「好きだよ」


 春の暖かな日差しの中、微笑みながら言った僕の言葉に、
 キミは目を丸くした後で、苦笑未満の笑顔を返した。

「ありがと」

 その反応に、僕は笑顔のままでいたけれど、内心よかった、と溜息をつく。
 でもすぐ後に、少し怒ったような ―困ったような― 声で、でもね、と続いた。

「不二くんにそんな事言われたら、信じちゃう子もいるから、やめた方がいいよ?」

 いっくら今日でもさ? と小首を傾げるキミに、胸がつきんと痛んだ。


「……ゴメン」
「謝んなくてもいいよー。私は好意の言葉は素直に嬉しーし」


 明るいキミの笑顔がまぶしくて、涙が出そうになった。

 ちゃんと言う勇気がなくてゴメン
 キミの気持ちを探るようなことをしてゴメン
 嘘の許されるこの日に冗談のようにしか言えなくてゴメン


 いつか本当の僕の言葉でこの気持ちを伝えるから
 ―― 赤く染まったキミの耳の色は、嘘じゃないって思ってて良いよね?


*あとがき*

日記より抜粋。


2006.04.01 伊織




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