おけやき



 新潟県佐渡市松ヶ崎の「おけやき」(欅〈けやき〉)は、文永8年(1271)佐渡に流された日蓮
聖人がこの木の下で佐渡での第一夜を過ごしたという伝説の場所として知られている。松ヶ崎
は佐渡国の玄関口で、北陸道の国津があったので、日蓮を乗せた船もこの地に着いたのであ
る。着岸に際しては、龍神が松の梢(こずえ)に現れ、灯火を点じて安全な場所を示したと伝え
られている。その時の松は「龍燈の松」と言われ、現在は枯れてしまい切り株が松崎山本行寺
(ほんぎょうじ)本堂に保存されているという。本間守拙著『遺跡巡りの旅 日蓮佐渡越後』に
は、本行寺の縁起として、日蓮は松前神社の明神のもてなしを受けて盃を交わし、明神の案
内で池田家屋敷内の「おけやき」下の洞くつで一夜を過ごしたという。
 また、日蓮は、「おけやき」の下で、法華経を唱えていると村の老婆から一椀の粥(かゆ)をも
らい、お礼に鍋と血曼荼羅を与えたと伝えられる。この日蓮から与えられた鍋は、池田家に現
在も伝わっているという。
   
(おけやきの入口にある題目の石碑)

 「おけやき」から少々離れた日蓮の佐渡上陸の地点に建立されたと言われているのが松崎
山本行寺である。この寺は、仏寿坊という僧が日蓮に帰依し、山梨県の身延山(日蓮宗の総
本山身延山久遠寺〈くおんじ〉)へ登り、佐渡に戻った後、創始したとされる。仏寿坊はその後
日量(にちりょう)と号し、正応5年(1292)入滅した。
 「佐渡観光Navi〜ときめき佐渡〜」(佐渡観光協会)の解説によると、現在の「おけやき」は2
代目ともいわれている。



(本行寺の前にある解説では、佐渡に着いた日蓮聖人をもてなしたのは、春日明神とされてい
る。)
*写真は2005年8月に撮影

(参考文献)
本間守拙著『遺跡巡りの旅 日蓮佐渡越後』(新潟日報社 1988年4月発行)
佐渡観光Navi〜ときめき佐渡〜(佐渡観光協会) http://www.sadokankou.gr.jp/search/detail.
asp?cid=643
(生駒哲郎)

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