「今を生きる」第465回   大分合同新聞 令和6年7月22日(月)朝刊 文化欄掲載

医療文化と仏教文化(291)
 藤代聡麿という僧侶の言葉に「これからが、これまでを決める」があります。しかし普通は、過去からの歩みで現在があると考えます。なぜなら、これまで日々、努力してきたのは「良い未来」を期待しているからです。例えば、今年のパリ五輪で良い成績を出すために、多くのアスリートが全力を尽くして練習に励んでいます。そんな人たちにとっては、「そんなことがあるのだろうか?」と思われるでしょう。
 また、仏教者金子大栄の言葉に「やり直しのきかぬ人生であるが、見直すことはできる」があります。上記の言葉に通じる思考です。普通は過去の歩みの結果が現在の状況であり、過去の歩みは過ぎ去ったことなので「やり直し」はできないと考えています。前述の言葉に通じる思考です。同じように人は、過去の歩みの結果が現在の状況であり、過ぎ去ったことは「やり直し」はできないと考えています。
 私は以前、短期間ですが、米国の社会文化に触れる機会に恵まれました。その時に、人生の途上で挫折や失敗があっても、真面目に仕事に取り組めば報われる雰囲気のある国なのだと思いました。一方で、経済的な価値観が、多くの市民に共通する基盤としてあるようにも感じられました。
 米国は、日本と違って移民による多民族、多様性の社会です。その上に、家の宗教ではなく、個人の宗教を尊重(個人主義)する文化があります。そのため、世間の目を気にするという比較の心は少なく、多様な価値観・人生観が尊重されているのではないでしょうか。
 悟り、気付き、目覚めなどを眼目とする普遍的宗教(キリスト教や仏教など)は、私の依(ルビでよ)って立っている思考の転換を導きます。その結果、「置かれた場所で咲きなさい」「しかるべき場でしかるべき役割を演ずることは、今まで育ててもらったことへの報恩行」など多様性のある発想や、一人一人の人生観・価値観が大事にされているのだと思います。=後半に続く=

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