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催眠の現実

知られざる催眠の現実を紹介。

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催眠の現実−応用編


催眠に対する幻想(超能力開発・禁煙・ダイエットなど)
偶然か? 必然か?
催眠の表と裏


■ 催眠に対する幻想(超能力開発・禁煙・ダイエットなど)

催眠と言うと、いまだに「何でもできそう」というイメージが先行していますが、実際には本人がもともとできること以外はできません。例えば「一日にして催眠術で一輪車に乗れた!」という話も、もともと本人に一日で一輪車を乗りこなせる才能があるか、過去に一輪車を乗りまわした経験があるかのどちらかです。テレビやビデオではVTRを編集しているのでもっと劇的に見せることができます。

波動拳を出したり透視できるようになったり突然記憶力がアップして試験に合格したり創造力が爆発して大発明や大発見をしたりたり・・・。これらは催眠では不可能だと思ってください。テレビ番組や仲間同士で「成功した!」と狂喜乱舞することがありますが、きちんとした形(論文など)で成功した記録をまとめたものは一つもありません。世界大戦・冷戦時代における国家レベルでの超能力開発も失敗しています。

超能力開発は極端な例なので成功したという報告を鵜呑みにする人はあまりいませんが、もっと身近な例でよく誤解されているものがあります。催眠による禁煙やダイエットです。最近の研究では、催眠による禁煙は他の方法と比べて有効ではないという説が有力です(詳しくはこちら。医学系専門誌における禁煙催眠の論文のまとめ)。禁煙に関する世界最大級の団体American Cancer Society(米国ガン協会)は、長期禁煙成功者の90%以上はニコチンガムや催眠などの助けを借りずに、自力で禁煙しているというデータを出しています。

「私の催眠でダイエットや禁煙が成功した人がいた。だから催眠は有効だ」という意見をたまに見かけますが、このようなことを平気で言う人は、それを売り物にしている儲け主義の人間か、少し頭の中がおめでたい人のどちらかです。何らかの方法で催眠以外の要因を排除するとか統制群を設けて検証するとかしない限り、催眠が効果的だと結論付けることはできません。このことは学会や論文でもたびたび問題にされています。

念のため弁護しますが、催眠がまったく役立たずだと言っているわけではありませんし私が催眠を嫌っているわけでもありません。ここで示したことは、催眠を用いることがスマートでない場合も多々あるということです。催眠がどの場合に有効なのかという研究は、今現在も続けられています。

■ 偶然か?必然か?

それでも催眠の可能性を信じて、例えば超能力開発などを続ける人もいます。しかし、あまりに結果が出ないので、そんな自分を強引に納得させるため、偶然の出来事を「超能力が働いた!」と言い出すこともしばしばあります。

例えば、体調が悪い日に親類が死亡したとします。これを「虫の知らせが来た」と思う人がいるかもしれません。実際には単に体調の悪さと親類の死が重なっただけであるかもしれません。しかし、虫の知らせを信じている本人にとっては、いくら他人が説得しようと虫の知らせとしか思えないものです。このような状態を思考の狭窄と呼びます。この発展形で、催眠による未来透視などを語る人もいます。

予知現象というのを科学的に見るとどうなるのでしょうか。心理学者の菊池氏は正夢(予知体験)を見る確率を計算しています。それによると、日本で毎日16人は、その日に知人が亡くなるという正夢を見ます。一年間では6000人近い数になります(16*365)。こうして考えると、テレビの特番で「予知夢を見ました」と証言する人が出てきても全然不思議ではないですよね。(詳しい計算方法はこちら)。

催眠の表と裏

・催眠療法
まず催眠療法を挙げます。心の問題と言うと、放っておいても治らないようなイメージがあるかもしれませんが、専門家の治療を受けなくとも解決することがあります。このようなものを自然寛解と呼びます。自称専門家の中にはこのことを知らない人がおり、自然寛解が起こったのを「自分の方法で良くなったんだ」と勘違いするケースがあります。そして効果のない方法をいつまでも続けて、高額の料金を取っていたりするのです。

これは前項「催眠に対する幻想(超能力開発・禁煙・ダイエットなど)」で述べたように、催眠以外の要因を催眠だと錯覚しているのと同じことです。もっと悪質な者は、自分のやっていることが効果がないとうすうす気づいていながら、自然寛解が起こるのを待って「ほら治ったでしょ」と自信満々に語ります。

・催眠で人を思い通りにする
もう一つの例として娯楽的な催眠術を挙げます。日本では昔から「催眠で人を思い通りにする」と宣伝する人がいましたが、これらも幻想です。「確実に稼げる方法があります!違法ではありません!この素晴らしい方法をお伝えしたくてメールしました。ぜひ連絡ください」などという迷惑メールと同じです。非現実的な話だと思うのが普通ですが「もしかしたら本当かも」と思って引っかかる人がいるので、おいしい話はいつの時代にも存在します。

・瞬間催眠
瞬間(急速)催眠と呼ばれるものにもカラクリがあります。まず、催眠にかかったことがある人は催眠状態をすでに知っているので、簡単なきっかけで一瞬で催眠に入ることができます。自転車も一度乗れるようになれば次からは簡単に乗れますよね。それと同じことです。これは瞬間(急速)催眠ではなく単なる条件づけの一種ですが、瞬間(急速)催眠だと宣伝している人がいます。

催眠にかかったことがないと思われる見知らぬ人を一瞬で催眠にかける―これが瞬間(急速)催眠の本来の定義だと考えられますが―これはまず成功しません。事前に、催眠にかかりやすい相手を選ぶとか、催眠が成功しやすい環境を作っておくとか、類トランス体験を想起させるとか、話しかけてラポールを取るといった下準備が必要で、本当にいきなり催眠が成功しているのではないのです。また、仮にこういった条件を整えなくとも催眠現象に見える現象は催眠を使わなくとも起こせます。これを催眠だと勘違いしている催眠術師がいるようです。被験者も「これが催眠ですよ」と言われればおそらく納得してしまうでしょう。

まとめると、世の中で言われている瞬間催眠や急速催眠は以下の3つです。
1.催眠にかかったことがある人に催眠をかけている
2.かかりやすい相手を選ぶ、カメラを意識させる、催眠が成功しやすい環境を用意する、類トランス体験の想起、ラポールを取る などの下準備をしている
3.催眠に見える現象を催眠だと言って納得させる

もしも本当に瞬間(急速)催眠とやらが存在すると思っている人がいたら、「何かの収録だと思われないように留意して、道端を歩いてる人をランダムに選んで一瞬で催眠をかけてみてください」と催眠術師に頼んでみてください。おそらく「いきなり知らない人に催眠をかけるのは犯罪なので無理です」などと言い訳をして絶対にやろうとしないはずです。犯罪だからとかではなく、成功する確率が非常に低いことがわかりきっているから引き受けようとしないのです。