「今を生きる」第151回   大分合同新聞 平成22年9月20日(月)朝刊 文化欄掲載

老病死を受けとめる(17)
 私の意識をつかさどっている場所は脳と考えられています。その脳の意識は物事を思い通りにしたいという欲、意欲を持っています。しかし、現実の生活では思い通りに行ったり、行かなかったりということになります。思い通りにいかないものの代表が「老・病・死」です。いつまでも健康で若くありたいと思いますが、時間の経過は年齢を増すほど速くなるという実感があります。
 老いを止めることはできないはずなのですが、最近は「アンチエイジング」ということを研究する人たちが出てきています。日本語で言えば「抗老化」「抗加齢」と訳するようです。それは「時計の針を止めること」ではなく、「針の進みを少し遅らせようとすること」です。しかし、「長生きはしたいが年はとりたくない」という矛盾することを目指しているのです。時間の経過とともに加齢現象が起こることは自然なこととして受け取ることができれば、楽なのでしょうが………。
 私の思いは、あたかも「老病死」はあってはならないことと思ってしまっているのです。そして、私はささやかな幸福を目指して、種々の自分の思いにかなったもの、好ましいものを集めて幸せに暮らそうとしていきます。そこで老病死の事実をできるだけ先送りするか、見えないようにするか、見ないようにして目をつむるのです。
 医療の中では「抗老化」として動脈硬化の予防の治療がなされています。最近ではメタボリック症候群といわれ状態があり、保健関係者の大きな課題になっていまして、「高血圧」「高脂血症」「高血糖」のうち2つを合併した「内臓脂肪型肥満」と医学的に定義されて動脈硬化になりやすい体質です。
 その予防のために生活習慣の改善などの指導がなされています。改善が無理ならば薬物による治療となりますが、薬物による副作用として認知症になる傾向が見られたり、性生活の感受性の低下が問題になるようだ、との報告が欧米の専門雑誌に出てきたりしていて、医学関係者に悩ましい問題を提起しています。

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