「今を生きる」第69回   大分合同新聞 平成19年4月2日(月)朝刊 文化欄掲載

天人五衰(5)
 引き続き天人五衰を解説します。身体臭穢(しんたいしゅうあい):身体が汚れていまわしい臭気を発する。口臭,体臭は加齢現象と共に周りの人に不快な思いをさせるようになる為に、香水等でごまかさざるをえなくなるようです。他人が注意をしてくれないと本人は気付きにくいということがありやっかいです。臭いの原因については種々の要素が考えられていますが、歯磨きなどをきちんとして物理的に身体を清潔に保つしかありませんが、それでも完全に無くすることはできません。
 身体的な衰えは世俗的にいかに高貴といわれている人も避けることができません。テレビ等のマスコミも世間受けをする、美しい、楽しい、明るい、珍しい、輝いているものは表面に出して公開しますが、醜悪なものはできるだけ公開しない傾向にあります。その結果、元気で、若々しく、健康で、明るく、楽しいことが本来の生きている姿と考えていくようになるのです。その結果、老病死を受容しにくい社会になろうとしています。
 五衰の前兆として小の五衰(小衰相)があると説かれています。それは(1)音声は不如意にかすれて、楽しい声が出ない、(2)身は薄暮のやうな影に包まれて、体の輝きがなくなる、(3)水浴後、水が肌に付着するやうになる、(4)まわりの光景に執着し、いつまでもそこを脱け出すことができない、(5)しきりに目ばたきする、です。「小の五衰の生じている間は、死を転ずることも全く不可能ではないが、ひとたび大の五衰が生じた上は、もはや死を避けることができない」と書かれています。

田畑正久(たばた まさひさ)
1949年、大分県宇佐市の生まれ。九大病院、国立中津病院を経て東国東広域病院へ、同院長を10年間勤め2004年の3月勇退。現在宇佐市の佐藤第二病院に医師として勤務、飯田女子短大客員教授として医療と仏教の協力関係構築に取り組んでいる。

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