分科会会長・尾身茂発語の検証
6月19日に緊急事態宣言が全面解除された後、感染者数が徐々に増え、その増加の勢いが増している最中の7月20日ごろ、政府(対策分科会)は「go toキャンペーン」を始動させた。人が動けば新型コロナウイルスも動く。その結果は全国の感染者数として如実にあらわれ、本日7月31日の感染者は東京都で463人、全国で1557人を示した。
日本の経済しいては日本人の命を守るため、感染症対策として国は何をしてきたのかと考えれば、全国に広がった感染者数をみれば、何もしてこなかったと言うよりも、作為的に広げてきのではなかろうかという疑惑しかない。
4月25日にここ拙HPにタイトル「専門家会議という欺瞞的会議」を書き、そこで日経サイエンス内に記載されていた専門家委員達の言葉を載せたが、ここでは、日経サイエンス9月号(p61〜P63)に載っている、今は政府対策分科会の会長(元専門家委員)になっている、テレビでもおなじみの尾身茂氏の言葉の意味を検証することにする。タイトルは「政府対策分科会会長・尾身茂氏に聞く/動き出した社会で感染拡大をどう防ぐか」であり、日経経済新聞社が6月15日にインタビューし、記事は6月17日朝刊に掲載とある。
尾身の発語
「密閉、密集、密接を避けるという《3密》という概念は日本が初めてだしたものです。もともと、クラスターの調査から出てきたものでした。クラスターの調査は諸外国でもやられていますが、日本の調査は少し異なります。米国はじめ、ほとんどの国は《前向き》のクラスター調査を行います。感染者が出ると周りの濃厚接触者を調べて、この人たちが今後発症するかどうかを将来に向けて調べるわけですね。ただ、この病気は感染者の8割は人にうつしませんから、接触者の多くは発症せず、調査が無駄になる可能性があります。日本でも保健所の人というリソースがある場合には前向き調査を行っていますが、むしろ集中して実施したのは《後ろ向き》の調査です。感染者が数人いた場合に、周辺の濃厚接触者を探すのではなく、それぞれの感染者の過去の行動を振り返ります。……すると、一見何の共通性もない数人の感染者から共通項が見えてくることがある。たとえば……同じイベントに参加していたというようなことが判明すれば、その時の濃厚接触者を徹底的に探します。後ろ向きのクラスター調査によって、感染リスクの高い場所に共通する《3密》の特徴が見えてきました。」
疑問1…
「感染者の8割は人にうつさない」というデータは、3月2日に専門家会議で発表された110人の感染者のうち83人は感染させていなかったという分析結果だそうだが、その後も追跡調査されての信用できるデータなのだろうか。世界に通用する科学的根拠なのか。
疑問2…
「前向きクラスター調査をしても、8割は人にうつさない(接触者の多くは発症しない)から、すると無駄になる」と尾身氏は言うが、かりに8割の人に感染力がないというのが本当でも、2割の人の感染力は残っている。無症状感染者の感染力が一番強力だというのに、この2割の感染者の感染力を野放しにした結果が今の状況である。8割の実験データはあくまでも8割であり10割ではない。8割を全データとして採用する科学手法はありえない。
疑問3…
本当に《前向き》のクラスター調査、つまり、感染者の周囲にいる濃厚接触者が発症するかどうかは調査しなくていいのか? この状況は、たとえばイベント参加で感染したAさんの場合、遡ってイベントに居合わせた接触者は調査するが、イベントから帰ってきた後にAさんが接触した家族や友人は調査しないということだ。無症状感染者の感染力が一番強い、よって、《前向き》をしないということは、新型コロナウイルスを野に放すということである。
尾身茂の発語
「2月時点では感染者を診た医師から、Covid-19では微熱が一週間くらい続き、その後に一部の人で一気に症状が重くなる、という報告がありました。《4日待つ》指針は政府から諮問があり、こうした臨床の情報と、国内のPCRの実施能力が足りていないという状況を勘案して妥当と判断しました。その後、PCRの実施能力が増強されてくるに従って私たちもこの基準を変更した方がいいと表明してきました。国も、医師が判断すれば現場の判断で診療できるという通知を比較的早い段階で出しましたが、なかなか現場に伝わらなかった側面があったと思います」
疑問4
感染者を診た医師からの症状報告、政府からの「4日待つ」諮問、そしてPCRの実施能力の不足、これら3要件から「4日待つ」指針は妥当と、専門家委員は判断したと言うが、問題は妥当だと判断するための要件に一番必要な日本人の命とウイルス撲滅が入っていないことだ。そもそもPCRの実施能力が不足しているのなら、全力をあげて充足させるのが専門家の仕事である。そして国の仕事である。韓国や他の国でできることが日本ではできない。できないと言いながら、あえてしないのではないのかと疑わざるをえない。その証拠に文科省は全国の大学を閉鎖し、医学部に設置済のPCR検査機器使用をブロックしてきた。だから文科省はいらないと言うんだよ。
尾身茂の発語
「一方で、日本の検査数が他国より少ないことで、死者数や感染者数が正しく把握されていないのではないか、という議論は全くの別の話だと思います。日本の検査数の絶対数は明らかに低いですが、検査数を感染者数や死者数で割った数値は他の国より多いんです。今の感染状況を考えれば、現在の日本はたくさん検査をやっています。感染状況に合わせてPCRを実施すれば、陽性率(全検査数に対する感染者数の割合)が3〜12%の間に落ち着くとする見解がWHOから出ています。4月の東京都は30%まで達していました。しかし、今の日本はおよそ1%台です。足元の感染状況では十分な検査ができています。」
疑問5…
ここの箇所は、ほとんど意味不明。検査数を感染者数や死者数で割った数値は何を示しているのか? 分母と分子を入れ替えた計算で出る数値なら分かる。条件はいろいろあるだろうが、陽性率である。ちなみに、7月31日の東京都の例にとって、検査数を感染者数で割ると、5542÷463=11.96となる。この数値が何を示すのか分からないが、比較のために、検査数一日当たり70000件というニューヨーク州の5月4日までのPCR検査数を感染者数で割ってみた。答えは1007310÷318953=3.15である。たしかに[11.96]は[3.15]より多いが、しかし、検査数は確実にニューヨーク州のほうが多い。よって、明らかに尾身の論は破綻している。
疑問6…
《今の感染状況を考えれば、現在の日本はたくさんの検査をやっています》って、どういうこと? 世界で159位のPCR検査数で、正確な感染状況なんて把握できているわけがない。感染状況とはウイルスがどれくらいの市中の人体に入りこんでいるか、つまり蔓延しているかである。尾身茂や日本社会が意味する感染状況とは、症状が出てからPCR検査を受けてその結果陽性が出た数値である。この限られた数値をもって、日本はたくさん検査をやっていると断言されたら、科学者でなくても天地がひっくり返るほどの仰天である。
結論
すでに記載済みの第二段落を結論とする。
さて、国(政府)はPCR検査拡大を拒み、ペテン師専門家を雇いやっているふりだけをしているだけだと分かった以上、大きな政府はもういらない。地方自治体(県、市町村)自らが住民の命と生活を守り、企業等の団体が社員とその家族を守らねばならない。この危機をのりこえるために。
最後に「一か月あたり住民の3%が検査を受けることが経済活動再開の条件である」とニューヨーク州のクオモ知事の言葉を載せてこの記を閉じる。一日当たり7万件の検査能力をもって、いたるところに検査場があり、居住者ならだれでも無料で、回数制限なく検査できるという。