「…………………………何転んでんだよ…」
いきなりのこの状況を理解するのに、多少時間が掛かった。
輝くアルク川の水面(みなも)、広く続くこの空の下。
久しぶりに外に出て、ゆっくり1人で過ごそうと思っていたトコロ…
コイツの登場で、俺の休日が飛んだ。
「ご、ごめっ…」
目の前に尻餅……と言うか、盛大にすっ転んでいるの姿。
こいつはこんなに…………ドジだったか…?
記憶を探っても、やはり鮮明に映し出されるのは戦闘中の姿。
女だってのに刀振り回して、躊躇なく切り倒すその姿は、
勇敢て言葉じゃたくまし過ぎて、でも舞っている様に見えるそれには、
美しささえ感じてしまう程。
そんな奴が今ここ、俺の目の前で完全無防備に転んだ。
「お前、俺の名前呼んで駆けて来るのは結構だが、
……………………足元くらい注意して見たらどうだ?」
地に座っているの情けない姿を、俺は中腰で見下ろす。
「えっ、あ、いや……。アルク川なんて毎日の様に来ているから…
まさかこんなトコロに窪みがあったとは思わなかったんだ…」
少し照れくさそうに言うの頬は、薄い朱に染まっていて、
ポリポリと頭を掻く様子から、…自身でも予想だにしなかったのだろう。
いや、まあ……本人も言ってる事だし。
「まったく…ほら、早くつかまれよ」
片手を自分に差し出した俺に、はきょとんと瞳を丸く開いた。
その表情に、俺はなんだと首を傾げた。
「意外か?俺がこういう事するの」
その言葉を聞いて素早く首を横に振るに、俺は苦笑した。
「ち、違う違う!!
め、めずらし…………い………………かなぁ……
とか……思ってみたりしたんだけど……」
自分で言った言葉に驚いて、段々小さくなっていく声に俺は軽く笑った。
「それを、意外って言うんだよ。
…………お前、実は馬鹿だろ?」
まさか馬鹿と言われるとは思っていなかったらしく、
はえっ?!と声を張り上げた。
「ばか…………え、あ、いや……
………………僕は馬鹿じゃない!」
その言葉の後に、小さく『多分』と聞こえたのは気のせいにして。
否定の言葉を出すまで、結構時間がかかったなと思ってみれば、
の表情は、いつもと違う微笑みとかではなくて。
その言い分が必死と解る程、紅潮した頬は小さく膨れている。
その様子が可笑しくて、ああ、こんな表情もするのかと。
なんだか……新鮮で、……微笑ましかった。
「そうむくれるなって。褒めてるんだぜ?」
「…………笑ってると、説得力に欠けるよ。ソル…」
「ま。まあまあ落ち着け。
――――って!その刀をまずしまえ!!!」
「………………………………」
俺の言葉に、は小さく息を吐いて。刀を静かに鞘におさめた。
…………まさか、……抜刀するとは思わなかった…………(滝汗)
「これだけは言える。……貶してるんじゃないさ。
ただお前は、危なっかしいって事だよ」
「……僕には、貶しているようにしか聞こえない…よ?」
疑り深い様子に、俺を上目でジッと見つめるは、
なんとも………………、歳相応の女の子だった。
「……目を離すと、すぐコレだ……」
目を細めて、柔らかい微笑みをしながら言った言葉は、
あまりにも小さくて、僕は聞き取れずに首を傾げた。
「だから俺は…、……いや何でもない……」
僕を見つめていた瞳は、不意にそれて。
ソルはポリポリと頭を掻いた。
「ソル…?」
様子が少しいつもと違うから、首を傾げて見ると、
ソルはなんでもないと苦笑しながら、首を横に軽く振る。
「そんな事より、だ。
お前、いつまで俺をこの体勢にさせておくつもりだ?」
「あ…」
ソルはずっと僕に手を差し出している体勢で。
「ほら、早くしろ」
結構腰が痛くなるんだからな!と付け足して言うソルに、
僕は思わず微笑んで、ソルの手を取ろうと右手を差し出すと、
ソルは、素早く僕の手首を優しく握った。
その時、ソルの背中から見える大きな空が、
なんだか身近に思えて、空に浮かんでいるみたいだと錯覚した。
「どうしたんだ?」
起き上がろうとしないに、ソルは怪訝そうに首を傾げた。
「なんだか、……空に飛んでるみたいだ」
「……は?」
間抜けな声を出したソルに、僕は笑って。
「君も、こうすれば解るよ」
反対にソルの手を引っ張った。
「えっ?!!ちょっ!!うわっ!」
すると慌てたように声を出して、空いている片手をパタパタと振って。
それが鳥の翼の様に見えて、余計に空……みたいだった。
突然が引っ張るもんだから、
バランスを崩してに倒れるようになってしまった。
目の前に倒れてくる俺を、器用には受け止めて、仰向けにした。
大きな空が、瞳の中に映った。
「こうするとね、……なんだか空が近い気がするんだ」
微笑みながら空を見上げるに、俺はそういう事かと小さく息を吐いた。
「でも、……ここは空の下だ」
「うん」
俺の言葉にもニコニコと頷くに、微笑んだ。
…………らしい。
「でも……」
俺は言いながら、寝転んで空を仰いだ。
するとは嬉しそうに、俺の横に寝転んだ。
「…………解るかも知れない」
空に飛んでるみたいだと馬鹿げた事を思った場所は。
―――――――空の下、で。
「ソル…、一体君は何をやってるんだい?」
空の色と似ている髪を持っている奴が、俺の目の前に現れた。
「………………キール………………(滝汗)」
俺は目を見開いて、身体を起して兄を見やった。
兄は静かに満面の笑みでもって頷く。
「何をしているのかと思えば、こんなトコロでと2人。
……………………何をやってるんだい?」
静かに言って、目をチラリとキールの手に向ければ。
…………………………サモナイト……石…………。。。。。。。
ああ、俺の人生。
もはやコレまでか!!?
「違う!キール!信じてくれ!!
俺は無実だ!最初、俺はここで1人静かな休日を過ごそうとだな…!」
「問答無用……」
ニッコリ……と笑って、サモナイト石が光った。
俺の記憶はここまでで、目を覚ませば……フラットだった。
あの後、寝ていたをキールが横抱きでフラットまで連れ帰ったとか。
……俺はガゼルが迎えに来るまでずっと、アルク川の水面に浮いていたとか。
そんな事は、広間で面白そうに話していたトウヤから後で聞いた事……。
空の下じゃなくて、……空の上に行くトコロだった……(切実)
END