「御内人(みうちびと)」とは、鎌倉北条氏(執権北条氏)の家督(かとく 惣領・家長)である「得宗(とくそう)」の従者のコトであります。学術用語では、「得宗被官(とくそうひかん 被官は従者・家臣のコト)」と言います。 もう一回言いますと、「御内人」は史料に出て来る言葉(史料用語)で、「得宗被官」は後世の研究者が作った言葉(学術用語)であります。 ちなみに、「得宗被官」は、「得宗の家来」を意味する、これ以上無いほど分かり易い優秀な学術用語と言えましょう。 そして、声を大にして言いますが、 「御内人」と「得宗被官」は、同じモノです!!! なぜ、このように断言出来るのか? と言えば、「得宗被官」という言葉を発明した佐藤進一氏ご自身が、 「得宗の被官は当時「御内の人々」と称せられ」 (同氏『鎌倉幕府訴訟制度の研究』。岩波書店版なら、51頁) と思いっ切り! 書かれてるからです。 ↑ この文章からは、誰が読んでも、「得宗の被官」=「御内の人々」という解釈しか出来ンでしょうが?! だから、「御内人」=「得宗被官」なのでして、「御内人」は史料用語、「得宗被官」は学術用語ということになりまさね。 ですんで、 「御内人と得宗被官の違いについて、卒業論文で研究しよう!」 などと思ってる学部生とかが、もし、いるのであれば、やめたが良いです。 「カタツムリとデンデン虫の違いについて、卒業論文で研究しよう!」 というのと同じくらいムダなコトですからして。 ↑ このような悲劇(喜劇?)を生みますから、1つのモノに2つの名称があるのは、あまりよろしくないと思うのであります。混乱の元です。 ですんで、「御内人」と「得宗被官」については、あたしゃ、最近は、史料の方を重視して「御内人」で統一して使用しておりますです。 んで、「御内人」と「得宗被官」が同じモノを意味するのであれば、「得宗被官」という造語の作者である佐藤進一氏は、なぜ「御内人」という言葉があるのに、わざわざ「得宗被官」という言葉を作ったのでせうか? これは、もう、佐藤氏ご本人にお伺いするしかないのですが、あたしゃ、佐藤氏とお話したコトが一度も無い(そもそも、佐藤氏のお姿をナマで拝見したのが、2回しかない)ので、推測してみます。 佐藤氏が「得宗被官」という言葉を最初に使った『鎌倉幕府訴訟制度の研究』は1943年出版ですので、もう70年も前です。 その頃、「御内人」という言葉(史料用語)はメジャーではなく、しかも漢字で書くと「御家人(ごけにん)」と1字違いで紛らわしく、さらに、字を見ただけでは意味も、すぐにはわからん。 そこで、佐藤氏は、意味のすぐわかる学術用語として「得宗被官」という言葉を発明したのではないか? と、あたしゃ、思うのです。 それ以上の意味は、無いのではないか? と思います。 いずれにしろ、佐藤氏の定義によれば、「御内人」と「得宗被官」は同じモノを意味するのです。 これは、間違い無いはずです。
2013/04/19 (細川重男)
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