「姐さん、ソレ、煙草じゃないですよね?」
食事を終えて、すぐに煙管を銜えたに掛けられた問い。
ここは小高い丘の上。偶然出会ったに誘われて、昼食を共にした直後のこと。
立ち上る煙は、ゆっくりとのほうへ流れていて。
「……煙い?」
「あ、いえ。あたし、煙草は苦手だけど、それは何か匂いが違うし……平気だから」
何なのかなぁって、思って。
そう続いた言葉に、は深く吸い込んだ煙を空へと吐き出す。
「……薬草……」
今の自分には、なくてはならないもの。
伝えたのは、たった一言。けれど。
「精神安定剤、ですか?」
返ってきたのは、的を射た推測。いや、推測というよりは、確認に近いかもしれない。
ゆるりとのほうを見た。
睨んでいたつもりはないのだが目つきが鋭かったのか、は大きく目を瞠って……そして微笑んだ。
「深い意味はありません。なんとなく、です」
その笑みに、影が差す。
「なんとなく……あたしにも、吸えるものかなぁ……って」
――意外だった。
笑っているか、怒っているか。いつも誰か彼かと騒いでいる姿を見かけていたから。
ただの興味本位か、気の迷いか。
どちらにしろ……
「やめておいたほうがいい」
軽い気持ちで体に入れるべきものではない。
それ以前に。
「は、こんなものに頼らなくても、大丈夫だろう?」
彼女には、悩みを打ち明けられる相手も、支えてくれる仲間もいる。
もちろんにもいるのだが、はと違って素直にそれをできる性格だ。
だから、こんな物に頼らなくても、人に頼るほうが、ずっと健康的で良い方法だろう。
少なくともの目には、はそういう人種に見えていた。――でも。
「……どうでしょうね……」
高く天を仰ぐ彼女は、触れれば壊れてしまいそうなほどに、儚く見えた。
意外な、姿。意外な、一面。
ほんの僅かな間の、出来事。
「――!! 姐さ――ん!!」
風に乗って聞こえてきた呼び声に、ぱっといつもの笑顔がに戻って。
「♪」
勢いをつけて飛び込んできたに抱きつき、逆に草むらへとダイブする。
いつもの騒がしさが戻る。
先程の影が嘘のようなその姿。
けれどあれも真実。
が無表情の下に隠しているものを、は笑顔の下に隠していた。
恐らくは同じモノ。
それでも、やはり、それは違うモノ。
覆っているものも、抱えている理由も、潰されないための方法も……
同じだけど違い、違うけれど同じ。
そして、同じにしてはいけないモノ――……
「姐さん! が甘味処の無料券を持ってます! 食後のデザートはいかがですか!!」
「だあ――!! あたしが誘おうとしてたのにぃ!!」
とりあえず、今はこうして笑っていられればいいと。
「行く」
そう思う。
END