*着信履歴*




 お風呂上がりののんびりタイム。
 明日の準備は全部終わってるし、お気に入りの本も手元にある。
 さて、これからまったり読書しよう、と思ったら、
 ふいに枕元に置いておいた携帯が目に入った。

『着信あり』

 入浴中に誰かから連絡が入ったのかな? と思い開いてみると、
 30分ほど前にかかってきた相手の名前が表示されていた。
 そしてそれは

「桃城 武……え、桃?」


 名前を知らないワケじゃない。アドレスに入れてるくらいだ。
 気の合うクラスメイト。友達。もっと言えば悪友。

 携帯画面を睨んで1分。
 時計で時刻を確認して、もう一度画面を見る。

 学校の連絡とかなら自宅の方にかかるだろう。
 そもそも女子のに男子の桃城からかかって来るというのもヘンだ。


 更に不自然なことに、その着歴には
 受信時間が凄く短かったことを示すマークがついていた。
 これは、一切り対策用のマークだから…1コールで切ったということだろう。


 誰か他の人に電話しようとして
 間違って私の番号にかけちゃって慌てて切ったとか?
 (ありえる、あいつドジだし)


 アドレス入ってるの忘れて一切りでいたずらしてやれとか思ったとか?
 (ありえる、あいつバカだし)


 なにか用事あってかけたんだけどやっぱいいやって切ったとか?
 (ありえる、あいつ優柔不断だし)


「ま、いっか」

 基本的には着歴にはかけない主義だ。
 まぁ、大事な用事ならまたかけてくるだろうから。
 そう思って枕元にもどそうとしたとたん、
 けたたましい音で携帯が鳴った。

「は、はい。もしもし?」

『あー、?』

「あ、桃。どしたの? さっき着歴あったけど」

『…あぁ、その、やっぱ直接言おうと思ってよ。
今、出られるか?』

「……は?」


 まさか、と思い窓から外を覗くと
 そこには見覚えあるつんつん頭。


「ちょっ、待ってて!!」


 は超特急で身だしなみを整え、外に飛び出す。
 まだほのかに濡れている髪が外気に触れてちょっとひやっときた。


「わりぃな、急に押し掛けて」
「何、急用?」
「ひょっとして風呂入った? 髪まだ濡れてっぞ」
「あ、うん。なんなら上がってく?」
「え、あ、いや、…もう遅いし」
「そ、そう?」


 家までわざわざ来たにしてはどうも歯切れが悪い。
 そんな桃城の顔をのぞき込むと、微かに赤い。


「やだ、桃あんた顔赤いよ。風邪ひいたんじゃない?」
「え、いやこれは」
「用件なら明日でも訊くから。
あ、これ大きめだし、結構暖かいから着てって」

 自分の着ていたスプリングコートを桃城に渡す。
 だが桃城は受け取ると、に着せかけた。


「オレはいーって。オマエこそ風邪ひくぞ」
「え、桃?」

 コート越しに肩から桃城の熱が伝わる
 いつもとは違う表情で自分を見る桃城に、はとまどいを隠せない。


「そ、その、それで用事って?」
「あー、その、な。……あ゛ー、ったく、試合のがよっぽど楽だな…」
「は?」


 桃城はため息をつきつつ自分の左手に額をつける。
 つまり、そこはの顔の横で。
 パニックに陥るの耳に、桃城の声が直接響いた。



「オレ、実はオマエのことが……」




*あとがき*

ビバ・寸止め♪
桃ちゃん初書き・お題初書き。初物づくしで良いですね! (笑)

最後の方着信履歴関係無くなっちゃったなぁ…。ふむ、反省。
でも、楽しく書けたので結構満足してます。

2004.04.01 伊織




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