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BAR STORY
時の流れ
          Glenfarclas
「たまには、こんなモルトもどうですか?」
そう言ってバーテンさんが出してくれたのは、グレンファークラス21年。
普段はアイラ・モルトのような、少し癖のあるモルトを好んで飲むが、勧められると浮気心が出てくる。だから、未だに「いつものお酒」が出来ないでいる。
テイスティンググラスに注いでもらうと、少し甘い香りが漂う。どうやら、グレンファークラスはシェリー樽で熟成させるため、少し甘い感じの香りがするらしい。同じ原料を使っているのに、様々なウィスキーの銘柄が存在する理由の一つが、こういった熟成樽の違いにある。製造法の一過程 が違うと、全く違った味わいになるのだから、酒の世界は面白い。多分、酒好きが酒をやめられないのは、そんな面白さがあるからだと思う。
先日、久しぶりに高校時代の同窓生に会った。別段、特に仲のいい奴ではなかったが、久しぶりということもあり、喫茶店で近況など話した。
「今でもあの店行くの?」と彼。
「あぁ。たまにね。」と私。
あの店とは、高校の頃、仲間でよく集まっていた喫茶店。同窓の中では有名な店だったが、卒業してからも訪れるのは、私を含む数人だけになっていた。
「俺も行こうとは思ってるんだけどさ。なかなかね。」と彼。
「飲みに行く方が忙しいんだろ。」と私。
「そうでもないけど。今度飲みに行こうぜ。」と彼。
「あぁ。いい店知ってるよ。」と私。
「じゃ、また時間出来たら連絡するよ。」と彼。
「おう。」と私。
少しトロリとした感じの舌触りと、甘さ、柔らかな樽の香りを楽しみながら、高校時代を思い出してみる。この酒も、あの頃はまだ樽の中で静かに時を刻んでいたのかと思ったりもする。
彼からの連絡は、まだない。
グレンファークラス 21y
Glenfarclas 21


ハイランド地方、スペイサイドのモルト。蒸留所は1836年創設。
”グレンファークラス”とは、ゲール語のGleann-Fearann-Glas、「緑の草の生い茂る谷間」から転訛した地名。
すべてをシェリー樽で熟成するため、濃厚な香りで、舌触りも特徴的。
アルコール度数、43.0%。
撮影協力:Bar La siesta (MATSUMOTO)

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