*キミ達に幸あれ*




 放課後の河川敷。
 不動峰中のテニス部は、暇があればそこにあるテニスコートで練習をしているということは、
 同じ学校なら知っている者は結構多い。
 なにせ昨年の騒ぎが霞むほど、今年の活躍はすごい物だから。

 そして、テニス部以外でここに頻繁に訪れる者が一人。




「あっ、あの、スイマセン!!」
「ん、さんか。少し待ってくれ……内村!!」
「…………なんですか、橘さん」


 練習の途中で呼ばれて不機嫌そうな内村は、
 遠くからは橘の陰に隠れて見えなかったの姿を見つけて眉をひそめる。
 橘は爽やかに笑いながら手を振りつつ他の部員の元へ歩いていった。




「またアンタか」
「ご、ゴメンナサイ、あの」
「…謝る事じゃないだろ」
「う、うん。ゴメン……あ、その」
「……いいから、今日は何だ」
「あのね、学園祭に関するプリントなんだけど……」


 頬を真っ赤にし、小さい背を更に縮こませて喋るの前で、
 内村は顔をしかめたまま、しかしちゃんと話を聞いている。

 そんな二人を、他の部員達は、またか、と言うような視線で見ていた。




「しかしさんも学級委員とはいえ、毎日のように届け物やらがあって大変だなぁ」
「ホント大変ですよね。学年の違う橘さんが名前覚えるほど通ってるのに本人にはまるで通じてないっていう報われなさ加減。っていうか内村もプリント届けさせるの狙ってるっぽいくせに相手の気持ちに全然気付いてないってどうなんだろうなぁ。はたから見ててイライラするって言うか」
「ん? 深司、何か言ったか?」
「イエ、別に」


 端から見ると一見狼に睨まれているウサギのような図の二人。
 だが、周りからは結構祝福されつつ見守られているらしい。





*あとがき*


内村好きの柚子へプレゼント作品。
私の中ではこんなイメージ。喜んでもらえると嬉しい。


2004.10.27 伊織




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