幻獣辞典 Monster dictionary

◇アラクネAlcmene
ギリシャ神話に登場する蜘蛛。元々はごく普通の若い女。ただ、機織りに天才的な才能を持っており、その点で慢心したことが悲劇を招く。機織りを得意とする女神、アテナに目をつけられ機織りの勝負となるがなかなか勝負がつかない。激情に駆られた女神の怒りを受けたアラクネは絶望し、自殺してしまう。そこではじめて娘を哀れに思ったアテナが、彼女を蜘蛛として転生させたのである。

◇インプImp
低俗な小悪魔。文献に現れはじめるのは16世紀頃以降。典型的な魔女の使い魔として知られる。

◇エティンEttin
巨大な体に、双頭を持つ怪物。右側の頭が右腕、左の頭が左腕を動かす。二つの頭のうちのどちらかが常に周りを警戒しているため、エティンに奇襲攻撃を掛けるのは難しく、たいてい発見されてしまう。明るいところが嫌いなエティンは、洞窟などに住んでいることが多い。普段はあまり武器を使わず、使ってもせいぜいこん棒程度。知能は低い部類に入る。

◇オーガOgre
人間の2,3倍の身長を持ち、怪力をふるって人間をとらえて食べてしまう。しかし最後には、強力な英雄の剣や、知者や子供のとんちのようなものに引っかかって倒される。民間伝承にしばしば登場する、この愚かな巨人たちは、フランスの作家ペローが著した「長靴をはいた猫」の中で、オーグルという名前を与えられた。この話に登場するオーグルは、愚かとは言え魔法を使い、並の人間よりもずっと賢いようだ。姿形は人間だが、知識は、そう高くないため武器や防具を使うことはあまりない。出現数はそう多くなく、数匹程度で襲いかかってくる。ただ山間で、獲物を求める野獣のような生活をしていることもあれば、邪悪な魔術などによって支配されて護衛役をする時もある。また、ときにはゴブリンやオークを従えて登場することもある。

◇オークOrc
豚のような頭部を持った人型の怪物。その姿は豚の顔をした人間という感じだが、より正確には非常に醜い人間といった方がよい。彼らは日光を嫌い、そのため活動の多くは夜間に限られている。彼らの目は、それにて記したように赤外線をとらえることができ、その夜間でも自由に行動できるようになっている。棲家は洞窟や廃墟、廃屋、森の奥深い場所と暗いところを好んでいる。彼らは混沌の勢力の先兵で、よく邪悪な魔法使いや王の軍団の中核となって登場する。能力は知能を含めて人間と同じくらいなのだから、兵隊としてはかなりの優秀な方である。それ以外では、独立集団で行動しているオークに出くわすことがある。その数は十数匹ほどで、強力なリーダーが主導している。

◇ゴーレムGolem
ユダヤの民間伝承に伝わるモンスター。王の圧政に苦しむユダヤ人たちは、守護神として巨大な泥人形を作った。この人形に悪魔が生命を吹き込んで王に対抗させたのがゴーレムである。とくにカバルストと呼ばれていた密教信仰者は、何とかこの謎を解こうと、聖書の文字を並べ替えてゴーレムの秘密を探ったといわれている。その結果作られたのが、ゴーレムという言葉である。言葉によって作られたゴーレムは、同じように滅びの言葉でもとの粘土に戻ってしまうといわれていた。中世ヨーロッパのカパリストたちがゴーレムの研究をしていたのとは別に、世界各地で無から生命を作り出そうという研究が進んでいた。13世紀のドイツの錬金術士アルベルツスは30年かかって粘土でゴーレムをつくりだしたといわれている。アルベルツスの作ったゴーレムは、建物を破壊しながなら歩く巨大な怪物でなく、人間程度の大きさのロボットようななものだったいれている。このゴーレムは、歩き、しゃべり、人間の質問に答え、数学の問題を解く程良くできていた。しかし、あまりにもしゃべりすぎてうるさいため、アルベルツスの弟子がハンマーで壊してしまったという。

◇コカトリスCockatrice
コカトリスはバジリスクの変種だと言われる怪物。プリニウスにも記述されているバジリスクが時代とともに姿を変えてコカトリスと呼ばれる怪物になったので、時としてこれらのものは区別されずにバジリスクの名前で呼ばれることもある。視線の致死作用や吐く息によって植物を枯らし、飛ぶ鳥さえ落としてしまうと言うところなどは両者ともに共通している。しかし、コカトリスとバジリスクではずいぶん姿形が異なっている。プリニウスに登場するバジリスクはどう考えてもコブラやまむしのような感じだが、コカトリスは方は鶏冠のある雄鶏の体にドラゴンの翼、蛇のような尻尾を持っている。この尻尾は時に頭のある蛇だと言われることもあるし、足が四本もあると言われるころもある。 コカトリスはコカトリスから生まれるのではなく、雄鶏から生まれるとも言われる。これによれば、卵は堆肥の上に産み落とされ、その熱でふ化するのだという。バジリコックと呼ばれる似たような怪物の場合は、卵はやはり雄鶏がから生まれるが、生まれた後蛙に暖められてふ化すると伝えられている。

◇ゴブリンGoblin
身長は人間より少し低い、醜い顔をしている。知能程度も高く、会話能力はほとんどすべてのゴブリンが持っている。中には非常に顔の良いものもいて、魔法も使えるものもいる。そのようなゴブリンは一つの部族の長になっていることが多い。攻撃してくるときも、ゴブリンは人間と同じ様な武器を使って攻撃してくることが多い。ただし、体があまり大きくないため、小さめの武器しか持てない。

◇コボルトKobold
犬のような姿をした悪鬼。人間より知能程度は低いものの、仲間同士で会話をする程度の能力はある。集団でいるときは凶暴だが、単独でいるときや、相手が強そうだと逃げ出すことが多い。

◇ドワーフDwarf
背丈は1メートル前後、男は地面につくほどの長いあごひげを蓄え、時にはそれを3つ編みにしている。頭も長髪。体毛は金でもなく黒でもなく、その中間の赤毛や栗毛が多い。身体は頑強で、寿命も200歳以上と長く、地下に穴を掘って都市を造るので、暗がりの中でも夜目が利きます(紫外線を見るのだともいいます)。優れた細工師、炭夫、石工、鍛冶屋、建設家で、自らの作りだしたものに魔術の力を込めて不思議な力を持たせることもできます。戦士としても優れており、普通に剣や槍のような武器も使いますが、多くは戦斧や戦槌といった、彼らの工作用の道具から転化したものを好む。性質は至って陽気で、酒を飲ませれば底抜けに明るくなり、歌など口ずさみます。ただし、ドラゴンやオークなどの古くからの敵には、頑として立ち向かいます。仲間同士の絆は固く、そのためほかの種族を排斥する傾向があります。また、まれ人間と結ばれることがあるのか、半ドワーフともいうべきウムリ族(Umli)というのもいます。

◇ヘカトンケイルHekatoncheir
百本の腕と五十の頭を持つ巨人。

◇ホムンクルスHomunculus
錬金術によって生まれた小さな人。16世紀のスイス人パラケルススがその作り方を詳しく書いている。それによれば、最初に必要なのは人間の精液である。精液が手に入ったら、これを蒸留器に入れて40日間密封し、腐敗させる。すると、蒸留器の中に人間の形をした透明な生命が誕生するというのである。しかし、このままではまだ人間にはならない。注意が必要なのはこれからで、毎日人間の血で養い、40日間馬の体温と同じ温度で保存する必要がある。これをうまくやると、最初透明だったものは立派に小さな人間になるのである。ホムンクルスは生まれた当初から様々な知識を有していることが多い。

◇ユニコーンUnicorn
白馬の姿をした一角獣。大変警戒心が強く、加えて頭もよい為捕まえることはおろか、遭遇することすら出来ない。ユニコーンは唯一処女の乙女にのみ気を許し、一度気を許すと、そのまま乙女の膝の上で眠ってしまう。また乙女の言うことのみ聞いてくれるとも言われる。ユニコーンの力の源はその角であり、いかなる魔法や病気だろうと治してしまうといわれる。その効力は角だけになっても衰えない。


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