はじめて、キミが涙を見せた

*泣いたり笑ったり*





 笑顔や怒った顔、悲しそうな顔。
 いろんなキミを見てきたけれど、
 初めて見る涙に僕は動揺してしまい、
 手から箱が滑り落ちたことも全然気付かなかった。


「泣かないで」


 口にしてしまうと、なんて陳腐な言葉。

 泣きやもうと、必死で顔を拭っているキミ。
 思わず僕は肩を抱き寄せる。
 薄い肩。
 小さなキミを、ずっと見守っていたいと思っていたのに。


 キミは顔を横に振る。
 何度も、何度も。
 そうじゃないよ、と口にして。

 どんな理由でも、誰であっても、
 キミを傷つける奴は許さない。
 ずっとそう思っていたんだ。
 口に出したことはなかったけど。


 その想いは、キミには重荷ですか ――








「そうじゃないよ、周助」

 僕を見上げたはまだ涙をこぼしながら笑う。

「嬉しいときにも、涙は出るんだよ」

 さっき僕が落とした箱を拾い上げると、
 は中の指輪を愛おしそうに指にはめる。

「ありがとう周助。―― 愛してる」





 ―― 僕の側にずっといてもらえますか


 僕の言葉に対する返事は、
 はじめてのキミの表情と、キミからのキス。








*あとがき*

短。元はザ・突発書き殴りだったり。
思いついたら一直線。そんな奴です、私って。
内容についてはノーコメント〜(逃)




2004.07.27 伊織




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