「今を生きる」第119回   大分合同新聞 平成21年5月25日(月)朝刊 文化欄掲載

心を洗う(35)
 心の汚れ、煩悩を自分できれいにする方向(善い心、よい行い)は大切です。小中高校、そして20代、30代も若い時期は、それに向かって努力をしなければなりません。教育というのはその方向での指導、勧め、励ましが原則と思われます。
 「自分で善い心、善い行いと頑張って努力する」ことは確かに大切です。日本人はまじめで勤勉でコツコツと努力をする国民のようです。しかし、頑張るということが何でもよいわけではないようです。数学の分野で、方程式を解くのに中学で一次方程式、高校で二次、三次方程式を解く方法を習います。その思考の方法で四次方程式も解けるそうです。
 五次方程式も、その思考の延長線上で解けるはずだと考えて、多くの数学者が頑張って取り組んだそうです。一部の学者はその取り組みに一生を棒に振ったと聞いています。数学者アーベルは「五次方程式は代数的には解けないのではないか」と考えて、ついに五次方程式は代数的には解けないということを証明した、とある高校教師(数学)から聞いたことがあります。
 人間の思考の枠内を超えることは人間には考えられません。そのために人間の思考を超えた世界の、悟り、仏の智慧(ちえ)の話は信じられない、難しいということになります。日本人の多くが無宗教を心情として、理性・知性・分別をよりどころとした唯物論的科学的な合理思考によりどころを置くのは現代教育の見事な成果ということができます。
 仏教の学びから気付かされることは、人間の思考を超えた世界があるとしか思えないということです。人間の欲を満たすことを願うような世俗的宗教(結果として迷いを繰り返す)ではない、目覚め、悟りを教える普遍的宗教、人の思考を超えた世界、仏の智慧が私たちの心の汚れを洗うにはどうしても必要に思われます。

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