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【おうちにおともだちがきた】




「おじゃまします。ここが不二の家か」

 日曜日。おひるまえ。
 そう言って家の中に入ってきたのは
 なんともいえない髪型をした男の人だった。

 私はそれがとてもきになって玄関口まで走っていった。

「はじめまして。不二といいます」

「あ、はじめまして。大石秀一郎です。礼儀正しいな。いい子だね」

 しゅういちろうお兄ちゃん。
 なんて気になる髪型をしたひと!

 ふかぶかとおじぎをしながら
 上目遣いにその髪型を盗み見する。
 ア、アレ……どうなってるんだろう?

「き、気になるかい? コレ」

 そう言ってしゅういちろうお兄ちゃんは前髪? のそれをおさえる。
 はずかしそうだ。

 そ、それはそうだよね。こんなにじろじろ見たら、だれだってはずかしい。
 私は顔がほてるのを感じながら 「ごめんなさい」 と謝った。








「いや、大丈夫。気にしてないよ。
 ………不二、やっぱり気になるかな。この髪型」

「うん、まあちょっと………でも、それも大石の個性だよ。そのままでいいんじゃない」

 気にしてないといいつつも、やっぱり気にしてるんだ。
 ああ、もっと考えてから行動すればよかった。

「でも。そんなに大石のコレ、気になるかい?」

 周助兄ちゃんはよけいなことをいう。

「う………そ、そんなことないです! ちょっと、それは、その、さいしょは気になったけど……」

「やっぱり気になるんだ。そうか、お兄ちゃんが教えてあげようか。大石のアレはね」

「おい。不二なにを」

「じつは部族のしきたりなんだ」




「「ぶぞっ?」」




 私としゅういちろうお兄ちゃんとでハモる。

「うん。ジャングルの奥深くに住むある未開の部族のしきたり。
 その部族では男性は成人するまで、あの髪型をしていなくちゃならないんだ。だから大石は」

「しゅ、しゅういちろうお兄ちゃんは、その部族の出身なの?」

「そのとおり!」

 周助兄ちゃんは、にっこりとわらった。してやったり、といったかんじだ。

 でもね周助兄ちゃん。











「………………不二」

 周助兄ちゃんのうしろには怒りをとおりこしてしまった顔のしゅういちろうお兄ちゃん。
 ゆっくりと口を開く。

「だれが、ジャングルの未開の部族の出身だって?」

 肩をつかまれた周助兄ちゃんは、しゅういちろうお兄ちゃんからは逃げられない。

 私はその隙に早々と自分の部屋まで避難することにした。


 もう、周助兄ちゃん。
 ちょっとそれはいきすぎだよ。
 せめて、ちかごろはやりのステキなカットくらいなら私も信じたかもしれないのにね。





*あとがき*

大石訪問編。

大石ファンのみなさん……………ご、ごめんなさい……………

不二ちょっと失敗の巻でもありますね。
兄や姉は妹や弟をからかいたくてしょうがない人種なのだと思っています。
だから妹をからかいたいために天才もちょっと配分ミス。……だめですか?

ステキカット編ならば大石も完ボケしてくれたでしょう。

大石「そ、そうなのか……? オレが知らない間に、いつの間に……」

なんつって。


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