の痛い問題だと思います。