*行方不明*「ない!」 朗らかな休日の午後。 突然の声に驚いてを見ると、鏡を見ながら耳元を押さえていた。 「どうしたの?」 「イヤリングが片方ないの!」 言われてみてみれば、確かに彼女の耳には片方だけのイヤリング。 「うそ…ここに来たときにはあったよね」 「…うん、ちゃんと両方揃ってた」 僕の家に来たときの彼女を思い起こせば、 確かにイヤリングは両方揃っている姿。 「やだ、ど、どこに落としたんだろう」 そう言っては部屋の中を探し出す。 椅子の影 机の下 棚の後ろ。 そのうち、部屋から出て廊下の方まで探しに行った。 すぐに見つかると思っていたけど、 なかなか見つからない様子に僕も手伝う。 はかなり必死な様子で探している。 良く身につけていたからお気に入りだったんだろう。 「そんなに大事だったの?」 「…だって、不二くんが始めて買ってくれたイヤリングだもん。 可愛くてすごく気に入ってたのに…」 確かにそう。 二人で買い物に行った先で、ふと目に付いた。 に似合うと思ったイヤリング。 その場で買ってプレゼントしたら、すごく喜んでくれた。 でも 「今のを取られたみたいで寂しいな」 「え…」 探す手を止めてが僕の方を見る。 「贈ったときの気持ちはまだここにたくさんあるよ。 同じ物は無理だけど、またプレゼントするから」 少し困ったような微笑みを浮かべる。 近づいて、空いた耳にキスを落とすと、 くすぐったかったのか、肩をすくめる。 その時。 「うひゃぅ!!」 「!?」 いきなりの声に吃驚して体を離すと、 彼女は胸元を押さえて真っ赤になっていた。 くるっと後ろを向いて何かごそごそやっていたと思ったら、 こちらを向いた彼女の手にはもう片方のイヤリング。 「…あった」 「…………」 何とも言えない表情でそれを見せるに、 僕もどんな表情をして良いのか解らない。 とりあえず、イヤリングに取られたの気持ちを取り戻そうか。 ―― 探し物は、なんですか? *あとがき* 失せ物・なくし物・探し物。 総じて探すのをやめた後で出てくる気がします。 やはりこれもマーフィーの法則ですか(古) 私は基本的に耳に物は付けません。 だって重いし気になるし(装飾性ゼロ) …以前つけたピアス、 買って30分で無くしたのがちょっとトラウマかも(笑) 2004.05.14 伊織 <<戻る |