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【2004/6/24】

復活の地[1]

著:小川一水
出版社:早川書房(ハヤカワ文庫JA)


<あらすじ>
星間戦争の勃発によって、地球を盟主とする惑星間の繋がりが断絶された未来。分断された人類は、各惑星国家ごとの完結型社会を形成することを余儀なくされる。
そんな中、辺境の惑星『レンカ』では一つの帝国による惑星統一が成され、今まさに星間列強諸国と対峙しようとしていた。しかし、帝都トレンカを襲った突然の大災厄は、国家中枢機能を破壊、五十万人もの生命を奪ったのだった。
国家機能が麻痺する中、国内の反乱分子と、軍部の暗躍。そして星外からの侵略という難局を乗り越え、帝国は復興を果たすことが出来るのか!?
国家の崩壊と復活を描く群像劇、全3巻の開幕。


さあ、やってまいりました! 小川氏の「プロジェクトX」小説。「現場のプロ」の活躍描く筆致はもちろん健在。
これまでの作品では、土木・建築系の話を技術的なアプローチから語ることが多かったと思うのですが、今回はそれにプラス「政治」という要素を絡めたストーリーになりそうです。
主人公は帝国高等文官参事のセイオ・ランカベリー。このスーパー官僚を中心に、大惨事を生き延びた政治家・皇族・軍人そして一般人が入り乱れる群像劇のはじまりです。

官僚が主人公というところが、いかにも小川氏っぽいかんじがしますけど、なかなかどうしていいかんじなんですよ、これが! 今後の事態をどうのりきるのか期待が持てます。
今まで、この作者の方のキャラクター造詣っていまいち惜しいなあ、と思っていたのですが、今回は主人公以外のキャラクターも、なかなか面白そうなやつらばかりです。
贅沢言えば、かわいくて健気な女の子キャラだけじゃなく、カッコイイ女キャラがいればもっと良かったんですけど。カッコイイ部門は男性ばっかりで、ちょっと悔しいなあ。

さて、本作の装丁ですが、カバーデザインは岩郷重力氏、イラストは前嶋重機氏です。 岩郷氏のデザインは「でしゃばりすぎず押さえるところはキッチリ」というもので、最近、早川書房が気合を入れている本は、大概この方のデザインだったりしますが、今回も極太とゴシック体と、腐食した金属風テクスチャーを使った巻数表示のロゴが渋いです。

挿絵の前嶋氏は漫画家さんでもあり、イラストも漫画風タッチですが、色を押さえたリアル系の絵柄なので、アニメっぽさはあまりありません。
中面はカラー口絵とのモノクロ挿絵が入っていますが、こういう作りは同じハヤカワ文庫でもファンタジー系(グイン・サーガとかあの辺)に使われることが多く、本作のようなSF系ではわりと珍しいんじゃないかなと思うんですけど、どうでしょう。そうでもないのかな。ま、でも「挿絵とかもつけてみたんで、ライトノベルとか好きな若い人が買ってくれたらイイナ〜」という早川の思惑が、チラホラ見えるような気はするよね!

さて、実を言うとこの本、当初全然買う予定じゃなかったんですが、帯のキャッチコピーを見てつい手にとってしまったものなのです。

「死者50万、国家機能崩壊」
生き延びた官僚セイオに、再興の術はあるのか?

帯のコピーってやっぱり編集さんが考えるんですかね? すっかりのせられてしまいましたよ!
全三巻シリーズの本作、次巻は8月に出版です。楽しみだ。