「今を生きる」第257回   大分合同新聞 平成27年1月26日(月)朝刊 文化欄掲載

医療文化と仏教文化(84)
 ある高齢婦人が受診に来られ、話を聞くと種々の医療機関を受診して治療を受けているといいます。専門医の診察を受けていることが分かりましたが、その施設では多くの外来患者への対応をしなければならないのでしょうか、どうしても病人ではなく病気を中心とした対応がなされていて、患者本人が治療に関する複数医師の説明を聞いても、総合的に受け止めることができなくて、日常生活をどのようにしていくか戸惑っているという印象を受けました。
 また、高齢の患者で運動量が少なくなり、室内での動きが主になって、外出もあまりしてないという女性が骨粗しょう症で治療を受けているといいます。専門書によれば、女性の骨密度は18歳くらいでピークに達し、その後40歳代半ばまではほぼ一定ですが、 50歳前後から閉経とともに急速に低下していきます。
 健康な人でも65歳を越えると骨折しやすい骨量(ピーク時の75%の骨密度)になると記されています。確かに高齢になると、加齢と運動量の低下によって骨密度は低くなって、骨粗しょう症になり、骨折しやすくなる事実はあるでしょう。
 日常生活での食生活、嗜好(しこう)傾向、そして身体的活動性などの生活習慣に深く関わる、いわゆる「生活習慣病」は、身体の加齢現象とも深く関係しています。加齢現象を病気というべきか判断に迷うことの方が多いです。
 この数年、日本人の死亡原因の第3位に「肺炎」が定着してきています。この肺炎も加齢現象で体力・免疫力が低下しているという下地があって、肺炎を起こしていることが多いと思われます。
 そうすると死亡原因順に、悪性腫瘍、心臓血管障害、肺炎、脳血管障害の四つは人間の加齢現象と密接な関係があるということです。これら四つで日本人の死亡原因の約66%を占めるので、3人に2人は加齢現象が関係しているとも言えるのです。
 加齢現象が原因であっても腰痛、膝痛などの症状を引き起すと、どうしても病気として対応せざるを得ない一面はありますが、生活習慣との関係を医療関係者に相談して、症状と付き合いながら生活することも大切ではないでしょうか。加齢現象の受け止めには医療だけでなく仏教も深いかかわりがあると思われます。

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