悪魔辞典 Devil dictionary

◇アイニAini
火炎公。破壊公。三つ首で、一つは蛇、一つは猫(または子牛)、もう一つは人間で、その額には二つの五芒星形が描かれていることがあります。右手には決して消えない松明(または火の玉)を持ち、この世に火炎地獄を作るため、見るものすべてに放火しようとします。常に赤味がかった煙につつまれ、地獄の毒蛇(またはトカゲ)にまたがっています。法律に詳しいともされます。ソロモン王によって封印された72柱の魔神の一人です。

◇アエスニクスAethnicus
この名前はときに炎のデーモンを表すこともあるが、錬金術師達はアエスニクスが炎の中に住む蜥蜴に似たサラマンダであると主張する。センディウォギウスによれば、「燃えあがる炎、松明といった、種々の形や姿であらわれる」霊であるという。レギナルド・スコットが描写する炎の霊は、ほぼ誠実にアエスニクスである。

◇アカーコックAkercock
ベルフォゴルに仕えるデーモン。

◇アガチオンAgathion
真昼にだけ現われる守護魔神。人間や獣の姿で現れ、護符や壜や魔法の指輪に閉じこめられることもある。

◇アガリアレプトAgaliarept
地獄の第2軍団の大将。世界中の多くの謎に通じ、それを暴露します。とくに宮殿や集会の密会には詳しいと言います。ブエル、グーシオン、ボティスを揮下においてます。

◇アガレスAgares
変化の侯爵。地獄の東方を治め、31個軍団をその支配下におさめる大公。かつては天界の力天使でした。弱々しい賢者の姿をしていて、手の甲に大鷹(またはカラス)をとまらせ、大きなワニ(または、陸亀)に乗っています。その声はよぼよぼの老人らしく震えています。未来を見通す能力がありますがすべてを謎めかして語り、しかも時々嘘をまぜるため、その言葉を容易に信用でません。人間の行方を探る力もあり、また多くの言語を知っています。しかしそのもっとも激しいパワーは、地震を起こす力でしょう。ソロモン王によって封印された72柱の魔神の一人です。

◇アザゼルAzazel、Azaziel、Azael
地獄の君主。人間の誘惑者。羊の守護者。アザゼルという名には「神ごとき強き者」「完全なる除法」「移動」「荒野」「山羊」などの意味があり、しばしばサタン/ルキフェルと同一視されます。ユダヤの伝承では、蛇に乗る者としてイメージされ、7つの蛇頭と14の顔、12枚の翼を持っていると言われています。ノアの時代に天から降りてきて人間の女と交わり、巨人族を生ませた200人の天使の一人です。「旧約聖書偽典」エチオピア語エノク書第8章1〜2節には、「アザゼルは剣、小刀、盾、胸当ての作り方を人間に教え、金属とその製品、腕輪、飾り、アンチモンの塗り方、眉毛の手入れの仕方、各種の石の中でも大柄の選りすぐったものありとあらゆる塗料を見せた。(その後)はなはだしい不敬虔なことが行われ、人々は姦淫を行い、道を踏み外し、その行状はすっかり腐敗してしまった」とあります。この後、神は怒って人間を滅ぼそうと大洪水を起こしたわけですからアザゼルはノアの洪水をもたらした張本人ということになります。彼はこの罪によって天使ラファエルによって縛られ、荒野の穴に投げ込まれて、もはや天に昇れなくなったと言います。以後、彼は荒野に住むとされ「レビ記」第16章8〜10節には、人々が彼のために山羊を捧げていたを書いています。もとは智天使だったと言われ、中世の悪魔学では風を操る魔神だとされています。ミルトンの「失楽園」では、悪魔軍団のスタンダート(軍旗)を持って堂々と登場してきます。

◇アスカロトAscaroth
スパイや密告者を守護する知られざる魔神に悪魔学者が与えた名前。魔神ネルガルの部下。

◇アスタロスAstaroth、Ashtart、Astarte、Ashtaroth、Astoreth、Asteroth、Astarath、Ashteroth、Ashtototh、Asthoreth、Ishtar、Aphrodite
悪魔の中では、めずらしく女神を起源としています。バビロニアの豊饒、性愛、金星、戦闘などをつかさどる美の女神イシュタルがその原型です。イシュタル(Ishtar)は、ふだんは慈悲深く、恵み深い女神でしたが、きまぐれで、その愛は長続きしませんでした。愛がさめてしまうと、以前の恋人をかたわにしたり、殺したり、動物に変えたりなど、その所業には目に余るものがありました。また、娼婦たちの守護神でもありました。また、いったん戦うとなると、自ら武器を取って男顔負けの働きをし、敵の血を大地に吸わせます。すでにこの時点で、悪魔的要素はそろっていたのですが、これがカナアン(パレスチナ)に伝えられてアスタルテとなると、聖書に魔神として登場するようになるのです。アスタルテは頭に三日月型の角をつけた美しい女神です。時には牡牛の頭をした女性で表せることもありました。彼女はバールの配偶神で天后とも呼ばれ、その祭儀のいっさいは女性がおこないました。「エレミア記」第44章16〜19節よれば、彼女に対する供物は香と酒とパンであり、血なまぐさい所は何一つありません。またミルトンの「失楽園」第1巻420以下によれば彼女の巫女たちは月夜に祈りと歌をささげたとあります。ただ唯一神に反し、偶像崇拝をともなうというので、ユダヤではうとんじられたのです。アスタルテ信仰は、やがて地中海を渡ります。ギリシャに入ると彼女はアプロディチと呼ばれるようになり、エジプトでは、アシュタルトと呼ばれてライオンの顔をした戦いの女神となりますが、ここまで進むと悪魔学から逸脱してしまいます。中世の悪魔としてのアスタロスは、カナアンのアスタルテからその名を借りているのです。ただし、性転換して男の姿になってしまいますが・・・・・。その原因の一つは、似たような名前のアシュタルという男神がカナアンにいたことにあります。彼は「恐るべき者」とか「獅子」とか呼ばれて、神々の王座につこうとしましたが、バールに較べると役不足でした。そこでこの神は、魔神アスタロスの中に取り込まれるのですが、それはアスタロスが「恐怖公」と呼ばれていることからも明らかです。もう一つの理由は、本来性別のない天使であったため、男女自由にその身を変えることができるということにあります。アスタロスは、もともと座天使(別の説によれば、熾天使)であり、「座天使の公子」「地獄の大公」「恐怖公」など呼ばれてました。その姿は、唇を血で濡らした全身黒ずくめの黒い天使で、右手には毒蛇を持ち、地獄の龍(または蛇)にまたがっています。その息は悪臭を放ち、毒にさえなります。過去と未来を身通す力があり、まるで自分は堕落してないといった顔で、天使たちが天から落とされた時のことを語りました。常に安楽にすごし、案逸をむさぼるのを好み、人を怠惰に導きます。また邪悪なことを好み、唇のはしに笑いを浮かべながら、人の苦しむ様子を見、語り、そして楽しむのです。ソロモン王に封印された72柱に魔神の一人です。 

◇アスベエルAsbeel
「旧約聖書偽典」エチオピア語エノク書第69章5節によれば、アザゼルやシェミハザなどの天から降り立った天使たちに、人間の女と交わるように進めた張本人です。その名には「神に見捨てられた者」という意味があります。

◇アスモデウスAsmodeus、Aesma、Aschmedai、Asmoday、Asmodee、Asmadai、Asmodius、Asmodaios、Hasmoday、Chashmodai、Azmonden
この悪魔は、ペルシアの魔神アエーシュマがもとになっています。その名前には「狂暴」という意味があり、邪悪にして残虐にして不義なる者で、人の怒りと欲望につけ込みます。彼は暗黒神アンラ・マンユ(より一般的にはアーリマン)の腹心の部下で、血塗られた棍棒を持ち、人に益をなす家畜や死者の魂を責め殺します。残虐、暴行、死などをつかさどる魔族ダエーワ(デーウ)を率い、不義なる人間の魔術師を使って世に戦乱を広げます。またアルコールに酔いつぶれている者をそそのかし、乱暴や狂乱に導きます。ユダヤの伝承では「悪霊の頭」「魔神」「剣の王アシュモダイ」などと呼ばれ、やはり配下に多くの魔神をしたがえています。その顔は炎のように燃えており、天を駆けるための翼を待っている以外は、ほぼ人間と同じです。未来を見通して人の定めを知ったり、大地を見通して宝石や貴金属のありかを知ることができ、様々なものに変身する能力もあります。また苦手なものは、天使ラファエルと魚の肝臓や心臓を焼いたにおいです。彼は天界に行って律法を学び、地上に降りて自分の宮殿に戻ることを日課としていました。このように、ユダヤにおけるアスモデウスは完全なる悪魔ではなく、いまだ天使のような役割も捨てきってはいません。実際、ローマの圧政からユダヤの民を解放するために、ローマ皇帝の娘に取り憑いて脅迫し、様々な要求を飲ませたというエピソードもあります。ただ性愛の面で汚い部分があり、「トビ記」(旧約聖書外典)には自分の気にいった娘を手放なさいために、彼女と結婚した男を次々と殺していくといた姿が描写されています。キリスト教においては、アスモデウスはあまり重要な悪魔ではありません。ただ中世の魔術書においては「裁きの被造物」「地獄の王」「復讐者の公子」「淫らな公子」など呼ばれて、わりとポピュラーな存在になっています。彼はレヴィアタンにつぐ地位にあり、天界では同じく熾天使でした。その姿は、いかにも悪魔的です。巨大な地獄の龍に乗り、人間と牡牛と子羊の3つの頭を持っています。尾は舵で、足には水鳥のような水掻きがついています。口から炎を吐き、片手に三角旗、片手には毒の塗られた槍を持っています。数学や天文学に詳しく、人の姿を見えなくしたり、ある場所から別の場所に空を飛ばして運ぶという力があります。その際、他人の家の屋根や扉も飛ばして、中の人をのぞき込むといったいたずらをすることもあります。酒や賭博、音楽、劇場、舞踊などを好み、人に贅沢による罪を犯させるのを、何よりもの楽しみとしています。ソロモン王によって封印された72柱の魔神の一人です。

◇アッロケンAllocen、Allocer、Alloces
戦士公。地獄の大公の一人。獅子の顔をした戦士で、肌は赤い黄金のように光り、輝く鎧に身を包んで、巨大な戦馬に乗っています。荒野にとどろく荒々しい声を発します。その燃える瞳をのぞみ込んだ者には自分の死に様が見え、そのショックでしばらくの間、目が見えなくなるのです。星占術、文法、論理学、修辞学、算数、幾何学、天文、音楽などの各種文芸に通じています。ソロモン王によって封印された72柱の魔神の一人です。

◇アドラメレクAdramelech
地獄の尚書長。地獄の王の衣装部屋係。悪魔上級議会の議長。アッシリア人の町セファルヴァイムで崇拝の対象とされ、祭壇では生け贄として子供が焼かれた。ラビ(ユダヤの律法博士)たちによれば、この悪魔はラビの姿で現れ、時には孔雀にも化けるという。

◇アナベルグAnnaberge
鉱山を守る恐ろしい魔神の一人。ある時、ドイツの”薔薇の冠”と呼ばれる豊かな銀山で、数人の鉱夫の命を奪った。「アナベルグは金の角を持つ山羊の姿で現れ、猛烈な勢いで鉱夫たちに襲いかかると思うと、馬の姿になって鼻孔から炎やら病毒やらをまき散らした」。この恐るべきアナベルグとは結局、今では坑内爆発ガスという名で科学者にはおなじみの”悪魔”にすぎなかったのだろう。

◇アナラゼルAnarazel
地下の財宝の管理を司り、宝探しの人間に見つけられぬように財宝の隠し場所をあちこち移動させる魔神の一人。仲間のガジエルやフェコールとともに家々の土台を揺すり、嵐を起こし、真夜中に鐘を突き、幽霊を出現させるなどして、夜の恐怖をかきたてる。

◇アバドンAbaddon、Abaddan、Apollyon、Apolluon
疫病のイナゴの王。死の闇天使。奈落の魔神。ユダヤの言葉で「破壊」「滅亡」「廃墟」「墓」「冥界」「死」などの意味があります。ギリシア語ではアポリオンと言い、太陽神アポロンとも関係があるとされています。鎌状の翼を持っているとされ、その姿はあまりに恐ろしいので、見る前きちんと心構えをしていても、ショック死する可能性があるといいます。魔術書「魔道師 The Magus 1801」のイラストでは、身体を緑の鱗に包まれた男の姿で表現されています。肩口からは水掻きのような形の翼が生え、ふさふさとした赤毛の髪と髭をはやしています。目は何かを訴えるようにおちくぼみ、かぎ鼻の先は唇につきそうです。また、ジョン・バニアンの「天路歴程Pilgrim's Prog-ress」には全身うろこにおおわれ、ドラゴンの翼と熊の足を持ち、腹から煙と火を吐き出していると書かれている。「聖書黙示録」第9章に登場する、地獄の奥底に棲む堕天使で、最後の審判が訪れる時に、イナゴに似た使い魔を放って人間を苦しめ抜きます。その使い魔は、全体としては軍馬に似ていて、顔は金の冠をかぶった女、牙は獅子、胸は鉄の胸当て、尾はサソリで、羽音は駆け抜ける馬車のようです。人間をその毒針で刺しますが、決して致命傷にはならず、刺された人は五ヶ月間で死ぬような苦しみを味わいます。

◇アビゴルAbigor、Abigar
冥界の大公。王笏を持った見目よい騎士の姿をしています。未来を予言する能力と、軍の指揮能力を有します。

◇アプラクサスAbraxas、Abrasax、Abrasxis、Abracax
永却の貴公子。グノーシス派の神で正式にはギリシャ語で「αβραξασ」とつづります。雄鶏の頭をしていて、2本の足は蛇です。右手には盾を左手には鞭を持っていて、この世の生き物と神との中を調停する役目があります。グノーシス派の考え方では、1年365日、それぞれの日を担当する365人の神々がおり、アプラクサスのギリシア語でつづりをすべて数字に置き換えて足してみると、365になるからです。この像と名前は、お守りとしてよく宝石などに彫られます。「アブラカダブラ(Abracadabra)」という呪文は彼の名から来ているという説もあります。

◇アミィAmy、Avna
炎の総統。かつては天使、あるいは能天使の階級にありました。この世界には、地獄の業火と煙の柱に身を包んで現れますから、実体がよくわかりません。炎の柱を見つめていると、そこには様々な光景が展開されており、未来の風景までのぞきこむことができる場合もあります。その炎は冷たく、燃え移りません。指でそっとふれてみると、自分の死の光景が見えてくると言います。命じられれば炎のおおいを解き、魅力あふれる男性(あるいは干からびた小人)の姿を現します。彼は人間の魂と引き換えに、占星術など様々な技術を伝授します。ソロモン王によって封印された72柱の魔神の一人です。

◇アムドゥシアスAmdusias、Abuscias
一角公。銀色のユニコーンです。使い魔の楽隊を持っており、いかなる所でも、美しい音楽を流すことができます。その音楽で、木々の枝葉を自由に動かすことができます。人間に姿をとる時には、白いあごひげをはやした、背の高い痩せ身の男になります。ソロモン王によって封印された72柱の魔神の一人です。

◇アモイモンAmoymon
地獄の四天王の一人。東方地域を治める。招霊は朝の九時から正午、午後三時から六時までに行う。アスモデは彼の副将であり、彼の国の筆頭王族である。

◇アモンAmon、Amen、Amun、Aamon、Mammon、Maymon、Amaimon
アモンは多くの魔神の中でも、ひときわ不気味な存在ではないでしょうか。その意味は「隠されたる者、はかり知れぬ者」で、真の名前はわかっていません。本来はエジプトの神でしたが、本拠地であるテーベでも、その性格はあまりはっきりしていないのでした。強いて言えば、風や息吹の中に秘められた生命力を人格化した者といえそうです。あるいは、性格がないというところが、アモンの特異的な性格なのかも知れません。白紙が多くの色を吸い取るように、アモンはその勢力を広げていくうちに、多くの神々と同化し、その性格を吸収していきました。まず彼は、海の神として性格を取り込みます。水のことをエジプトでは「アマン」と言うため、名前の類似から考えられるようになったのです。そして原始の海はすべてのものを生み出しますから、彼は創造神とも言われるようになりました。また豊饒神であったミンを同化してアモン・ミンとなり、最後には太陽神ラーを取り込んで最高神アモン・ラーとなるのです。中世の悪魔学において、その姿は一定ではありません。ある書物では蛇の尾をした狼だと言い、別の記述ではオオガラス、またはフクロウの頭をした人間だとも言います。蛇の頭をした狼という説もあります。「炎の侯爵」に異名をとり、人間の姿をしている時は口から炎を吐くといいます。過去や未来の出来事を知り、恋愛に秘技に通じています。彼もまた、ソロモン王によって封印された72柱の魔神の一人です。

◇アラストルAlastor
ルシファー軍の第四副官。火星に象徴される。アラストルは典型的な破壊神である。シナイ半島で起こる天災のすべてを担当していたと言っても過言ではない。砂嵐、地震、噴火、洪水など、天変地異を引き起こす荒ぶる神でもある。ベルフェゴールやバアル、ベルゼブブなどといったシナイ半島の様々な神格は、アラストルを報復の手段として召還することが多く、そう言った意味では、神々の神といった趣もあった。彼は猛威を奪い、運命、力の奔流を作り出す。むろんのこと、人知の及ぶ相手ではない。これほどの有力者を得て、なお敗北したというルシファー軍には、どこか根本的な欠陥があったのだろうか。それとも、ヤハウェ陣営とミカエル軍団があまりにも巨大だったのだろうか。多神教の宿命と言おうか寄り合い所帯の悲しさと言おうか、ルシファー軍は指揮系統がいい加減であり、72将は個別に奮戦するしかなかった。そのためアラストルが持つ究極の破壊力も、結局のところ発揮されずじまいに終わっている。あるいはアラストルを発揮させて収集がつかなくなることを恐れたのであろうか。ちなみに、アラストルはギリシャ語で「復讐者」「復讐する」という意味である。アラストルは、敗北後に火星に仮寓を得ている。彼が担当する心は集中力である。

◇アリオッチArioch、Arioc、Ariukh、Oriochk
ミルトンの「失楽園」第6巻370行などに登場する、コウモリの翼を持った堕天使です。アリオクとも言い、また「復讐の魔神」とも呼ばれてます。その名はヘブライ語で「猛々しい獅子」あるいは「獅子のごとき者」を意味します。「聖書偽典」では、エノク書などを残して昇天した予言者エノクの守護天使の一人に同名がいますが、もしかしたらこれが後に脱落した魔神となったのかも知れません。

◇アリオーシュArioch
一部の悪魔学者によれば、復讐の魔神であるという。ただし、アラストルとは違って、自分を雇ったものの個人的復讐にのみ手を貸す。

◇アリキーノAlichino
ダンテの「神曲」における鉤をふるうデーモンの一人で、汚職をおこなった者立ちを煮えたぎる瀝青に沈める役目を持つ。デーモンの仲間と戦うこともある(地獄のまったくの混乱と内輪もめを呈せしめるためのダンテの文学上の工夫である)。この名前は「誘う者」を意味するという。

◇アルディナタAldinach
嵐や雹や地震の力を支配して、難破を起こすといわれるデーモン。大衆向けの書物ではエジプトのデーモンとされるが、定かなことではない。

◇アルマロスArmaros、Armers、Adaros、Pharmaros、Arearos
「旧約聖書偽典」エチオピア語エノク書第69章5節によれば、アザゼルやシェミハザなどの天から降り立った天使たちの一人で、人間に魔法使いの杖を無効にする方法を教えました。

◇アンドラスAndras
不和の侯爵。オオガラス(あるいはカラス)の頭をした天使の姿をしています。強情な狼にまたがり、右手に燃える剣を持ち、破壊的な言動しかとりません。人々を不和に導き、その状況を楽しみます。ソロモン王によって封印された72柱の魔神の一人です。

◇アンドレアルフースAndrealphus
美貌侯。美しく大きな孔雀の姿をしていますが、人間の姿をとることもできます。数学、幾何学、天文学に関する知識を教授してくれます。人間を鳥の姿に変えて、空を飛べるようにすることができますが、これには人間の生け贄が必要です。ソロモン王によって封印された72柱の魔神の一人です。

◇アンドロマリウスAndromalius
正義の侯爵。片手に蛇を巻き付けた男の姿をしています。盗まれた品物を取り返してくれたり、犯人の正体を教えてくれたりします。また、秘密の取引や、財宝隠し場所を知る力があります。ソロモン王によって封印された72柱の魔神の一人です。

◇イウヴァルトInuart
かつては天使の貴公子でした。地獄に堕ちてからは、住み処を失い、あてどなくさまよっていると言います。

◇イェクンJeqon、Yeron、Yiron
「旧約聖典偽書」エチオピア語エノク書第69章4節によれば、アザゼルやシェミハザなどをそそのかして、天から地上に降りることを進めた張本人です。

◇イコシエルIcosiel
秘密書法のデーモンの一人。

◇イブリスEdlis
イスラム教とのサタンとされることもあるが、西欧の伝承では、イブリスはアザゼルであり、天から投げ落とされた後にイブリスとなり、シェタンあるいはデビルとしてデビルどもの支配者となった。イブリスという言葉は「絶望」を意味する。

◇イポスIpos、Ipes、Ayperos、Aipeos、Ayporos、Aypeus
愚者の貴公子。アヒルの足に、獅子の頭、ウサギの牙(あるいは、頭と足がアヒル、胴体が獅子、ウサギの尾)をした天使の姿や、また獅子の姿をとることもあります。未来をのぞく力があり、聞かれれば正直に話してくれます、ただし、物事を何でも戦闘で解決しようと、その気分は周りにいる人も巻き込んでしまいます。ソロモン王によって封印された72柱の魔神の一人です。


図書館へ