九州地区公立幼小中学校女性管理者研究協議会講演(2004年8月19日)
「見えるものとみえないもの」講演レジュメ
   田畑正久

1.はじめに ;自己紹介
医療と仏教の協力関係を作って行きたい。なぜか?:
2.医療界の注目される動向
(1)健康の定義が変わろうとしている 
Health is a dynamic state of complete physical, mental, spiritual and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity。(WHO,1999)
Spiritualで示すもの………意味、意義、物語;見えない領域
   (1)人間として生まれた意味、(2)生きる意味、意義、目的
   (3)死をどう考えるか、 (4)罪悪感からの解放
健康至上主義から豊かな人生のための健康;「健康日本21」
(2)EBM(evidence based medicine)とNBM(narrative based medicine)
ナラテイブ・ベイスト・メデイスン(臨床における物語と対話)
根拠(客観的データ)に基づく‐‐‐物語に基づく(人生観、価値観,病気観)
3.見えるものと、見えないもの
戦後の教育を受けてきた者として、見えるもの、すなわち形、色、数字で確認できるものを確かのモノとして考えて行く思考方法を教えられて来た。(対象論理)
(1) 出血多量で死にました。
(2)「今日は、おじいちゃん、おばあちゃんのところを集金してまわった」
(3)もったいない
4.「見える学力」と「見えない学力」
(1)人間の能力について
ability(知的能力、 試験に適している)とcapacity(人間関係調整能力、試験に不適)
より豊かで広いcapacityを身につけるということが専門家として求められざるを得ない仕事が、医療・福祉・教育という広い意味での対人援助の仕事の専門性
(2)感受性;感受性に付いて二つの言葉:sensibility, sensitivity
対人援助の仕事に携わる人間に必要な条件を三つ上げています、
(1)患者の言葉を本当に聞くことが出来なければならない。聞くということは目の前の患者さんをきちんと見ること。相手の立場を考え、相手に寄り添って
(2)私自身が日々のプライベートな私生活の中で、日々出来る限り充実した幸せな日々や人生を送っているか、また送ろうとしているかどうかである。
(3)患者のほんのわずかな成長・発達の兆しを見逃さず敏感に感じ取り、しかもそのことをあたかも我がことのように喜べるかどうかである。
5.見えない、分からない、気づかなかった、私
(1)かって自殺志願の女性の投書
(2)98歳の女性(入院患者);早くあの世に行って楽になりたい
(自己から人生を問うのではなく、人生から自己を問う)
(3)波多江伸子(作家、倫理学者、48年生まれ)
(4)自己実現
6.対象論理 ;近代的自我
「我」を立てた:周りのモノを対象物と見る、操作の対象とする
私に認知できるものだけを確かな物とする。私の認識を超えたものは把握できない
………「超えたものはない」、 仏、神、自然、宇宙、………神秘性の危険
現代人の思考方法(デカルト)
・私が明証的に真であると認めたものだけを受け入れる。
 ・課題を出来るだけ多く、かつ問題解決に必要なだけ小部分に分ける、問題の分割
 ・考えを順序に従って導く、最も単純なものから、少しずつ段階をふんで複雑なものへ 
 ・見落としがないように完全な点検と、全体にわたる通覧を行う
対象化する人間の知恵の世界では全体像が見えないことがあるという弱点をもつ
7.意味、意義、物語
我が家の旧式電気洗濯機が、この間ついにダウンしてしまった。手しぼり式の古い型とはいっても当時の「暮しの手帖」の推せん品だけあって12年間もがんばってくれたのだが、よる年なみには勝てず、全自動式の新型と交替することになった。「スイッチ一つでしまいまで手がかからなくなった……」と家内が、ホッとしたのは当然として、小学生の息子までが「こんなボロ機械がいままであったのがかっこう悪いや」という顔つきであった。
 ところが電気屋さんが新しい機械を持ってきて、古いのを持って帰る時、ふと私が「こいつはずい分お前のおむつを洗ってくれたんだぞ」と言うと、息子の態度が急に変わって何だか持っていってほしくないような顔になり、最後に洗濯機に向かって「ありがとう」とさえ言ったのである。
目に見える物の中に隠されている、目に見えない世界を見ることこそ、人間の偉大さである。「大切なことは目に見えないんだよ。心で探さないとね」と言ったのは、サン・テクジュペリの「星の王子さま」である。
意味というものは    こちらが読み取るものだ
値打ちというものは   こちらが発見するものだ
すばらしいものの中にいても   意味が読み取れず
値打ちが発見できないなら  瓦礫(がれき)のなかにいるようなものだ
(東井 義雄)
8.人間としての成長・成熟:
「歳をとるのは楽しいことですね、今まで見えなかった世界が見えるようになるんですよ」(信国 淳)
 仏となる道を歩む存在を「人間」という。
動物的な「ヒト」から「人間」へ、そして仏(完成した人間)へ
 「道行く人よ、あなたは“くう”か“食べる”か“いただくか”」
9.生きる力;イキイキ生きるに2種類
・追い求める意欲---足りない、 ・あふれ出る感動、願いとしての意欲−−足るを知る
本当の幸せとは(三木清、人生論ノート、新潮文庫)
 「幸福とは人格である。人が外套を脱ぎ捨てるように、いつでも気楽にほかの幸福を脱ぎ捨てることが出来る者が最も幸福な人である。彼の幸福は彼の生命と同じように彼自身と一つのモノである。」
10.「見える世界」は「見えない世界」によって支えられている
11.見えない世界を感じ取る(感得) 「大きな世界はぶっつかって感得するしかありません」

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