トップページ > 催眠の現実 > 催眠の現実−理論編

催眠の現実

知られざる催眠の現実を紹介。

   ※催眠の現実−基本編
催眠の現実−応用編


こんな用語に注意
無意識(潜在意識)の理論

「無意識で」と「無意識を」と「無意識が」と「無意識的(に・な)」の違い
SHOW BY 商売


■ こんな用語に注意

使用に注意を要する用語トップ3―催眠編―
・潜在意識(使用頻度No1)
・右脳
・ポジティブ、プラス思考

詐欺的用語トップ3―健康・医学編―
・マイナスイオン
・アルカリ
・トルマリン

例えば、最近ブームのマイナスイオン。誇大宣伝により薬事法違反で業務停止を命じられた例もあります。違反時の宣伝内容はこちらで見られます。同じ基準で判断すれば、催眠関連の宣伝も法に触れてもおかしくないものがたくさんあることがわかると思います。

■ 無意識(潜在意識)の理論

一般向けの催眠の説明で頻繁に使われる言葉ナンバーワン。それは「無意識」とか「潜在意識」です。この史上最強の何でも説明できてしまう用語を用いると、「見かけ上の」論理的整合性は最高レベルに達します(見かけ上だということに注意してください)。この用語を用いた命題は、証明はできませんが反証もできないので誰にも文句をつけられません。反証というのは、その仮説が間違っていることを証明することです。例えば昔の人が信じていた「水平線の先は滝になっている」という仮説は、船で世界一周することにより反証されました。

反証ができない命題は非科学的です。よく言われる「催眠は潜在意識に影響を与える」という現象は厳密には反証できません。したがって非科学的命題です。

反証不可能な命題は正しいとも間違っているとも結論できない(結論させない)ので、いわば言った者勝ちの世界です。潜在意識という言葉を使って説明されると何でも正しいように思えてしまうのはこのためです。そのようなわけで「潜在意識」「無意識」という言葉は怪しい催眠家によって乱用される傾向があります。

催眠の大家Barberは数々の実験を行った結果、潜在意識はおろか「催眠状態」や「トランス」という言葉さえも催眠現象を理解するためには必要ないと(むしろそれらの概念は害悪だとさえ)言っています。これは過激な主張ですが、盲目的に「催眠状態」というものがあると思い込むことよりもずっと示唆に富んだ意見です。


実話に基づいて「潜在意識」という言葉を用いた逸話を挙げましょう。この言葉を使えば事実に反したことでも強引に説き伏せることができてしまいます。

A:お前実はホモだろ。
B:いや、俺は断じてホモではない。ほら、言葉だって男らしいじゃないか。
A:いや、それは意識の上での話だ。潜在意識レベルではホモの素質がある。その証拠にさっきお前は少し内股になっていた。
B:何を言っているんだ。それはたまたま姿勢がそうなっただけだ。
A:甘いな。お前の潜在意識にあるホモ願望がそういう行動を取らせたんだ。潜在意識の欲求というのはちょっとした行動に出るもんなんだよ。
B:アホか。俺は認めんぞ。
A:うむ、意識の抵抗が強いな。かなり深い潜在意識にホモ願望が抑圧されているようだ・・・。
B:・・・

このように、潜在意識という言葉を使うと証明も反証もできないので、必ず屁理屈で言いくるめられてしまいます。(この場合、別に潜在意識の欲求でなくとも行動に出るものもあるし、潜在意識の欲求があっても行動に出ないこともあるはずです。意識的な欲求が行動に現れることももちろんあります。しかしこれらは区別しようがありません)。誰のどんな行動も都合良く説明できてしまう「潜在意識」やその他の精神世界の用語は、安易に用いると危険な言葉です。そういった言葉を使いさえすれば事実無根のことすら説明できてしまうのですから・・・。「潜在意識」という言葉を使った理論は見かけは正しそうに見えますが、実は構造的に怪しさを内包しています。

■「無意識で」と「無意識を」と「無意識が」と「無意識的(に・な)」の違い
前述したように「潜在意識」という言葉は反証不可能な言葉で、これを深く考えずに使用するのは感心できません。「潜在意識」という言葉は聞こえが怪しいので、その代わりに「無意識」という言葉を使う人もいますが、この言葉も使用に注意を要します。

「無意識」という言葉には4つの用法があります。「無意識で」と「無意識を」と「無意識が」と「無意識的(に・な)」です。前3者の用法は「無意識」という目に見えない力動的心的装置の存在を仮定している点で「潜在意識」と同義です。例えば「無意識を活用する」という言葉は「潜在意識を活用する」と言い換えてもまったく意味は同じことからもそれがわかると思います。同様に「無意識で」「無意識が」という言葉も「潜在意識」という言葉に置き換えてそのまま意味が通ります。このことから一つの結論が提出できます。それは、この3つの用法は「潜在意識」と同じように反証不能(つまり非科学的)だということです。

これに対して「無意識的」という言葉は使い方によっては反証可能な心理学的用法です。例えば「熱いものに触れて無意識的に手を引っ込める」というのは、「潜在意識」という言葉に置き換えてしまうと意味が通りません。「熱いものに触れて潜在意識的に手を引っ込める」という表現は変ですよね。一般的に、学問としての心理学で言う「無意識」はこの用法で使用されます。

世の中を見回すと、反証可能な無意識と反証不可能な無意識を混同して、無反省に反証不可能な無意識の概念を乱用しているケースが多々見られます。これらの情報には注意すべきだと思います。

■ SHOW BY 商売

「催眠で人を思い通りにしたいと思いませんか」「催眠でダイエットしましょう」などという宣伝をよく見ると、前述した、怪しい用語による説明が必ずと言って良いほど書かれています。長々としてまとまりのない学術的な説明よりも、このようなピンと来やすい言葉は「こりゃすごい。やってみよう」と消費者に思わせるのに最適です。小難しい実験やら理論やらで催眠を説明されても、普通の人は「なんだコイツ、理屈こねくりまわしやがって」と思うだけで、商売的には不利です。

健康とか心理のような目に見えないものを扱う分野では、どんな説明がなされていても、それが正しいかどうかは素人には容易に確かめられません。「無意識は心の90%を占める」「ラポールがないから失敗する」「前世の悪行によってあなたは現世で悩んでいる」などは確かめようがないのですが、自信をもってそう言われると「そうなのかなぁ」と気おされてしまいます。人の弱み(対人関係の下手さ、スキルの乏しさ、難病、心の悩み、悪運など)に付け込んだ商売はここから入ってきます。

以下によくある手口を羅列してみます。催眠や健康関連の商品・サービス・講習の宣伝は、これらの具体例を知る良い教材です。それらを実際に手元におきながら以下の項目を読むとより具体的に理解できるでしょう。

ポジティブな情報(positive messages, low ball technique)
「幸せになれる」「人付き合いがうまくなる」などのポジティブな言葉に弱い人は多いです。商売や詐欺の世界では、いかにポジティブな情報を埋め込むかがポイントです。

脅迫と救済(fear appeal messages)
「放っておくと大変なことになる」と脅した後、「こうすれば大丈夫」と救済方法を述べると、多くの人は引っかかります。「あるある大事典」「おもいっきりテレビ」などの健康番組は脅迫と救済の身近な例です。テレビの健康番組はデタラメなものがほとんどなのですが、巧みな演出によって信じてしまいがちです。

科学と非科学の見事な融合(theoretic & affective persuasion)
すべてを口からでまかせのウソで塗り固めてもすぐ見破れらます。本当の詐欺師は99%本当のことを言って最後の1%でだまします。

まず安心させる(friendly technique; affiliation motive)
怪しい商売をしている人は意外にも人気者です。本物の詐欺師は最高の笑顔を作り面白いトークで気分を盛り上げます。また、詐欺師本人も詐欺だと自覚していることは少なく、自分ではまともな商売だと信じています。その純粋な熱意と笑顔に人は酔うわけです。

体験談(success story technique)
体験談が加わると急に説得力が増します。「私はこれで20kg痩せました!」「人間関係をコントロールできるようになりました!」など。体験談は簡単に偽造やねつ造ができ、しかも大きな効果を持つのでよく使われます。

マスメディアの威力(decor)
テレビ・雑誌・一般書籍の情報などウソだらけなのですが、人はテレビや本に書いてあることに影響を受けます。内容そのものではなく、どのように表現されるか(演出)により人は影響されます。

専門家の権威(halo effects)
「この人は第一人者です!!」と大々的に紹介されると、たとえそれがウソっぱちだったとしても、それは黄門様の紋所と同じ効果を持ちます。偽の紋所でも、素人をだますには十分です。怪しげな博士号や怪しげな資格はこのために存在します。メデイアのサポートによりこの効果は強化されます。

カリスマ性(charisma)
その道の専門家はないのに「先生」とか「師匠」と呼ばれる人がいます。さらに、周りが「先生先生」と呼んでいるとそれに巻き込まれて「この人は先生と呼ばれているのか。きっとすごいんだろうなぁ」と思い込んでしまいます(同調)。

集団同調(confederate effects; conformity)
たとえどんなに怪しいと思っていても、周りの人が賛成していると、いつのまにか自分も同調してしまいます。

友達の友達は友達(balance theory; theory of cognitive dissonance)
友人や尊敬している人などが言う言葉は、深く吟味せずに受け入れがちです。


著名な社会心理学者Cialdini,R.は、この種の方法を6つに分類しています。
1.返報性…恩を受けると、その分、お返ししなければならない気分になる
2.コミットメントと一貫性…一度はまると、それを取り戻そうとして引き返せなくなる。一度引き受けると次回から断りにくくなる
3.社会的証明…多くの人がしていることは無批判に正しいと思ってしまう。多数派に影響される
4.好意…相手に好意を示されると頼みを受けてしまいがちである。友人の言うことは信用しやすい
5.権威…権威のある人の言うことは信じやすくなる
6.希少性…手に入れにくいものは興奮を引き起こし、判断力を鈍らせる

以上、インチキ医療、健康商法、自己啓発、セミナー関連の分野の宣伝でよく使われていると思われる手法をピックアップしました。以下の項目は、上記の項目とは反対に、説得される側の要因です。

被操作性・被説得性
俗に言う「だまされやすさ」とはつまり「被説得性・被操作性」のことです。これは訓練することが難しいものです。しかし、誰にでもできるだまされないための方法はあります。それは知識をたくわえることです。その際、自分にとって都合の良い知識だけではなく、都合の悪い知識も意識して集めることが大事です。自分の夢を壊されるような情報や期待を裏切る情報には目をそむけたがる人がいますが、それは現実逃避であり「だましてください」と言っているようなものです。

補足:もっと詳しくだまされやすい人の特徴を見てみたい人はこちら。絶対にだまされない人などなく、だれでもだまされる可能性があります。