*とある行事*




 学校の帰り道、やんわりとした日差し。
 初春の季節、帰宅する人々がなにやらそわそわとしている。
 それはたとえばこういった行事があるのも理由の一つなのだろう。


「まず聖と書いてセントと読ませるのか気にいらん」


 内村京介の言葉である。
 聞いて、は思った。




―― ああなるほど。これが反抗期か




「なんだ」


 空気を感じ取ったらしい内村はを軽く睨んだ。
 はやんわりとかわして、さてとおもいあぐねる。
 ほどなく答えを見つけた。




「はい、どうぞ」

「……なんだこれは」

「私の好きなお菓子だけど」




 箱からひとつもつまんで、口に放り込んだ。
 これならば内村の忌む行事には参加したことにはならないだろうとは思った。




 内村もひとつ口に放り込んだ。
 ただ、内村自身はその行事に参加することからさほど離れたことのようには思わなかった。





*あとがき*
内村バレンタインデードリームでした。


2005.02.13 石蕗柚子




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