猫は好きかと訊かれた。
 嫌いじゃないと答えた。
 あの言葉は、嘘じゃない。

*子猫*




「眠ってしまったようですね」
「……………………」


 自分の膝の上で丸まっているソレを見る。
 最近が飼い始めた子猫。
 かなりになついているらしく、
 抱いてみますか? と渡された時は、離されてたまるかとばかりに暴れていた。


「先輩、好かれていると思いますよ」
「あれでか?」


 先ほどまでの落ち着きのなさを思い返すと、とても信じられない。
 初めて目があったときもかなり警戒されていた。
 だが、膝の上で眠るソレを指さされて、
 そうなのか、と少し安堵する。


 膝の上のソレにが手を伸ばし、思わず少し身じろぎする。
 すかさず目を覚ましたソレは、しかしに軽く背を撫でられ、上げた頭を再び落とした。


「名前、どうにかならねぇのか」
「母が決めたもので。今更変えてもこの子が混乱しますし」


 イヤなら先輩の前では呼びませんよ、と言われイヤな訳じゃない、と答える。
 ただ……




「カオル?」


 耳をぴくつかせたあと、不意に起きあがって部屋を出ていくカオル (猫、性別:メス) の背を目で追う。
 は小首を傾げていたが、後を追ったりはしなかった。




 猫は嫌いじゃない。
 それは嘘じゃない。

 ……ただ、その名を外で言うのは控えてくれ、と思う。






*あとがき*

お題を見て最初に浮かんだ海堂君。
柚子に許可をもらって一人で書いてみました。

あれやこれやいろいろドタバタも考えてみましたが、まぁ短く。


2004.11.17 伊織




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