くるくるまわるあたりの世界。
 まわりを見ている余裕はないから
 とても酔ってなんていられないけど
 本当は大きな事が起こってる。

*鉄棒*




「金田のクセに生意気」
「な、なにが」


 の急な発言に金田はめんくらった。
 身体測定の日にはじめての屈辱を味わった
 ぶぜんとして 「からだのしおり」 をなげてよこした。

 教室中がすこし二人に注目する。

「女の子の秘密をしろうとするなんて変態」
 といって自分のしおりは見せようとしないわりに
 は金田のそれは平気で見ていた。

 視力、ふつう。体重、ふつう。
 ほぼすべてがふつうである金田の 『そのへんの人』 っぷりに
 ささやかには同情の目をむけていたりしたのだが
 (そしてそれは大いなるお世話であったのだが)
 金田は気にしていなかった。

 ……気付いていなかったともいえる。

 しかし金田がそうするというのならともかく
 が怒ることはないはずだ。
 理不尽な仕打ちにさすがの金田も腹が立った。


「怒るなら見るなよ」


 もっともな言い分である。
 教室の大勢がこのときばかりは心の中で金田に同意した。


「どうしたの?」


 機嫌のわるいまま教室の外に出たに友人のが声をかけた。


「わたしより身長の高い金田なんてゆるせない」


 それを聞いて、はすこし笑った。





 まわってるのは自分のほうなのにね。



*あとがき*

体操の選手はよく具合悪くならないなあと思います。


2004.08.27 石蕗柚子




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