*小さくなった鉛筆*




「ううん、いいことなんだけど」

 はそれを見て言った。

「金田って物持ちいいよね」


なにげなく金田のペンケースから取り出したそれは年季の入った青い鉛筆。


「なんだよ

「いいんだけどさ。
 これ、いつからあるやつだったっけ」


 金田の机の向かいでは青いそれをしげしげと観察していた。
 古い傷。幼い 『金田』 の文字。


「気がついたらもうあったよね。
 もしかしたら私よりつきあいが長いんじゃない」

「ああ、これ。
 小学二年の時に転校するっていうクラスメイトからもらったやつだよ」

「……宝物なんだ」

「いや、そういうわけじゃないんだけど
 せっかく貰った物なのに使い切るのがもったいなくて。なんとなくかな」

「ふーん。いいなあ」

「なにが?」

「べつに」


 少しだけ意味深に濁しては青いそれをかえした。




「そういえば随分短くなっちゃったよな」

 そう言うと、金田は顔を上げた。

「なに?」

「いつも持ってた赤い鉛筆あるだろ。
 あれ、よかったら譲ってくれないか」

「へっ? …うん、いいけど」


 金田はから受け取るとそれらをくっつけた。


「よし」


 二本分の長さを足して多少握りやすくなった鉛筆。


―― 金田はこんなふうに物を大事にする。


 金田は二つあわせになった鉛筆をペンケースにしまった。
 はなんとなく満足した。





*あとがき*

私は、物を大事にするとかいうより
すぐ物をなくします。


2004.12.10 石蕗柚子




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