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BAR STORY
偉人の悩み
          Absenth
手元にアブサンの注がれたグラスがある。
物思いに更けてみたいとき、このお酒を飲むことが多い。
1800年代に一世を風靡し、1915年に作ることも、売ることも禁止された。理由は、主成分の一つであるニガヨモギに含まれる成分が、中毒性が強いためとか。
確かに、初めて飲んだときは、その癖の強い味わいに驚きもしたが、しばらく飲んでいないと、何となく飲みたくなる。もちろん、今飲めるアブサンは、ニガヨモギの成分を調整しているので、中毒性はない。
しかし、かつて「緑の悪魔」とも呼ばれ、ロートレックやピカソ、ゴッホやヘミングウェイが愛飲し、手放すことのできなかったことを考えると、物思いに更けるときには最適なのかもしれない。
そういえば、ロバートキャパはピカソやヘミングウェイと交流が深かったと聞く。世界中の戦場を巡り、その中で人の生きる力の強さ、飾られることのない戦場の姿、不安と希望の入り交じった家族たちを撮り続けた彼も、悩みながらアブサンを飲んだのだろうか。
偉人の悩みにはほど遠く、ちっぽけな悩みかもしれないが、少し、物思いに更けてみようか。
アブサン
ABSENTE

薬草系のリキュールの代表格。
1900年代初頭には中毒性が強いため、製造及び販売が禁止されたが、1900年代末頃からいくつかの銘柄が中毒性の成分ツヨシ(ニガヨモギに含まれる)の濃度を調整し、販売されるようになった。
写真は数々の香辛料のエキスを八角や砂糖などと浸漬した新しいタイプのアブサン。
撮影協力:Bar La siesta (MATSUMOTO)

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