「今を生きる」第42回 大分合同新聞 平成18年1月23日(月)朝刊 文化欄掲載
都市社会(4)
現在の電波時計は1秒の狂いもなく調整できる機能を持っています。値段も手ごろです。都市社会の申し子のように便利で速く、正確で快適に走る新幹線はトラブルがない限り、時計のような正確さで時間表に沿って運行されています。また、自動車専用道が整備されると、信号で止まることもなく、宇佐市から大分市へ行くのも時間の予定がより立てやすくなりました。
物事が予定通りに片付いていくと、あたかも自分の思い(予定)がより多く実現できると考える傾向になっていきます。
便利で速く移動ができるとなると、効率よく行事が行えるということで、時間的な余裕が生み出されると期待していたのに、結果は逆で、一層スケジュールに追われる結果となっています。一つの予定をこなして、次の予定事に入っていくと、だんだん時間の切れ目がなくなり、仕事は途切れなく続いていきます。
人間の思いとしては、時間を自由に使うはずのところが、いつの間にか時間に使われているのではないかという生活に陥ってしまっています。そして時間の区切りがつかなくなり、時間に輝きがなくなってきているのです。その症状は、ただ予定をこなしていくという感覚になり、一つ一つの仕事、行事が輝いてこないのです。また、同じことの繰り返しがマンネリ化というあせりを生じさせるのです。
本当は、昨日と同じ今日は絶対ないのです。日々新たなのです。そういう時間への目覚め、気づきが仏の智慧(ちえ)、悟りの世界なのです。人生とは取り返しのつかない決断の連続です。区切りが大切なのです。
田畑正久(たばた まさひさ)
1949年、大分県宇佐市の生まれ。九大病院、国立中津病院を経て東国東広域病院へ、同院長を10年間勤め2004年の3月勇退。現在宇佐市の佐藤第二病院に医師として勤務、飯田女子短大客員教授として医療と仏教の協力関係構築に取り組んでいる。
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