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アニメ「巌窟王」の、感想以外の記事です。
チャイコフスキー「マンフレッド交響曲」 、 オープニング曲と、ショパン「別れの曲」が似ている 、 なんで「マンフレッド交響曲」なのか 、 雑誌とか、他のメディアを追っかけてみる
第三幕の終わりや、方々で公開されている巌窟王のデモムービーで使われているのは、チャイコフスキー(Peter Iryich Tchaikovsky、1840〜1893) の「マンフレッド交響曲」という曲です。(デモムービーのエンドクレジットにあった)
この曲は、バイロンという人の劇詩「マンフレッド」を基に作られた曲で、全四楽章。ハープやパイプオルガンまで加わる、大編成のオーケストラで演奏されます。
(バイロンの劇詩のあらすじと、マンフレッド交響曲の詳しい説明は 「標題交響曲「マンフレッド」(チャイコフスキー)」 こちらのサイトが詳しいです)
チャイコフスキーといえば、交響曲第6番「悲愴」とか、バレエ音楽「くるみ割り人形」あたりが有名ですが、「マンフレッド交響曲」はどうもマイナーらしく、私も「なんかかっこい曲だな!」 と思って買いに走ったんですけど、大きなショップにでも行かないとCDすらない、というかんじでしたよ。
私が購入したのは「指揮:ユージン・オーマンディ、フィラデルフィア管弦楽団」のもの。CDの盤面が真っ赤でなかなかよろしいと思います。(巌窟王で使用されているものでは無いっぽい。演奏の仕方が違うので……)
バイロンといいチャイコフスキーといい、悩める芸術家二人から生まれただけに、大袈裟で、派手で、ちょっとたるいところもあるけど、かっこいい曲だ。
(バイロンは滅茶苦茶な恋愛遍歴の持ち主だし、チャイコフスキーもまぁ、いろいろとね。チャイコフスキーの生涯については、「チャイコフスキーの生涯(詳細)」 がすごく解りやすくて良いと思います)
アニメで使われているドラマティックな部分は、第一楽章を十三分ほど(指揮者さんによって違うので一概には言えないですが)過ぎたところで、一楽章の最後の部分です。
泣き叫ぶ弦楽器、咆哮する金管、地響きを立てるパーカッション! いいなこれ。
【2004/11/3】追記
巌窟王で使用されている音楽は、ビクターエンタテイメントの提供だってことに気付いたので、ビクターから出てるマンフレッド交響曲、といえばということで検索……「指揮:スヴェトラーノフ、ソビエト国立交響楽団」かなあ。
それにしても、スヴェトラーノフ ビクター国内盤LPリスト。 ……えーっ、LPなの?
【2005/5/9】追記
「巌窟王クラシックコンピレーション」が出たので、作中の「マンフレッド交響曲」は「指揮:オンドレイ・レナールト、チェコスロヴァキア放送」のものと、判明しましたー。
オープニング曲「We Were Lovers」(作:ジャン・ジャック・バーネル)と、「別れの曲」として有名な「エチュード 10-3ホ長調」(作:F・ショパン)が似てるというお話を、ネット各所で読みまして。
言われてみればそうかも……と思って、ちょいと検証。
「We Were Lovers」と「別れの曲」メロディラインの譜面(別窓)
キタナイ譜面ですいません。素人なもので。
上段が、「別れの曲」の最後から16小説目より抜粋(引用:全音ピアノピース)した部分です。原曲はホ長調ですが、「We Were Lovers」に合わせてハ長調にしてあります。
下段は「We Were Lovers」の耳コピーです。間違ってるかもしれませんがあまり気にしないで下さい。(ハ長調に聞こえるんだが違うかなぁ)
註釈(1)は、カッコでくくられている2拍目が省かれています。(譜面最下部を参照)
註釈(2)〜(5)は、この範囲のみ倍カウントです。(譜面最下部を参照)
[A]・[B]部分は両曲とも同じようなメロディーラインをとり、[C]部分は「We Were Lovers」のオリジナル部分、[D]部分は[A]の再現部となっているみたいです。
結論としては、「うん、似てる」ってことで。確かに「別れの曲」にインスパイアされてるっぽいです。
こんなふうに『本歌取り』することで、「We Were Lovers」が伯爵自身の過去の歌であると同時に、過去への決別つまり「別れの歌」でもあるんだよ、ということ表現してるのかなぁ。何にせよ、味なことしてくれるな!
BGMとして結構使われてる、チャイコフスキー「マンフレッド交響曲」一楽章。ところでなんで「マンフレッド交響曲」なのかっていう疑問が出てくるわけですよ。
その点については、原作見るとバッチリハッキリ解るわけですが、それにはまず「マンフレッド交響曲」というのが、バイロンという詩人の詩劇「マンフレッド」を題材に作られた曲だってことを、予備知識に入れとかにゃなりません。
このバイロン君が結構すごいやつで、顔は良いわ、文章書かせればすごいわで、その上モンテ・クリスト伯ばりの怒涛の人生を送った人物なのです。(詳細は「バイロン George Gordon Byron(1788-1824) 」をどうぞ)
ちなみに、このバイロンの一人娘エイダは、人類初のプログラマーになったんだとかで、天才の血は争えないってことなんでしょうか。(「エイダ・オーギュスタ・ラブレイスの生涯」をご覧下さい)
ともかく、その美貌の天才詩人バイロンが二十九歳の時に書いたのが、「マンフレッド」という詩劇。
『道ならぬ恋をした主人公、マンフレッドの放浪の旅』というのがその内容だが、この「道ならぬ恋の相手」というのが「アスターテ」という女性で、(作中でズバリとは書かれてはいないが)どうやらマンフレッドの異母姉という設定らしい。
勿論「マンフレッド」はあくまでフィクションとして作られてはいるんだけれども、ぶっちゃけここで言うマンフレッドは、バイロン自身のことを書いてるというのが通説。
実際バイロンは、異腹姉オーガスタとの関係が元で、当事のバイロンは既婚者だったにもかかわらず、一年でスピード離婚してたりする。バイロン、すげーよ……。
話をモンテ・クリスト伯関係に戻すと、その原作者アレクサンドル・デュマがバイロンの大ファンだったらしいんですね……ということで原作から引用です。
フランツは、はじめて会ったとき、あれほど打たれた青白い伯爵の顔にもいまはだんだん馴れてきて、その端正な顔の美しさを認めないではいられなかった。(中略)
これこそまったくバイロンの作中にあらわれる主人公――フランツは、彼を見ていないでも、ただ彼のことを思っただけで、その暗い顔を、マンフレッドの肩の上、或いはララの帽子の下に想像してみずにはいられなかった。(訳:山内義男、岩波文庫版「モンテ・クリスト伯(三)」P.57)
ちなみに「ララ」っっていうのも、同じくバイロンの作品の主人公らしいです。
……というわけで、なんで「マンフレッド交響曲」なのかというと、伯爵=マンフレッドとして原作者が書いてるから、というのがその理由ってことで。
それにしても、原作では人物の外見に関する描写はとても少ないのに、伯爵の描写は結構あるんだよね。「その端正な顔の美しさ」だって。ムホ。
伯爵の設定のドラマティックさに比べて、顔のほうは普通のおじさんだったら、憤死ものですよ。
「さて、この二冊に共通するある映像作品とは、何でしょう?」
「巌窟王?」
「ファイナルアンサー?」
「……ファイナルアンサー!」
「…………正解っ!!」
さて、(上の掛け合い込みで若干古いですが)巌窟王関係の記事が載った二誌の話などを。
発売:有限会社 演劇ブック社。「演劇ブック12月号増刊」ということで、あまりメジャーどころではない映画とか、あとは話題のCMについてとか、ともかく映像作品全般を扱った雑誌。
<関連記事:P.54〜61>
「パリを舞台に描く、新たな世界『巌窟王』」
前田監督って実は良く知らなかったんですが(というよりアニメの監督さんというものを良く知らん)、なかなかかっこいい方ですね。監督のかっこよさではもう勝ったも同然だな……。
元々美術畑の方で、(アニメ、サムライ・チャンプルーの得物デザインとかやってる)オープニング最後に出てくる伯爵とアルベールの絵はこの監督の作品。上手いよなあ。
発行:株式会社 ワークスコーポレーション。デジタル系エンタテイメント映像情報誌、ということで3Dグラフィックス関係の専門誌。映画からゲーム、アニメ等3DCGを使う現場の特集が多い。
<関連記事:P.34〜41>
「映像の魔術師たち 〜ディレクターの演出トリックを暴く!〜」
\1,280と高めだけど、割と読むところもあって余裕ある方には買いかも。設定画(小さいけど)も見れるし!
技術系の雑誌なので、テクニック寄りの記事が多いです。なお、次ページには「攻殻機動隊SAC2」の記事もあるので、興味ある方は二重においしいはず。
アンドレアの件はちょっとネタバレだったかっな? 何にせよユージェニーが今のデザインでほっとした人は私だけではないと思う。
tvk:10月30日(土)、カミングスーンTV:10月31日(日)放送。テレビのアニメ情報番組。
<関連放送>
「『巌窟王』特集」
なんかだいぶ前に見たので記憶が薄れ……。いろいろ間違ってるかも。他にもいろいろメディア露出はあるみたいですが、チェック出来たのはこれだけです。
あと公式サイトに掲載されている情報については、触れてません。