【 恋 心 】

カチャリ・・・というドアが開く音で、私は読んでいた本から居間の扉に視線を移す。

「おかえりー。ネス・・・ティ?」

目に捉えたネスティの姿にびっくりして。
私はそのまま固まってしまった。
ネスティは、いつも以上に不機嫌そうな顔で。
私の座っているソファの方に歩いてきて、その両手に持っていたモノをテーブルの上にドサリ・・と置く。

「・・・ネスティ?」

「なんだ?」

「・・・・・・・・・・・・・・なに? このプレゼントの山・・・・(汗)」

そう。
ネスティが抱えていたものは、綺麗にラッピングされた大小様々な包みで。
なぜか大きな紙袋と。
それに入りきらなかったらしいプレゼントを、腕に抱えていたんだよね。




っていうか・・・ひょっとして・・・これって・・・・・(汗)




「・・・それは僕のほうが聞きたい」

「にゃ?」

「派閥から帰ってくる途中、見も知らぬ女性たちに、無理やりこれを渡されたんだ。
 訳もわからず。
 といって、その場に捨てるわけにもいかず。
 途方にくれながら、持って帰ってきたというわけなんだが・・・」

「・・・・・・うにゃッ////」

思わずネコのように声を出した私に、ネスティの怪訝な瞳が向けられたけれど。
そんなことよりもっ
これって・・・
これってーーーーーーっ

「・・・・ち・・・チョコレート・・・・?」

「・・・だと、数名は言っていたな・・・・」

ネスティは。
いつものよーに眉間の皺を深くして。
そのまま、私の方へチラリ・・・と視線を向けてくる。

「・・・・・・・中身を知っているということは・・・
 君にはこの馬鹿騒ぎの正体を知っている・・・ということだな?」

「ば・・・馬鹿騒ぎって・・・///」

なんというか・・・・
返事に困ってしまって。
私は少し眉をよせて、曖昧に笑って。
そのまま、ネスティから視線を逸らして、テーブルの上に置かれたプレゼントの包みに目を向ける。

よく見てみれば、そのラッピングの殆どが、パッフェルさんのバイトしているケーキ屋さんの包みで。
そういえば、あのケーキ屋さん・・・チョコレートも売ってたなぁ・・・
なーんて頭の隅で考えながら。
事の次第を理解した私は、また、苦笑してしまった。

「あのね・・・今日は、バレンタインデーなのよ」

「バレンタイン・・・・?
 なんなんだ、それは?」

「それはッ!
 女の子が男の子に告白するという一大イベントですよねッ、トリスさん♪」

「そうだよッ、アメル♪
 チョコレートに愛を込めて、勇気を持って好きな男の子に渡すんだよッ(きらきら)」




・・・・・・・・・・・・・・・どこから湧いて出た(滝汗)←兄弟子+




「・・・・・・・・えーと。
 とりあえず、大体は二人の説明の通りだよ、ネスティ(汗)」

「・・・・・・・・・・・・そ、そうか・・・(汗)」

いつの間にか扉の前に立っていた呆然とトリスとアメルを見つめながら(笑)
私とネスティは小さく溜息をつく。
ていうか・・・

「んで、トリス、アメル。
 この騒ぎって・・・やっぱりパッフェルさんのバイト先の?」

黙っておくと、手を握り合って瞳をキラキラと輝かせたままかも知れない二人に声をかけると。
トリスとアメルは、そろって大きく頷いた。

「パッフェルさんがね。
 から聞いたことを、ケーキ屋さんの店長に話したんだって~」

「それを店長さんが気に入って。
 今日は大々的にバレンタインイベントを行っているんですよ~♪」




あ、やっぱり(苦笑)




「それにしても、ネスティさんっ!
 何気に人気、あるんですねぇ(^^)」

「でも、なんとなく判るよ。
 ネス・・・遠くから見ているだけなら、すごく目の保養になるもん♪」




・・・・・・・トリス・・・何気に棘を感じるのは・・・気のせい?(汗)


うん、気のせい(^^)





「・・・・・・・・・・・・・・・・・馬鹿馬鹿しい・・・」

ネスティは。
テーブルの包みを一瞥して。
そして、呆れたように大きな溜息をついた。
そのまま私の隣に大きな音を立てて座って。
こめかみを押さえて、小さく首をふる。

「全く・・・。
 どうして女子供というのは、そんな馬鹿げたイベントが好きなんだ?」

「どうしてって・・・言われても・・・(汗)」




かなり返答に困ります・・・////




「見も知らぬ人たちに、突然こんなものを渡された僕の身にもなってくれ」




ごもっともです・・・




思わず小さくなった私に、ネスティは気付いたように視線を向けて。
しまった・・・というように、小さく吐息する。

「君のせいじゃないな・・・すまない」

「んー・・・でも、パッフェルさんに言ったの、私だしね~・・・」

気を使わせたことに苦笑して。
私はまた、テーブルの上のチョコレートに視線を向けた。

「でも・・・ホント・・・。
 ネスティって、もてるんだねぇ・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・からかわないでくれ(溜息)
 大体、僕は甘いものは苦手なんだ。
 こんなものを貰っても、処分に困るだけだということは、君にもわかるだろう?」

うんざり・・・といった様子のネスティに、私は困ってしまって。
小さく首を傾ける。


確かに。
ネスティって、甘いもの・・・食べないよね・・・




・・・・失敗したなぁ・・・・




「・・・・ところで、
 これは、君の世界のイベントだと・・言ったな?」

「へ? う、うん」

改まったように、ネスティはコホン・・・と咳払いをして。
視線を彷徨わせた。
はて?

「・・・じゃあ・・君も・・・誰かに?/////」

「それ、あたしたちも気になってたんだよね、アメル(きらきら)」

「もちろんですとも、トリスさん(きらきら)」

「ねぇねぇ、♪」

「当然、誰かに渡すんですよね♪」




で、誰なんですかッ♪(きらきら×2)




「・・・・・聞いていたのは僕なんだが・・・?(汗)」

「うるさい、ネス(ぷく~)」

「そうです、ネスティさんは黙っていてください(ぷく~)」

「す・・すまない(滝汗)」




ネスティ・・・・謝ってどうするの(苦笑)


いや・・・つい(汗)





私は今日、何度目かの苦笑をして。
トリスとアメルを見つめた。

「んーと・・・実はね。
 まさか、リィンバウムでバレンタインデーなんて・・・考えなかったから。
 誰にも、用意してないんだ」

「「 ええぇぇぇぇえーーーーーーーーーーーーッ 」」

「そうなんですか? さん。
 あたし、てっきり誰かに渡すのかと思ってました~」

「そーだよー。
 が誰に渡しても、文句は言わないって、お互いに決めてたのに。
 ねー、アメル」

「ですよねー、トリスさん」




・・・・・・・・・・・・・・・・・・文句って・・・(滝汗)←+某兄弟子





 今からでいいから、一緒に買いに行こう♪(きらきら)」

「そうですよ~
 一緒に選びに行きましょう♪(きらきら)」




だから・・・・どうして瞳が輝いてるの・・・ふたりとも(苦笑)




私は少し考えて。
そして、小さく頷いて、立ち上がった。

「じゃあさ。
 一緒にみんなの分、買いに行こうか」

「「 みんなのぶん? 」」

同じように首をかしげたトリスとアメルのしぐさが可愛くて。
私は笑って二人のほうに歩み寄る。

「バレンタインデーはね。
 確かに、女の子から男の子に告白する日でもあるけれど。
 大切な人たちに感謝の意をこめて、チョコを渡す日でもあるんだよ?」




・・・・・お菓子会社の陰謀なんだけどね・・・・




私の言葉に、二人は「そうなんだ~・・・」と感心したように呟いて。
そして、大きく頷いた。

「じゃ、全員分買わなきゃね~」

「トウヤさんたちの分も買わないといけませんね(^^)」

「そうだね(^^)
 じゃあ、ネスティ。
 私たち・・・出かけるから」

笑顔で二人に頷いて。
私はネスティを振り返る。

ネスティは。
呆気にとられたみたいに、呆然と私を見ていたけれど。
私の言葉に、一瞬眉をよせて。
そして、じっと私の瞳をみてくる。
でも・・・。
あまりにも真っ直ぐなその瞳に。
私は思わず・・・瞳を逸らしてしまった。

「・・・あの・・・ネスティ?」

「・・・ああ、わかった」

呟いたネスティに何故かホッとして。
私はトリスとアメルを促して、パッフェルさんのバイト先であるケーキ屋さんへと足を運んだ。















「・・・・・・・・ほんと・・・・失敗したなぁ・・・」

すでに真夜中・・・。
皆、寝てしまったのか、あたりはすごく静かで。
呟いたはずの自分の声が妙に大きく聞こえて、私は苦笑して溜息をついた。

部屋の机の明かりだけをつけて。
その灯りに照らされている、小さな箱から目を逸らすことが出来なくて。
私は机に頬杖をついて、その箱を人差し指でツン・・・と弾いた。

ホントは・・・。

チョコ、用意してたんだよね。



・・・・・・・でも・・・・あれだけ迷惑そうにされると・・・



「渡せないよね~・・・・・・」


意を決して。
私はその箱のラッピングに手を伸ばして・・・リボンを解いた。
カサカサと部屋に響く音に、なんとなく切なくなりながらも、箱を開けて・・・。
そして、出てきたチョコケーキに、思わず苦笑する。

「せっかくメイメイさんの所の台所、使わせてもらったのにな・・・」

この家で作るとバレるし。
かと言って、シオンさんの家の台所を借りるわけにもいかないし・・・。
それに。
手作り・・・したかったんだよね。

「・・・・・・食べちゃえ」

このままポケ~っと眺めててもはじまらないもんね。
これ・・・
もう、いらないもん・・・

箱の中に一緒に入れておいた、天使の模様のついた小さなフォークを手にとって。
チョコケーキを口に運ぶ。

「あ・・・おいしーvv」

さすが私よね♪
上出来だもの。

でも。

なんだかやっぱり・・・・



「切ないよ・・・・ネスティ・・・・・」



いつからか、ネスティのことが気になりだして・・・。
それが、『恋』だって気付いたのはつい最近で。
この想いを大切にしたくって・・・。

せめて、チョコレート・・・渡そうと思ったんだよね。


「でも、トリスたちと一緒に買ったチョコレートは渡したし・・・。
 ・・・それでいいよね?」

パクパクとケーキを口に運びながら。
自分を納得させるために呟いてみる。
でも、呟けば呟くほど。
食べれば食べるほど。


虚しくなるのは・・・・なぜかな・・・?







トントン・・・


遠慮がちなノックに、私はぎょっとして。
その扉を凝視する。

ていうか・・・もう真夜中なのに・・・・?

「えーと・・・・誰?」

「・・・・・・・・・・・・僕だ」




・・・ネスティ?!//////




慌てて口の中に残っていたケーキを飲み込んで。
私はそっと・・・ドアを開けた。

「・・・あの・・・・どうかしたの?」

「いや・・・居間から部屋に戻る途中だったんだが
 灯りが漏れていたから気になって・・・・・・・・」

急に言葉をとめて。
私の顔をじっと見つめて、ネスティは怪訝そうに眉をひそめる。

「・・・・えーと・・・ネスティ?///」

「・・・・・・唇に、ついてるぞ」

言葉の意味が理解できなくて、きょとんとした私の頬に。
ネスティの冷たい指先が触れた。

「ね・・・ねねねねねねネスティ?!」

「これは・・・チョコレートケーキか?」




うにゃ?!//////




慌てて口元を手でおさえて。
ネスティから視線をそらす。

ネスティは。
そんな私に軽く溜息をついて、部屋の中を見回した。
その目線が、机の所で止まる。

「自分で食べたのか?」

「な、なななななな何のこと?/////////(汗)」

「最後まで言ってほしいのか?」

「う・・・・/////(滝汗)」

言葉を詰まらせた私を尻目に。
ネスティはスタスタと部屋の中に入って・・・机の前で立ち止まった。
私はというと。
どうすればいいのかわからなくなって・・・
とりあえず、扉を閉めてそのまま扉に背を預けてネスティの足元を見つることしか、出来なくて・・・。

「手作り・・・か?」

「ち、ちがうよ。
 お店で買ったんだよ」

「・・・・・

大きな溜息に。
私ははっとして・・ネスティを見上げた。
そこには。
少し怒ったような・・・それでいて困ったような顔をしたネスティがいて。
それだけなのに、なんだか怒られているような気分になって・・・。
私は瞳を伏せてしまった。

「手作り、だな?」

「・・・・・・うん//////」

「どうして、渡さなかったんだ?」

「そ・・・それは/////(汗)」

チラリ・・・とネスティに視線を向けて。
またすぐ瞳を伏せる。
そのままなんて答えればいいのかわからなくなって。
私は部屋の中で視線を彷徨わせた。

「・・・・だって・・・・ネスティは・・・・・///」

「・・・・え?」

しばらくそのまま、お互いに言葉を発することもなくて。
ただ、静かな時間が流れたんだけど・・・。

戸惑いがちに、ネスティは私の方に歩いてきて・・・
そのまま、私の目線までしゃがみこむ。
優しい・・・でも、強い瞳が、そこにはあって。
私は思わず。
その瞳に見入ってしまった。
そんな私にネスティは苦笑して。
一瞬だけ視線を逸らした後、もう一度私の目を見つめてきた。

「・・・・・・・僕は、うぬぼれてもいいのか?」

「え・・・?」

「・・・・・・・・・・・・・・いいんだな?」

確認するようなネスティの言葉に。
一気に体温が上がって・・・頬が真っ赤になるのがわかる。
でも・・・

私は、小さく頷いた。

「できれば・・・・うぬぼれてほしい・・・かも・・・/////」

「・・・・では。
 このチョコは、僕のもの・・・だな?」

ネスティの冷たい手の平が、私のほてった頬に触れる。
その心地よさに思わず瞳を閉じた時。

唇に。

あたたかい何かが、触れて。


私はゆっくりと、瞳を開けた。



「・・・・・・・・ネスティ?////」

「・・・甘いな・・・やっぱり」

いつものような口調なのに。
近くにあるネスティの顔が赤いのは・・・・気のせいじゃ、ないよね?///

立ち上がったネスティに、そっと唇を指でなぞられて。
私は困ってしまって、上目遣いにネスティを見上げてみる。

「チョコの味・・・わかった?///」

ネスティは。
一瞬苦笑した後に、優しく微笑んでくれた。

「君と同じ・・・優しい味がした」










それが、『恋』だって気付いたのはつい最近で。
この想いを大切にしたくって・・・。


大切だからこそ。

本当は、判ってほしかったんだよね・・・私。




リィンバウムで迎えた初めてのバレンタインデーは。


甘い甘い・・・チョコレートの味がしました。







END

にゃ――――――///!! 甘か! 甘かですとよ(どこの人間だ)!!
これぞバレンタイン! って感じで!!
ほんわか優しい気持ちになれて、それでいてどきどきvv
う~ん……やっぱり好きですね~……

素敵な企画夢をありがとうございました!!

紫蘭