阿部守・大槻孝之・海崎三郎・サトルタカダ・塚脇淳
「NEW HEAVY -東京ミーティング-」

6/12(木) - 6/29(日) 6/16(月)・23(月)休廊 12:00 - 19:00(最終日17:00まで)
展示風景
  • 写真1
  • 写真2
  • 写真3
  • 写真4
  • 写真5
  • 写真6
  • 写真7
  • 写真8
ここに集う5人の彫刻家に共通する素材は鉄である。
しかし、鉄を通して身体と労働の意義が芸術化してゆく過程はそれぞれ違っている。制作は、イメージと現実の間で実感としての人間性を求める行為であり、思考する身体と芸術のアイデンティティーを求める行為であるからだ。
彫刻は作家の身体の化身と言えるだろう。
環境にせよ社会にせよ人間にせよ、私たちは自らの向かうべき方向を、現実を直視することによって、ものが持つ抵抗に拮抗することによって探ってきたのではなかっただろうか。
表現においても、ものの本質に迫ろうとしてこの原初的な考え方や在り方に沿って探求しつづける作家は少なくない。
このような探求の姿勢と意味を、私たちは「NEW HEAVY」と名付け、表出する。
阿部 守

1954 東京生まれ
1983 今日の日本美術−ジュネーヴ‘83・ジュネーヴ市立歴史美術博物館・ラート美術館(スイス)
1985 第21回今日の作家展・横浜市民ギャラリー(横浜)
1987 国際鉄鋼彫刻シンポジウム・高田高路記念広場(北九州)
1990 BOGLAND SYMPOSIUM・ウィクロー山中(アイルランド)
1995 第7回バングラデシュ-アジア美術ビエンナーレ・オスマニ記念ホール(バングラデシュ)
1997 Innenseite〜平行ドクメンタ・カッセル旧警察学校他(ドイツ)
2001 個展・Pitt Rivers Museum:University Museum(オックスフォード)
2002 個展・福岡市美術館(福岡)
2003 Lulea Sommar Biennal・ノルボッテン公園他(スウェーデン)
2004 ART BELOW SEALEVEL−International Beeldh-houwers Symposium・キンデルダイク世界遺産地区(オランダ)
2004 個展・熊本市現代美術館(熊本)
2005 火焔鉄・北谷之窯(福岡)
2005 New HEAVY−自覚する鉄・CAP HOUSE(神戸)
2006 ギャラリー尾形(福岡)
2007 The Essences−福岡・台北現代美術交流展 ・福岡アジア美術館(福岡)
2007 神戸ビエンナーレ・神戸メリケンパーク(神戸)
2007 台北・福岡現代美術交流展・關渡美術館(台北/台湾)

毎日通る森の途がある。鬱蒼とした暗い森。夏は藪蚊の襲撃に遇う。6月には蛍の乱舞も見られ、この世のものとは思えぬほど幻想的な夜がある。森と言っても山の尾根の一部が寸断された場所である。程よい斜面の傾斜が日常の些事を忘れさせてくれる。
先日、そこに少しの間伐の手が入り、光が程良く差し込むことになった。暗かった森は清々しい森に変わった。自身の制作もこの森の間伐のように、あまり物事をこねくり回さずに、ちょっとした私の関わりが上質な作品となるようにしたいものである。その為には感性をいつも磨いていなければならぬ。厳しいものである。
大槻 孝之

1957 茨城県に生まれる
1981 ルナミ画廊(東京)/1984,91 安田火災美術財団奨励賞展(東郷青児美術館)
1986,90,97 愛宕山画廊(東京)
1989 現代茨城の美術展(茨城近代美術館)
1997,99,03 第2回雨引きの里と彫刻(茨城県大和村)
2000 「彫刻家たちのリトグラフ展」(ギャラリーOM、横浜)
2004 ギャラリーGAN(東京)
2005 NEW HEAVY展」 CUP HOUSE (神戸)
2005 「つくば美術展−歩く座標」 (つくば市)
2006 「雨引の里と彫刻2006」 (茨城県桜川市)
2006 「越後妻有アートトリエンナーレ、脱皮する家の制作に参加」 (新潟県十日町)
2007 「第22回現代日本彫刻展‘07」 (宇部市野外彫刻美術館)
2007 「Art Session TUKUBA2007展 磁場−地場」 (つくば市)
2007 「個展−満ち潮を待って」 メタルアートミュージアム光の谷

2005年神戸で行われたNEW HEAVY展では、5人の作家が鉄への思いをぶつけ合い、それぞれが放射する熱のようなものを持ち帰った。あれから3年、ギャラリーKINGYOで再びグループ展ができることをうれしく思う。私はここ数年、空間に触発されて作品を作ることが多くなった。そこには、色や匂いがあり、風が吹きぬけ、揺らぎ、また人間の営みや歴史があるからだろう。ギャラリーKINGYOの白い空間の中に、私の感じ取ったそれらを少しでも満たすことができればと思う。
海崎 三郎

1952 福井県に生まれる
1990 第2回長野県佐久大理石彫刻家シンポジウム(小海リエックス、長野)
1991 ねりまの美術‘91-彫刻の現在-(練馬区立美術館、東京)
1996 体感する美術‘96〈アーティストと考える〉サバイバル・ツール(佐倉市立美術館、千葉)
1997 第2回雨引きの里と彫刻(大和村、茨城)以降毎回出品
2000 「彫刻家たちのリトグラフ展」(ギャラリーOM、神奈川)
2001 ART DOCUMENT 2001福井の美術ナウ 森から町へ(金津創作の森、福井)
2002 An Exhibition of Contemporary Japanese Printmaking(ペンタラムギャラリー、バンクーバー)
2003 TUKUBA現代美術の磁場2003展(茨城県つくば美術館、茨城)
2005 New HEAVY 5人の彫刻家による提案『自覚する鉄』(CAP HOUSE、兵庫)
2005 麻生の道彫刻展(川崎市麻生区、神奈川)
2006 雨引の里と彫刻2006(桜川市、茨城)
2007 日本大学芸術学部美術学科彫刻コース教職員展「形の問題」(日本大学芸術学部所沢校舎、埼玉)
2008 個展(ギャラリーせいほう、4月予定)

鉄塊を前にした時、日常にはない時間を止めたような存在感があり、それはものであり続けようとする不快さも同時に持っている。受けとめる力と同等の力でその単位に立ち向かえなければ、自分のほうに引き寄せることも時間の中に解き放つこともできない。

思い通りにならない熱量と速度に翻弄されている自分がいる。一方で、次第に強くなってくる何かにつき動かされる確信のような衝動がある。
言葉でも形でも埋められないこの衝動が、彫刻を求める私の力になっている
サトル・タカダ

1943 東京生まれ
1983 埼玉美術の祭典で大賞受賞
1984 埼玉近代美術館彫刻広場で個展
1988 青森EXPO 88青函博記念現代野外彫刻展出品
1989 第6回ヘンリームーア大賞展、美ヶ原光源美術館賞受賞
1990 美濃加茂彫刻シンポジウム参加
1991 福岡、飯塚市モニュメントコンペ大賞受賞
1992 大阪彫刻トリエンナーレ、特別賞受賞
1993 第15回現代日本彫刻展、埼玉近代美術館賞受賞
1994 さいたま彫刻バラエティ、草加文化会館賞
1997 雨引きの里と彫刻展
1998 韓国プサン国際彫刻シンポジウム招待制作
2002 韓国プサンビエンナーレ招待制作
2003 台北市交通省パブリックアート、コンペ2等賞受賞
2004 オーストラリア、Sculpture by the sea 参加
2005 ベトナム・アンザン国際彫刻シンポジューム参加
2006 台湾・台北市交通部ビルモニュメント設置、雨引きの里と彫刻展 韓国・ソウルasian power展
2007 宇部ビエンナーレ・入選 ロシア・ペンザ市国際彫刻ブロンズシンポジューム参加、アメリカ・ニューハンプシャー 国際彫刻シンポジューム招待参加
2008 個展・メタルアート美術館4月予定

鉄がイメージする重いとか強いとか重工業的なものが現代美術において人間復活する位置を模索しているそれは手仕事の喜びと静かな反抗とに裏打ちされて時代にある種の重しと働くのではないかと思う。人間は遥かな時間を夢想し、創造する事の勤めを果たすべくここに彫刻家が集まる。
塚脇 淳

1952 京都府生まれ
1980 スチュワート・ジョセフと2人展(アメリカンセンター・京都)
1983 第5回エンバ賞美術展 優秀賞受賞(エンバ中国美術館)
第16回現代日本美術展(東京都美術館)第10回現代日本彫刻展(宇部野野外彫刻美術館)
1984 アート・ナウユ84(兵庫県立近代美術館)
1986 第1回三田彫刻コンペティション大賞受賞
1987 第3回本郷新賞受賞、札幌彫刻美術館で個展
1994 芸術祭典・京「京を創る」三栖閘門プロジェクト
1998 アーティスト・イン・レジデンス(BEMIS Center for Contemporary Arts,USA) 個展(KCAL、尼崎市)
2002プサンビエンナーレスカルプチャープロジェクト(Pusan,KOREA)
2003 個展(西宮市大谷記念美術館)
2004 「直感の十字路」(茶屋町画廊、大阪)
2005 自覚する鉄「NEW HEAVY」展(CAP HOUSE、神戸市) 個展(ギャラリーけやき、兵庫三田)
2006 二人展(ギャラリー揺、京都)
2007 彫刻家の平面展(ギャラリーせいほう) WORK IN公開制作(CAP HOUSE、神戸市)

「捨てるだけ捨ててしまって、残ったものを表わせ」この言葉を唯一の手がかりとして始めた長いながい鉄との旅、今やボルトもなくなって一枚の鉄板をぐるぐる巻きにしていくだけになってしまった。この先どこへ向かうのか、まだ不安定な感は否めない。けれども何か大事なことに抵触している感覚はある。その感覚を信じて進むしかない。次へ向かうためにここにいるのだから。