
鴨川を遡っていくと、西側が賀茂川、東側が高野川にV字に分岐する。ちょうどその付け根に位置するのが下鴨神社である。賀茂川に沿って北西に、北大路を抜けて更に進むと、上賀茂神社に到達する。
何度も京都は訪ねているが、ここは初めてだなあ、と感慨に耽っていると、左手に富田病院が目に飛び込んできた。唐突に“超プライベート”な話であるが、ここが私の「生誕の地」である。勿論、石碑などは建っていないが…。

茶室に掛けられた説明によると、戊辰戦役の際、官軍の先陣薩摩兵の行列が三条大橋にかかったとき、短冊を持った老女が行列に進み出た。西郷隆盛が「何ごとか」と尋ねると、
「めでたきご出陣のほど承り、腰折一首差し上げたいと存じまして…。私は蓮月と申す尼でございます。」
このときの歌は
「あだみかた(仇味方) かつもまくるも あはれなり おなじみくにの ひとと思えば」
というもので、西郷はこれを反芻して、
「よく分かりました。必ずよいように取りはからいますから安心してお帰り下さい。」
と蓮月尼を見送った。

