平凡な日常も大好きだけど。 ちょっと思い立って、一歩踏み出してみようかとか思ってみました。 *三つ葉のクローバー*「そこにいるのはか?」 「ん?」 下校途中の河川敷。草むらにうずくまる人影を見つけ、手塚は足を止めた。 最初は誰か気分が悪くなったのかと思い近づいたが、 その後ろ姿は見覚えのある幼なじみの姿。 声をかけられたは顔を上げ目を丸くした。 「あれ、手塚。今日生徒会の用事で遅くなるとか言ってなかったっけ?」 「……今何時だと思っている」 「へ……うわっ!」 呆れを含んだ手塚の声に腕時計を見てみれば、かなりの時刻をまわっている。 気が付いてよく見れば辺りもだいぶ薄闇に包まれていた。 「あっちゃー、夢中で気が付かなかった……」 「こんな遅くまで不用心だぞ。ちょうど良い、家まで送る」 「あ、ちょい待って」 帰りを促したがそれに待ったをかけるに手塚は首を傾げる。 そういえば、先程から顔を向けるだけで立ち上がろうとしていない。 「何処か怪我でもしたのか?」 「いや、そゆんじゃなくて。捜し物してんの」 「何か落としたのか」 「ううん。幸せ探し」 不審そうに片眉を上げる手塚に、小さく笑いながらは手元を指さした。 そこにはシロツメクサの白とクローバーの緑でできた絨毯。 「聞いたことあるでしょ? 四つ葉のクローバー見つけたら願いが叶う、とか幸せになれる、とか」 「……ああ」 「んーっと、さっき見たのは確かココまでだったから……」 手元に視線を移しクローバー探しを再開するに手塚は眉間にしわを寄せる。 今のは 「四つ葉のクローバーを見つけたい」 というよりは 「ここまで探したんだから見つけないと悔しい」 という状態に近い。 手塚は跪くと、足元のクローバを取りに差し出した。 「」 「……それ、三つ葉なんですけど」 手塚の手にあるのは確かに三つ葉のクローバー。 眉を寄せて指摘するだったが、手塚は手を戻そうとはしなかった。 「ジンクスを否定する気はないが、なら自力で望みを叶えることが出来るんじゃないか? 願いが何かは知らないが、形がほしいならこれでも良いだろう」 手塚の言葉にじーっとクローバーを見つめていたは、 ちらっと手塚の顔を見ると、一つ頷いて受け取った。 「ま、手塚が摘んだクローバーってのもかなり珍しいしね。帰ったら押し花にでもしよう」 ハンカチに包んで大事にしまうに、好きにしろ、と言って手塚は立ち上がる。 遅れて立ったは、今更ながらに肌寒さを感じて体を震わせた。 「うわ、寒。結構冷えちゃったなぁ」 「川辺は風が強いからな。帰ったらちゃんと体を温めておけよ」 「うん、そうする。手塚、ガクラン貸して」 「は?」 「保温。湯たんぽ代わりにさ。家まででいーから」 歩きながら差し出された手に、ため息一つついてガクランを渡す。 さっそく羽織ったそれは肩幅が合わずずり落ちそうだった。 「人肌人肌〜。むぅ、手塚でかくなったねー」 「なんだいきなり」 「うわ、手の先ほとんど出ないじゃん。小さい頃私のが大きかったのに、生意気〜」 「……いつの話だ」 「いつ頃抜かされたんだっけ。なんか悔し……っくしゅん!」 早足で先を歩いていたはいきなりくしゃみをして立ち止まる。 手塚はに追いつくと、その額に手を当てた。 「熱はまだないようだな。ほら、着るんだったらきちんと着ろ」 「……手もおっきい」 「なんなんだ、今日は一体」 いつもよりもなにやらしつこく食い下がってくるに、手塚は首を傾げる。 は、んーん、と首を振ると早く帰ろ、と促した。 「三つ葉でも御利益はあるモンだ」 「何?」 「ま、足りない分は手塚が保証してくれたワケだし。いっちょ頑張ってみますか」 「なんの話だ」 「幸せになりましょうって話。覚悟しといて」 紡がれる言葉の意味が分からず首を傾げつつも、 見慣れた表情で笑うに手塚は瞳を細める。 四つ葉に託そうと思った想いは今はまだ言葉にならず それでも、一歩踏み出したの心は、晴れ渡っていた。 *あとがき* 20のお題終ー了〜〜!! 長かった……ホント長かった……。 最後は手塚部長で。 この話は結構先に書き上げていたんですがね。 まぁ、紆余曲折の末、今の形になりました。 結局の所基本コンセプトは変わってないんですが。 最初、花冠を手塚部長にかぶせてみようとか思ってたのはヒミツです(笑) 2005.02.18 伊織 <<戻る |