バイト帰りに降り出した雨風は予想外に強く、傘は全く役に立たなかった。
     それでも、帰ってシャワーを浴びれば問題はないだろうと思ったのだが…、まさかこの悪天候の中やって来ているとは。

     「宮田くん!お帰りなさい!」

     晴れやかな笑顔に頭痛がした。

     「さっさと入れよ。風邪ひきたいのか?」
     「で、でも、宮田くんが…!」
     「いいから入れ。仮にも客を差し置けるわけないだろ」 

     屋根なんてあってないようなものなのに、アパートのドアの前で傘も差さずに待っていた幕之内はびしょ濡れだ。
     勿論放って置けるはずもなく、慌てて部屋に入れたのだが、
     浴室に押し込もうとしたところで、何を考えているのか抵抗し始めた。
     秋の雨は冷たい。早く温まらなければ…、というのはバカでも分かることなのに。

     「じゃあ、一緒に入ろう?」

     …このバカには分からないらしい。

     「そうだ、それがいいよ!」

     …諦めた。色々な意味で。コイツに言うことを聞かせようとしたオレが間違っていた。
     幕之内の腕を引っ掴み、無言で浴室に入る。
     ここまで濡れていたら、どうせ洗濯しないとダメだから、服のままであることも気にせず、熱めに設定したシャワーノズルの下に押さえ込んだ。

     「わ、宮田くん!?」

     首を引き寄せ、有無を言わさず口付ける。
     驚いたようにぎゅっと目を瞑って、それでも抵抗はせずに縋ってきたから舌を絡ませた。
     そのまま湯を吸ったシャツを脱がせるのはさすがに無理があり、肩まで引っ張ったところで諦める。

     「ここで、これ以上の目に遭いたくなかったら、迂闊に誘うんじゃねぇ」
 
     正直、目のやり場に困ったから濡れたシャツを肩に戻してやった。
     オレが出た後にゆっくり脱いでくれればいい。

     …と思ったのだけれど。

     「一緒に…入ろうよ」

     頬を赤くした幕之内がオレのシャツに手をかけながらじっと見上げてきた。

     「宮田くん…」

     熱めのシャワーのせいだけでなく、熱に浮かされる。引き寄せた唇から全身に熱が伝わっていった。