仮 面 舞 踏 【 月 影 の ジ ル バ 】
第 2 曲
5・傷痕の記憶

 途切れ途切れになっていた記憶。
 抜けていた部分を、全て思い出した。
 あの時、何が起きて、どうしてああなったのか。
 真実を、取り戻した。……けれど。
 ――できることなら、忘れたままでいたかった……


 静寂の支配下。
 室内にいる人物は、二人。そのどちらもが動くこともなく、口を開きもしない。
 その重苦しい沈黙の時間は長かったのか、それとも短かったのか。
 自分のベッドに力なく座って床に視線を落としていたマグナの視界に、音もなく足が入り込んできた。すぐ前で止まった足。少し後に、頭に触れてきた指の感覚がして、溜息が耳についた。それから――
「話して楽になるなら聞くし、話したくないことなら無理に話す必要はないわ。だから、今はもう休みなさい。暴走召喚は生身の人間には負担が大きすぎる。余程強い魔力と素質を備えた者でもない限り、どんな後遺症があるかわからないんだから」
 いつも通りの、変わることないの言葉。
 下手をすれば全員の命すら危うかった。そんな危険な状況を作ってしまったのに、気にしないとばかりに変わらずに接してくれる。普段のマグナなら、このことでかなり救われていただろう。
 けれど、今のマグナには――つらかった。苛立ちを、覚えた。
「暴走、召喚……?」
「そうよ。習ってないの? 事故ではなく、意図的に行なう特殊な召喚方法。誓約済みの召喚石に通常以上の魔力を注ぎ、威力の強い術にするのが最も多いパターン。もちろん、それなりのリスクもあるけれど」
 俯いたまま、聞きなれない単語を呟けば、すぐに答えが返ってきた。
 その内容が、真実を形作るピースとなって空白を埋めていく。
「それを、俺が……?」
「……マグナが今日やったのは、石も誓約も不要として、魔力のみでたった一度だけ呼び出す方法。通常なら道具とかに分散させるものを全部自分の魔力だけでしなければいけないし、呼び出した相手が相手だったから……魔力、ほとんど残ってないでしょ」
 それは、わかる。目の前にいて自分に触れている彼女の魔力すら、今は感じ取ることができないから。
 魔力の感知は、己の魔力とのある種の共鳴によってできる技術。それができないということは、己の内に魔力が残っていないということ。
「……後遺症、って……?」
「詳しくはあたしも知らないよ。失敗すれば事故に直結する危険な技だから、生身の人間での成功例って少ないみたいで……そもそも、試そうとする人自体が少ないから」
「後遺症は何なんだ……っ」
 知りたい答えが返ってこない。そのことがまた苛立ちを呼び、少し声が荒くなった。
 だって、知っているはずなのに、はぐらかすから。
 『暴走召喚による後遺症』が存在することを知っているということは、その事例が最低でもひとつはあるはずなのだ。
 それを知らないとは考え難い。
 少しの間を置いて、溜息が聞こえた。それから、求めていた答えが――与えられる。
「あたしが知ってるのは、ひとつだけよ。『魔力そのものを失う』こと。ギリギリ高位と認められるような魔力を持っていた、あまり素質の高くない人だったと。暴走召喚の成功と引き換えに魔力を失って、その後召喚術はもちろん、魔力を感じ取ることすらできなくなったって」
 またひとつ、埋まる空白。
「素質、が、あれば……後遺症は、ない……?」
「……そうでしょうね」
「じゃあ、俺には、素質がある――と?」
 今は、の魔力を感じ取ることはできない。それは己の内に魔力がないから。
 けれどそれは、『失った』のではなく『使い切った』だけのこと。
 止むことのない頭痛、重い睡魔、身体を支配する倦怠感。それらは全て、体力にまわっている分のマナを魔力へと変換して補おうとしている証。――即ち、魔力を失っていない証拠だ。
 自分の魔力量が、高位召喚師と認められるには到底足りてない自覚はある。にも拘らず、魔力を保っている己には、そうできるだけの素質があるということだ、と。
「今、こうして召喚師でいる俺には、素質があるっていうことなのか?」
 彼女の言葉は、暗にそう言っていた。
 召喚師にならされたのも、暴走召喚を行使できたのも、それでも尚召喚師としていられるのも。全ては『素質』のせいだ――と。
「素質があったから、派閥に連れて行かれて召喚師にさせられたのか?」
 それが、全ての元凶なのか。
「素質がなければ派閥にも行かずにすんで、あの町にいられたのか?」
 それがなければ、全く違う『今』になっていたのか。
 どうしても、そう考えてしまう。町にいた頃が幸せで、派閥には苦痛しかなかったから。
 悪い『何か』がなければ、耐えられなかったから。
 ――けれど。
「そんなものがなければ俺は! ――トリスは傷つかずにすんだのか!?」
 抱えきれない想い。受け入れたくない事実を、叫ぶように吐き出した。
 それを唯一聞いたからは……当然ながら、答えは返ってこない。マグナ自身、求めてはいないので気にしていない――というか、そんな余裕など、初めからなかった。
 吐き出した問いに対する答えは、もうマグナの中にある。最初から、わかっていた。
 答えは――否。
 もし素質を持っていなかったとしたら、『今』など存在しなかったのだ。あのまま町に留まる未来など、ただの夢幻にすぎない。
「……違う……」
 曖昧なままの記憶しかない状態でも、それはわかっていたことだった。
 ただ、受け入れられなかっただけ。認めたく、なかっただけ。
「違う……そうじゃない……もし、俺に素質がなければ……俺も、トリスも、殺されていた……」
 素質があったからこそ、生きていられる。未来へと、時間を繋ぐことができた。
 それが、事実。――だけど。
「町に、盗賊が来て、略奪して……盗賊たちの首領が、外道召喚師で……子供を渡せば、引き上げるって言ってきて……町の、人たちは、俺たち孤児を差し出そうとして……庇ってくれた院長先生が、殺されて……っ」
 それを、認めることは。
「盗賊に、渡された俺たちは……魔獣の、エサに……っ、されて……っ、オモチャ、みたいに……逃げる子供が引き裂かれていくのを、笑って見てて……っ、トリスの、番に、なって……っ」
 同時に、全ての感情をも、受け入れること。
「トリスを、助けたかった……助けたいって、思うと同時に、全てを、奪おうとする『大人』が、憎くて……っ」
 あの時、心に満ちていた真っ黒な憎悪を、受け入れること。
 そして……
「俺が、呼んだ……『略奪者』を、殺せるモノを……っ。外道召喚師が持っていた召喚石に、魔力を注いで……その、せいで……トリスまで、死にかけた……っ!」
 助けたかった……守りたかったはずの相手を傷つけたのが自分である、と。
 その、事実をも、認めることだ。――それが、できなかった。
「守りたかった、はずなのに……っ、憎しみしか、見えなくなって……っ、俺が憎しみによって望んだままに、盗賊も、町の人も、ほとんど死んで……っ、トリスまで、巻き込んで……っ!」
 憎悪に囚われ、血に穢れた自分を。大切だったはずの者を傷つけた自分を。
 認めたく、なかったから。
 自分以外の『何か』を悪くして、その事実から目を逸らした。完全な、責任転嫁だ。
「認めたく、なかった……そんな自分は……だから、記憶を封じて……それでも、心のどこかで罪悪感があって……それから逃れるために、俺は、トリスに対して『優しい兄』の仮面をつけるようになったんだ……」
 苦痛しか与えてくれない派閥の存在にも、心の奥では喜んでいた。
 派閥を悪者にすることで自分の罪から目を逸らせたし、『トリスを守っている自分』に満足することもできた。
「俺は、いつだって、自分のことだけだった……自分のことしか、考えてなくて……守っている、つもりで……それが、トリスを駄目にするなんて、気付きもしないで……っ!」
 自己満足の中で、生きてきた。それが、取り返しのつかない過ちであることに気付いた時――そこから、逃げ出したのだ。
 本当の意味で受け入れることをせずに、目を逸らし、逃げ続けた。
 その結果が、今日のことだ。
「俺の、せいだ……全部……っ、俺が、弱いから……子供だから……っ」
 こうなることが、わかっていたから……目を向けて、認めてしまえば、後悔と自責の泥沼に沈むということが――そこから抜け出せなくなることが、わかっていたから。
 だから、認めたくなかった……受け入れたく、なかったのだ……

「――それで、どうするの?」

 静かな声が、空気を打った。
 決して大きくはないのにマグナの中には響いて聞こえたその声は、今までずっと懺悔に近い告白を聞いていたのもの。
「マグナには召喚師としての素質がある。そのために昔住んでいた町を壊してしまったことも、そのお陰で今生きていられるのも事実。今日も、危険な目には遭ったけど、結果として全員無事だった。悪いこともあったけど、良いことだってあった。それら全て事実よ」
 残酷なまでに冷静に――淡々とした口調で言われた言葉が、胸へと突き刺さる。
 ――ズブリッ、と。泥沼にまた、深く沈みこんだ気がした。――けれど。
「だから、マグナはどうしたいの?」
 繋がっているようには思えない問い掛けに、マグナは答えられない。
 その意味することすら、理解できていないから。
「……どう、って……?」
「どれだけ悔やんでも嘆いても、過去は変えられないの。それらはもう、手の届かないものよ。手が届くのは、未来だけ。自分の望むように作り上げていけるのは、未来なの」
「未、来……」
「そうよ。マグナは、これから先をどう生きたい? どういう自分になりたい?」
 これから先のこと。目的、目標。叶えたい願い。
 彼女の問いかけは、忘れていたそれらのものに、目を向けさせた。
 ……一人で先に試験を受けたのは、旅に出るため。トリスから、離れるため。
 それは確かに、逃げるためでもあったのだけれど……
「トリスを、駄目なままにしたくない……だから、俺自身が、妹離れしなくちゃいけないって……」
 側にいる状態で試みてはみたけれど、できなかったから……だから、距離を置こうと思ったのだった。
 物理的に離れている間に、精神的にも――自立したい。それがきっと、トリスのためにもなる。
「仮面を、はずして……本当の俺で接したい……間違ってた道を、正しい方向へと戻したい……」
 それが、目標。それを達成するために、旅に出ることに決めたのだ。
 逃げる事実を覆い隠すための大義名分や偽善だと思われてもいい……それでも、必ず叶えたい。それだけがきっと、自分にできる贖罪だから。
「俺は、『俺』になりたい。ちゃんと、胸を張って生きられるような俺になりたい」
 人を駄目にするのではなく、人に迷惑をかけず、誰かの役に立てるような……支えになれるような。
 そんな自分に、なっていきたい。
 ……血にまみれた己の両手では、夢のまた夢なのかもしれないけれど。
 早くもよぎった失望の予感を遮るように、ぽんぽん、と軽く頭を叩かれて。
「おっけ。それがマグナの望みなら、あたしは全力でサポートするよ」
 明るい声が、勝気に宣言した。
 ――認め、られるということ……たった一人にでも己の道を肯定してもらえることで、こんなに心が軽くなるなんて知らなかった。
 そして……
「……ありがとね、マグナ」
 ようやく顔を上げることができたそこには、優しく笑うがいて。
「いっぱい悩んで、苦しんで、それでも今まで生きていてくれて、ありがとう。そんなマグナの声だったから、きっとあたしに届いたんだよ」
 許されるということが、こんなにも安心できるものだと――初めて知った。そう……あの一件以来流したことのなかった涙が、溢れてくるのを止められないほどに。
 マグナの周囲には、もう泥沼はなかった。
 足元には、しっかりとした大地。
 道は険しいだろうけど、そこには確かに、光が――満ちているのを、感じた……



 広間に直結している部屋の扉が開き、広間にいた者の視線が出てきた少女に集中した。
、マグナは?」
「ようやく眠ったとこ。明日になるか明後日になるかわからないけど、自分で起きてくるまで寝せといて。回復にどれだけかかるかは、あたしにもわかんないから」
「ああ、わかった」
 マグナと同室の二人との会話に、他の者にも安堵が浮かぶ。
 そんな広間の面々を見ることもなく、はその辺に視線を向けて口を開いた。
「こっちは?」
 その問いは、先程まで話し合っていた内容に対してのもの。
 曰く、儀式関係者の四人の処遇について。
「とりあえずは、信じてみるってことで一致したよ」
「同居決定ってことね」
 溜息と共に呟かれた言葉には、呆れのような嫌悪感のような……何か負の感情が含まれていた。
 その理由を知るナツミ以外にも、それはわかったらしい。
「……君は、反対なのか?」
「なんで? これは君たちの問題なんだから、君たちの好きにすればいいことでしょ。あたしには口出しする気も、その権限もないよ」
「権限って……」
「あたしはマグナの護衛獣だって、何度も言ってるよね? 決定権はマグナにあるの」
 あくまで召喚獣としての立場を主張する彼女の言葉に、すぐに納得したのはレイドたち地元民。
 支配ではなく信頼関係で結ばれていても、召喚主の意思に従うという基本は変わりないのだ、と。概念として定着しているが故の得心だろう。
 対するハヤトたちは――恐らく、その考えに対して抵抗を感じているはずだ。
 親や教師、あるいは上司などの指示に従うということはわかる。社会生活を送る上で必要なこととして学んできているから。
 だが、今回のはそれとは違う次元だ。
 良く例えて言っても、雇い主と使用人の関係――といったところだ。意見を述べることも許されず、主の決定に無条件で追従しなければならない立場。
 同じ人間でありながら、個人の意思を尊重されないというそれは、日本で生きてきた彼らには受け入れ難いことだろう。
 ナツミとてそれは変わりないけれど、がそれを甘んじている理由がわからなくもないから。
「悪いけど、あたしにとって最優先事項はマグナに関わる全てだから」
「じゃあ、マグナの意見はどんななの?」
 あえて先を促した。
 すると、は小首を傾げて上のほうへ視線を投げて。
「君たちに何か言ってた?」
 また、訊き返してきた。
 それにはハヤトとトウヤが顔を見合わせて、ハヤトが答えた。
「妹に会いに帰る時まではこの街に留まるから、その間ならできる限り力になる――って」
「そう。なら、あたしもそうするだけよ」
「けど……あの四人については、なんて言うか……」
 初めに協力を申し出てくれたマグナを信用していない――と。そう受け取れなくもない決定だから。
 そんなことは決してないのだけれど、このことでマグナとの関係が悪くなるのは嫌だ。
 そんな不安を表わしたハヤトに、は溜息ひとつ。
「喜ぶだけだと思うけど?」
「――え?」
「マグナの劣等生アーンド抜け作っぷりは、もうみんなも知ってるでしょ? 自分一人じゃ手に余る問題に、専門知識を持つ者が四人も現われたんだよ? 肩の荷が減ったって、泣いて喜びそうだけど」
 ――確かに、と。
 彼女が言ったことが容易に想像でき、全員が全員、視線をあらぬ方へ向けた。
「不安は解消できた?」
「あ、ああ……」
「そ。リプレは台所?」
「ああ、何か用かい?」
「マグナのこと、伝えとく必要あるでしょ」
 レイドに答え、ひらっと片手を振って台所へと向かう
 心配事がなくなったということで、他の者もそれぞれに動き出す中、ナツミはが向かった先をじっと見つめていた。


「……何かあったの? マグナと」
 庭に佇んでいたの耳に、親しい者の声が届いた。
 は一瞬だけそちらへ目を向け、ナツミ一人であることを確認して――俯く。
?」
 拒絶を示すように奥に生えている木のほうへと歩き出した背に、怪訝な呼びかけがかかる。その後、追いかけてくる足音。
 自分が止まり、彼女も止まった。――間。
 どちらも喋らぬ時が過ぎ、風が一陣吹いて。
「あたし、ホントはナツミに会いたくなかった」
 打ち明けたのは、ずっと隠してきた本心。
 親の都合による引越し・転校という形で別れて7年。小学生の時はいざ知らず、中学生にもなれば会おうと思えばいくらでも会えたのだ。高校生になれば尚のこと。
 けれど、そうしなかった。
 手紙での遣り取りは続けていたけれど、電話をすることはなかった。本当は……ナツミが病院に来たことも知っていたのだ。でも、会わなかった。
 自分の状態は、恐らく他人よりはよくわかっている。だからこそ、だ。
 ――会ってしまえば、離れられなくなるのはわかっていたから。
「知ってたよ」
 あっさりと。何の動揺もなく告げられた言葉で、ようやくはナツミを振り返った。
 そこには苦笑を浮かべた親友の姿。
「あたしも、そうだったから」
 隠し事は、隠し事ではなかったらしい。
 自分の傷は彼女の痛み、彼女の傷は自分の痛み。
 あの時背負った重荷は、今も二人を繋ぐ鎖となっている。
「でも、二度と会えなくなるよりは、離れられなくなることのほうがずっといいから。だから、会いに行ったの」
 このままではいけないと、わかっている……この想いも、同じだろうか。
「……マグナは、強いよ。記憶を封じてまで置き去りにしてきた重荷を、もう一度背負って前へ進む道を選んだもの」
 自分たちと、同じ重荷を。マグナも背負っていたのだ。
 だから――だからこそ、彼の魂の叫びはに届いた。
 でも、選んだ道は……正反対のもの。
「……成長してないね、あたしたち」
 あの時、マグナにかけた言葉は、が思ったことではなかった。
 あれらは全て、かつてこの世界で出会った者が与えてくれたもの……あの言葉のお陰で、もまた泥沼思考から救い出されたのだ。
 けれど、そのあと選んだ道は――
「うん、成長できてない。でもさ、このままでいいとは思ってないでしょ?」
 ナツミの言葉は、の疑問に答えを与えた。
 やはり、同じ想いでいる。
 ――それが、何より駄目なことなのかもしれないけれど。
「今までが駄目だって思ったなら、今、ここから始めればいいんだよ。駄目じゃなくするために、今から動き出せばいいんだよ」
 の考えは、当たりだと言えるのかどうか……
 ナツミはにはなかった考えを口に出してきた。
 己の考えを正しいとするならば、全く同じ想いを抱いていない今は、駄目じゃないということだろうか。
 逆にナツミの考えを正しいとしても……既に駄目じゃなくするために、動き出している――?
 でも――本当に……本当に変われるのか。今の今まで……7年間も何も変わらずにいたのに。
「遅すぎる――なんてことは、ないよ。絶対にね!」
 が抱いていた不安を払拭するかのように、実にタイミングよくナツミが言った。
 ナツミは――笑っている。苦笑ではなくて、どこか自信に満ちた笑み。
 彼女のこの笑顔に、自分はどれだけ救われただろう……希望を、見出せただろう。
「……変われる、かな?」
「変わっていこうよ。依存し合うんじゃなくて、離れていても支えあえるように」
 自信なさげに、不安げに、問い掛ければ、即答で欲しい言葉をくれた。
 ――ああ、本当に……ナツミが己の希望だった……
 改めて彼女の大切さを認識し、同時に新たな道へと踏み出す決意を――

「――うん……」

 小さな、呟きに。
 込めた。

第2曲 かめんのりゆう・完