*朗読*




 内村京介は寝転がったままでの朗読するそれを聴いていた。


「そしてお姫様は王子様といつまでも幸せに暮らしました」
「無責任な話だな」


 そのラストシーンにたいして感慨もなくぼそりとつぶやく彼には苦笑する。


「いつまでも幸せなのだとなんでその作者は言い切れるんだろうな。
 人の一生はそんな簡単なモノだったのか」


 は絵本を閉じ、悪態をつきつづける少年の帽子のつばに手を掛けた。
 間髪おかずうざったそうにはらいのけられる。
 どうしたらよいものかと懸命に首をひねって答えをだした。







「と、みせかけてしかしその幸せは長くは続かなかったのです」


 絵本の最後のページより後のページを開いては読みあげる。
 内村は帽子のつばを三ミリ持ち上げた。


「なぜなら王国の政治に不満をもつ革命の徒が虎視眈々と機会を狙っていたのですから。
 迫りくる革命軍、国家の混乱の中で翻弄されるお姫様と王子様が導き出した答えとは!?
 ハッピーエンドはその手で掴め!」


 続編近日公開予定。




「続いたな」
「続いたね」
「別の話だろうそれは」
「人の一生は一本道でいくように簡単なモノではないからね」


 呆気にとられた内村の帽子を今だとばかりにぐりぐりとなでる
 やられたと思い躍起になって両手で阻止する内村。

 部員たちが遠くでなにごとかとその様子を見ていた。







2005.05.13 石蕗柚子




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