「さらば冥王星」
つい最近の出来事で、冥王星が太陽系惑星というまとまりからはずされることになった
実際冥王星は地球にとってはそれほど関係ない惑星かもしれませんが
そんな突発的にはずされた冥王星の話を書きました
ある程度内容が簡略化されています

この作品に登場する惑星は擬人化されています
本来の惑星はこんな風にはしゃべりません



まえがき ひとりぼっちな冥王星(太陽の妻、視点)

生まれたときから彼女は一人ぼっちだったのかもしれない

太陽しか、そのときのことは知らないのだが
その彼は何も教えてくれない

もちろん、彼女の過去の傷を再び掘り返すようなことはしたくないために深くは聞かないでおこう

物心ついたときには彼女には親はいなかった

いるにはいるのだが、幼かった彼女は捨てられた


みんな境遇は同じだった

この太陽系と呼ばれる家族は、わけありで、独立して生きている人たちの集まりである

放って置けないタイプ、そんな言葉のとおり、太陽は彼女のこと気にかけては
ずっと温かく照らし続けた

捨てられたときの恐怖もあってか、ほとんどなつかないタイプで、
最初は太陽の厚意にも気づかずにいた

だけど、太陽の努力の甲斐あってか、彼女はだんだんと心を開いていき、いつしか
私たちと一緒に行動を共にするようになっていた

彼女は「家族」という言葉を知らなかった

そんな彼女に優しいアメリカの人が「これを家族というんだ。君も家族なんだよ」と教えた

そう、そのときに、冥王星が太陽系という家族の一員であることを認められたのである



第1章 楽しい日々

「こらー!ちゃんと前向いて歩かなきゃだめでしょ!」

太陽は厳しかった

少し歩いている道から外れそうになると厳しくしかる

もちろんそれは彼女らのためを思ったことである

もし、彼女らが道から外れてしまっては、どんな危険な目にあうかわからない

普段はやさしい太陽も、このことだけにはきびしかったのだ

冥王星は生まれつき、小さかった

ほかの人たちよりもぜんぜん小さい体だった

もちろん他の子もかわいがっていたが、
そんな理由から太陽は冥王星のことを少し特別にかわいがっていたとおもう

他の子たちもそんな冥王星のことを気遣ってくれていた

冥王星は幸せだったんだと思う

こんな温かいものがあるんだなーって

とくに仲良かったのは、一番近い存在の海王星

2人は追いかけっこがすきだった

最近では、冥王星にいいところを見せるためにひそかに練習していたらしく
海王星のほうが早いようだ

すこし「隠れて練習してたのーひどーい!」と冥王星が怒っていたが
それでも2人とも笑顔でいた

そんな日々のなか、一つの転機が現れた

それは、冥王星の妹である



第2章 孤独な妹

妹も同じ状況だった

妹こそは、姉を捨てた家族に育てられたものの、やはり捨てられたのである

冥王星の家族は非道で、下の子ができると上の子を捨てるということをしているようで

妹もいま捨てられた

物心ついてから顔も見ていない、そんな妹をすぐに妹だってわかったこと
妹のピンチがわかったことは、姉の強さというものだろうか

彼女は、温かい家族である「太陽系」に妹を連れて行った

妹にも温かい家族を知ってもらいたい

そんなけなげな願いが彼女にはあったのだ

太陽はやさしかった

そんな冥王星の願いを快く受け入れた

これからは、妹も一緒に、この仲間の中に入るのである

「家族」なんだ。

誰が見ても私たちはこのあったかい家族の中にいられるんだ

そんな場面を見ていた人がいた



第3章 崩れなかった家族

もともと「太陽系」という家族が気に入らなかったのか
冥王星の家族に恨みがあったのか、理由はわからない

ただ、その人はこんな太陽の行動が気に入らなかったのである

その人はこう思った

「家族」という定義が崩れてしまえばいいんだ

状況が変化すれば条約を変化させる
そんな将軍のようなやりかたである

その人は「家族」という定義を変えた

そう、冥王星が、その妹が、満たさない条件になるように

そしてその法は決定され、冥王星は家族じゃなくなった。その妹もその家族に入れなくなった

その人は喜んだ

これで、こいつらは家族じゃないんだ、と

これから、誰が見ても「家族」というものは利かないのである

少々困ったことになってきたのだ



第4章 崩れなかった絆

彼女は少し落ち込んだ

彼女は、状況がわからないという少女ではない
彼女めがけて発布されたようなこの法の書をみて、彼女は落ち込んだのだ

年端もいかない彼女の妹にとっては、これがなんのことだかわからないが、
姉がショックを受けているようなので、悲しいことがあったんだと、同調して悲しむ

数日間は気落ちしていた

そんなとき太陽は話しかけた

「なに落ち込んでるんだ?」

「おとう・・・いや、太陽さん」

お父さんと呼びそうになって変える、もう家族じゃない

「はぁ・・・悩んでいることはわかってたけど、やっぱりか
 まったく・・・こんな法に踊らされるんじゃないよ」

優しい声だった

「人は人、うちはうちだ。
 世間ではお前のことを家族とは呼べないかもしれないけど、
 うちのなかでは家族なんだよ
 冥王星の妹だってそう、人がなんと言おうと、うちのなかでは家族なんだよ」

涙がこぼれた

冥王星は本当に幸せだった

「お父さん・・・」

こんなにやさしいお父さんのところにいられるなんて幸せだよ

妹はなんだかわからない感じで私のそばにいる

なんとなく伝わっているようで、妹もなんだか笑顔だ

「というわけでだ、世間では家族と呼ばないといおうが、
 うちはうちでお前たちを育てていく
 お前らもいいだろ」

「いいもなにも、冥王星は家族じゃない」

「そうだよ、冥王星は私たちの家族でしょ」


それから数年後も、世間では「家族+2人」とよばれる家族は仲良く暮らしていた

「海王星、冥王星、はしゃいでちゃだめでしょ
 正座してなさいっ!」
「はーい・・・」
「ごめんなさい」

太陽のあたたかい視線はみんなに注がれている




―――あとがき―――

このSSを最後まで読んでくれてありがとうございます
こちらのSSでは、「冥王星が太陽系から外れるけど家族」という解釈を取っていました
あとがきではそれを中心に説明しようかなと

「知的生命体(人とか)が認識していればそれはある」
まとめて言えばそういうことである
そのことは逆に言えば「知的生命体が認識していなければない」のである
部屋で何かをなくしたとしましょう
その人が「その部屋にある」と知っているならば、その部屋にあります
逆にその人が忘れてしまえば、「その部屋にない」ことになるのである
もしその人が忘れたまま、その家を売ってしまえば、
その部屋にそれがあるということを知る人がいなくなります(思い出した場合を除く)
もちろん、次に家を買った人がそれを見つければ、あることになりますが・・・

このように、誰も知らないことは「ない」のであり
誰か1人でも記憶している(信頼できる伝聞でも可)ならば「ある」のである

そうです、誰かが「見る」もしくは「覚える」ことで、その存在は保証されるのです

それと、「うちらの中では家族」という表現はこのように解釈してください
太陽系惑星という条件からはずされようが軌道がかわるわけでもなく、
結局いままでと変わらないのです
つまりこのような変わらない を 家族のままいる ということにあてはめてみたわけです
これからも太陽に照らされながら一緒に行動するんです

先ほども言ったように、誰かが「覚えている」ことでその存在は保証されます
冥王星はなくなってなんかいないんです
そこに存在するんです
私たちが覚えていてあげればいいんです

100年ぐらいすれば、冥王星が太陽系惑星であったことを知る人が少なくなるでしょう
200年もすれば、確実でしょうね
始めあれば終わりある、そういう定めなので、仕方ないのでしょう
少し早まってしまっただけなのです
覚えててあげましょう
冥王星はまだみんなとなかよくやっているのです
覚えててあげましょう
冥王星はまだ輝いているのです



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