「今を生きる」第183回   大分合同新聞 平成24年1月23日(月)朝刊 文化欄掲載

医療文化と仏教文化(10)
 有名医学雑誌に掲載された文献(2011年)に、脳卒中を一回発症した人の再発する率が、その人の日ごろの血圧とどう関係するかという調査報告がなされています。
 それによると、収縮期血圧と脳卒中再発リスクの関連を36の国の施設での2.5年間の調査観察により分析評価をしています。脳卒中の再発率は、血圧が120mmHg(単位はミリ水銀柱)以下のグループは 8.0%、120−130のグループでは 7.2%、130−140では 6.8%、140−150では8.7%、150以上では 14.1%であったという報告です。一番低いのが130−140のグループですが、決してゼロではありません(老病死を避けることはできない)。 統計的には血圧は高くても低くてもリスクは増えるということです。
 血圧が130−140のグループと140−150のグループで、再発率の差は約2%です。二つのグループの人が各々千人いたとします。脳卒中の発症は各々のグループで年間、68人と87人ということになります。そこに19人の差が出ています。血圧をよい状態に保つことは患者さんにとって利点があるということがわかります。
 ひるがえって全体を見渡し、高いグループの人を治療して低い血圧のグループに導くとき、再発する人数が19人減ると予測されます。つまり、高いグループの千人が血圧を正常値に下げる努力(食事療法、運動療法、薬剤など)をしたとして、その結果、発症を免れると予想される人数は19人です。残りの981人は治療をしたけれど結果として変わりないことが予測されます。脳卒中の再発を防ぐために高血圧症の治療を受けて、その恩恵にあずかる19人(千人の中で)の中に入るかどうかは、実施してみないと分からないのです。
 医療文化の拠りどころの科学的思考による考えは確率を考えてよい方向へ、よりよい方向へと可能性を追い求めていきますが、個人にとっては満点か零点かですから、良かった932人と悪かった68人という結果になるということです。
 仏教はその良い、悪いのとらわれを超える道にわれわれを導こうとする教えです。どんな現実でも引き受けて生きる勇気を恵まれる道です。

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