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BAR STORY
一日の終わり
          Caolila
空になったテイスティンググラスをもてあそびながら、煙草に火をつける。
白い煙が、疲れたように体にまとわりついてくる。
「どうしますか?」
バーテンさんが声をかけてくる。バックバーに並ぶ瓶を一通り眺め、今日最後の酒を決める。
「カリラ、ください。」
アイラ島の海辺にある蒸留所で、長い年月の間、海風を浴びているせいか、少し塩辛さのあるシングルモルトだ。酒は、つくられている土地の風土が育てるなんて言葉をよく耳にするが、このモルトも、まさに風土が育て上げた酒だと思う。
今日最後の酒を飲みながら、今日という日を振り返る。
別に特別なことがあったわけでもなく、いつもの日常と何ら変わりばえのしない一日だったように思う。が、一日を終えようとする時間に、落ち着ける場所で、美味しいお酒に今夜も出会えたことが、自分の一日を幸福にしているように感じ、ゆっくりとカリラを口に含み、味わっていく。
とりあえず、今日一日、無事に終わった。明日もまた、いつもと変わらない一日かもしれないが、もしかしたら、今まで経験したことのないような一日になるかもしれない。そんな期待を胸に、店を出る。
「お休みなさい。」
「気をつけて。」
カリラ 12y
Caol ila 12

アイラ島の海辺にある1846創立の蒸留所。
カリラとは、ゲール語で「アイラの海峡」を意味する。
少し塩辛く、ドライな感じのするモルト。
重たさはなく、癖のある割に飲みやすい。
撮影協力:Bar La siesta (MATSUMOTO)

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