「今を生きる」第39回 大分合同新聞 平成17年12月5日(月)朝刊 文化欄掲載
都市社会(1)
市町村合併すると、中心になる庁舎がゆくゆくは出来て、その周囲に行政の施設ができていきます。人が集まりやすいということで商業活動に関係する施設がその周辺にできていきます。都市社会では存在目的のある物(駅、バスセンター、郵便局、病院等)が集まって都市が形作られます。便利さと効率を優先して整備されていきますので、そこには人間の思いが実現して便利のよい都会が出来ていくでしょう。都市社会で生活する方が文化・医療・経済活動など、さまざまな面で都合がよくなります。多くの人は都会での生活に一度はあこがれます。事実、大分県では、郡部の過疎化が進み、都市部には住宅が増える傾向にあります。電車や自動車専用道が整備されると、移動の予定がより立てやすくなります。人々は自分の手帳に計画した予定に沿って行動し、あたかも、時間すら思い通りになるかのようであります。街を華やかに、きれいに整備して、汚い物や不快な思いをさせるような物は覆い隠して、人目につかないようにしていきます。老いや病気は病院や施設でお世話して、死んでも顔を化粧して生きて眠っているかの如くにします。老病死などは、都会ではほとんど目にかからないようにしています。都市社会は人間の思いが実現するかのようにつくらていき、夜などないかのごとく遅くまで光に満ちて、楽しく華やかで物はあふれ、幸せそうに見えます。経済活動が活発でお金は大きな力を発揮し、お金があればなんでも思い通りになるかのごとくに思われます。
しかし、銀行で行員にお礼を言われるのは個人に対してか、私の背後のお金にたいしてかと、ふと思うことがあります。都市社会で生きる人間は人間性を失い、物化、部品化していく危険性を併せ持っているのです。
田畑正久(たばた まさひさ)
1949年、大分県宇佐市の生まれ。九大病院、国立中津病院を経て東国東広域病院へ、同院長を10年間勤め2004年の3月勇退。現在宇佐市の佐藤第二病院に医師として勤務、飯田女子短大客員教授として医療と仏教の協力関係構築に取り組んでいる。
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