*夜逃げ*




「……でもするのかと」

「……、人聞きの悪いこというなよ」


 なんの気なしに家へと遊びに行ったら、金田はなにやら大きな荷物をつくっていた。


「寮に遊びに行くんだ」


 ああ、そっか。
 私はそんな気持ちを外に出さず心の中でひとりごちた。

 それでそのまま一泊するのだという。
 なんだかいいなあ。
 最近、私は友達とのおとまり会なんかもごぶさただったので
 なんとなくうらやましくなってしまった。
 それでなんだろう。こんなことを言ってしまったのは。


「私も共犯にして」


「へ?」




 一拍おいて金田が気の抜けた声をだした。
 私は取り合わず勝手に荷物の中に私のものまで入れ始めてしまっていたのだけど
 そのあいだ金田はぼーっとしていた。


 しばらくして金田はあわてて私からバックをひったくるようにして
 その中から私の荷物を取り出しこう言った。




「やっぱりやめるよ」

「なんで?」

「どうしても」

 着替えや何かをかたづけている間、金田は
には俺の気持ちは分からないんだろうな」 とかなんとか言っていたけど
 やっぱり私にはなんにもわからなかった。
 どうせ私は金田より頭が悪い。
 ちぇっ。





*あとがき*


幼なじみの心、知らず。


2004.12.03 石蕗柚子




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